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カサンドラの屈託  作者: コリー
第二章 カサンドラと純潔の女神
6/7

6 指名

「『大学院生生活のスゝメ』はどこが面白いかといえば、マサユキの感情の変化の仕方ですよね!」

「やっぱりそう思う!?」

登校しながら、好きな本の話で盛り上がっていた。

普段から大人しめの2人(言うまでもなく私と神木さん)が、珍しくヒートアップしてしまう内容でもある。

「マサユキはやりたいことが見つからなくて、色々なサークルに入るんですけど…」

サークル。そういえば少し前から気になっていたことがあった。

「そう言えば、神木さんは部活に入ってないんですか?」

ふと疑問に思った私は聞いてみた。

「今は入ってないね」

「今は?」

その物言いは、まるで1年の頃は部活に所属しているかのようだった。

「うん。中学の3年間と、去年の夏までは弓道部だったの」

そのとき、私は衝撃を受けた。

私が中学生の頃は、無所属を貫いていたが、ずっとやってきた部活を辞めるのにはかなりの思い切りが必要だと思う。

どんな境遇で3年間続けていた部活をやめるに至ったのか、その秘密を知りたいという強い好奇心が頭を支配した。

「なんで…なんで部活辞めちゃったんですか…?」

「まあ、色々あって…」

神木さんはいつもと打って変わって、口を濁して話した。

神木さんには、まだ私の知らない秘密が沢山ある。そんなこと当然のことなのに、仲良くなれて浮かれていた私の心に深く刺さった。


教室に入ると、まばらな喧騒が少し嫌ではなくなっていた。人の声なんてものは読書の邪魔にしかならない程度にしか思っていなかったが、実際に話してみると存外悪くないものだと気付かされた。

私と神木さんの席は少し離れているので、学校ではさほど話さないのが残念だ。

というわけでそれぞれの席についた瞬間に、喧騒が少し和らいだ。

「小湊さん、いるー?」

名前も知らないクラスメイトにいきなり呼ばれた。

「はい…私ですが…」

「今、1年の女の子が来て、昼休みに屋上に来てくださいって」

1年の女の子…私には一切心当たりがない。見ると、その子の姿は既になく、断ることが出来なくなってしまった。


昼休み。お昼も食べずに屋上に出た。普段からあまり使われていないので木の葉やら何やらが散らばっている。

「小湊…珠心先輩ですね…」

横から、とても凛々しく美しい、綺麗な声が私のことを呼んだ。

「はい。私が小湊です」

声のする方を見ると、本当に私より年下なのか疑われる(私の見た目が幼いこともあるが)程の、美しい女の子が立っていた。光沢のある長い髪をポニーテールにして纏めあげている。高身長である神木さんより少し低いというくらいの身長もあり、目の辺りもキリッとしていて、まさに女侍といった感じの風貌をしている。

だが、やはり彼女の事は初めて見るし、呼び出されるようなことにも全くもって心当たりがない。

「貴女が小湊先輩ですか。母から聞いたとおりの人ですね」

(母?)

このあたりから少し心当たりに近いようなものが頭に湧いてきた。

「私は、1年3組、弓道部所属…」

私の心当たりは、一気に確信へと変貌した。

「神木美月です」

この女の子は、神木さん(日陽)の妹さんだった。

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