* 8
翌朝、登校した僕が宮本の席を見ると、そこは空白だった。いつも僕より先に登校して、窓の外を見ている彼女の姿がない。空虚な座席。
「今日、宮本休みなんだな」
山下が僕の肩を叩く。
もしかしたら、僕のせいなんじゃないだろうか――もしかしなくとも、僕のせいだろう。ああ、どうしたものか。ただでさえ女の子を泣かせてショックを受けているというのに、女の子が立ち直れないほど泣かせたというのか。
「あ……滝川、なんかしたのか」
僕のなんとも言えない表情を見て何かを感じ取ったのだろう、山下が苦笑交じりに問う。憐れみを含んだその笑みに、僕はますます自分が情けなくなる。
「なんか、した……」
僕は脱力して、その場に座り込んだ。山下もしゃがんで、僕の背中に手を置いた。「大丈夫か?」という彼の一言に、なんだか泣きたくなってきた。僕が顔を上げると心配そうに僕を見る山下の顔、髪の毛がいつものごとく、あちこちに跳ねている姿に、どうしてか溜め息が漏れる。
「大丈夫じゃない、かも」
僕が力無くそう言うと、山下は僕の背中をばしばし叩いた。
「元気出せ」
その一言が聞こえたと同時に、始業のチャイムが聞こえてきた。
多分、僕の元気は出ないだろう。山下に叩かれた背中がじんわりと痛い。昨日は腫れて、ひりひりと痛んでいた右手は、今日は殆ど痛くなかった。どうせなら、僕を責めるみたいに痛んでくれれば良かったのに。




