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「許可できません」

「何ですって!?」

図書室のカウンターにいた女性は淡々と伝え、ファラはその返答に叫んだ。表情こそ同じものの、二人の温度差ははっきりとしていた。

ヴォルフを連れて図書室を訪れたファラは、受付に簡単に説明をした。ようやく魔物を召喚することができたが、魔物の種族が分からない。家にある図鑑には載っていなかったので図書室にある図鑑の閲覧許可を貰いたい。大まかにそのような事を語って、冒頭の返答を貰ったのである。

「ファラが召喚獣と契約できたのはとても喜ばしいことです。自分の召喚獣がどんな魔物か知りたいのは誰でも思うことでしょう」

「だったら!」

「ですが、それとこれとは別。命の危険性がありますので容易に貸し出すことはできないのです。予約制ではありますが、先生に頼んで代わりに調べてもらう方がいいと思いますよ」

「……それは、今予約したらどれくらい後になるんですか」

「ええと、ちょっと待ってくださいね」

「はい……いや、いいです」

受付が携帯端末を持って調べ始めたのを見てファラは止めた。

以前、友人が小さな紙を見て「一年後だって」と落胆していたことを思い出す。その時は特に興味もわかなかったのと、友人の落胆ぶりが酷かったので追及しなかったが、この事だったのだ。今予約したなら、同じく一年後辺りに結果がくるのだろう。卒業試験も控えているというのにそんな長い時間を待っていられるはずがない。

「予約はよろしいのですか?」

「ええ、まあ。また別の方法を探してみます。ありがとうございました」

今までに予約をしない生徒などいなかったのだろう、目をぱちくりさせている受付に目礼してファラはその場を去った。適当に図書室を歩き回ってみるが、やはり閲覧許可が必要な本は重要図書としてそれなりの措置が施してあるのだろう。一般生徒が手にとれる場所にはなかった。

「おい、いいのかよ」

ついさっきまでずっと黙っていたヴォルフが音量を抑えつつ聞いた。ファラは分厚い本ばかりを選んで手にとり、目次を見ては戻すという行為をくり返している。

「一年も待ってられないもの。さっきカグラさんに言った通り別の方法探してみる」

「別の方法って、例えば閲覧許可いらない図鑑探すとかか?」

どさっ。

ファラは持っていた図鑑を落とした。幸いその列には他に生徒がいなかった為誰かに見られることはなかったが、ファラは素早く拾い上げて何事も無いよう本棚に戻す。本には「自販機でジュースをただ飲みする百の方法」と書いてあった。

 一連の行動を見たヴォルフの目に、馬鹿にしたような感情が入る。

「……まさかとは思うが、その不毛な行為が別の方法だとか言わねえよな」

「いや、まだ他にもあるよ」

「方法の一つではあったんだな」

「隠された答えを見つけ出すのは文章題のテストかミステリー小説だけにしようよ」

「こんなちゃっちい答えだったら読者が発狂するだろうよ」

ヴォルフの言葉をスルーして、ファラは本を取り出しては戻す行為をくり返した。ただ、先ほどまでと違うのは、分厚い本ばかりを選ばなくなったこと。書架に書いてある分類を無視して適当に歩き、適当に本棚から本を取り出しパラパラとページを捲るその行為はとても理解できるものではない。

 最奥の書架まで辿り着いたファラは、最後の本を棚に戻した。ヴォルフが見る限り、それまでの行為に何か意味があるとは思えない。つまり、何か成果を得られたとも思えない。

「終わったのか?」

「うん、終わった。閲覧許可いらない図鑑は全部、家にあるのと同じだった。タイトルとかカバーとか変えてる可能性も考えてみたけど、そんなこともなかった」

「じゃあ許可もらわねえと駄目だってことか。先は長いな」

「いいえ。私はそんなに気が長い方じゃないから、別の方法を実行することにします」

「別の方法?」

「そう。で、一応確認したいんだけど」そこでファラは一旦言葉を切った。辺りを見渡して、他の生徒から離れた場所に移動する。体を屈めて、声の音量を更に下げた。

「ヴォルフって正義感強い方?」

「神様食べてる奴に聞くか、それを」

「一応の確認だってば。じゃあ問題ないね」

「問題ねえけど……何する気だよ」

 その質問に対する答えはなかった。



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