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「おい、聞いたぞ、滝川。お前昨日、あの宮本に話しかけられて無視されたって」
朝、教室で会って、開口一番に山下はそう言った。僕を憐れむ気持ちが見え隠れする笑みを浮かべている。
「別に、無視されてない」
ずいぶんと返事を聞くまで待たされたが、ちゃんと返事をしてくれた。あの間、じっと彼女の声を待ち続けた僕は、なかなか根性があるだろう。
「え、無視されてたって、言ってたぞ、教室の奴らは」
「そいつらが帰ってから、話したんだ」
「はは、お前も大概頑固だよな」
山下は爽やかに笑って、僕の背中を叩いた。バシンと小気味良い音が鳴って、ジンとした痛みに僕は不満げに下唇を出す。教室に視線を走らせて、ふと宮本の後ろ姿が目についた。いつものごとく、自分の席に座って、窓の外を見つめている。
「変な奴だよな、宮本って」
「その宮本に話しかけるお前も、相当変わり者だぞ」
それは心外だなと思ったら、昨日宮本にも「変わってる」と言われたことを思い出した。いや、山下に言われるのはなんとなく分からなくもないが、宮本に言われるのはやっぱり納得いかない。僕は彼女の背中を睨みつけた。
「おいおい、目怖いって」
山下が苦笑しながら、僕の顔の前で掌を振る。僕は目線の行く先を、宮本から山下へと移した。
「その変わり者の僕に話しかける山下も変わり者だよな」
僕がそう言うと、山下は大きく噴き出して「あっはっはっ」と大声で笑い出した。クラスメートが不思議そうに、僕達を見る。
――ああ、僕達への視聴率が高すぎる。
「個性があってこその生物だもんな、俺らは。皆変わり者だ」
そう言って山下はまた笑う。山下の言う「俺ら」がどこまでを指すのか分からなかったが、僕も笑った。そこで僕は、昨日の自分の発言を思い出した。「普通の女の子」と僕は宮本に言ったのだ。普通になれっていうのは、可笑しい発言だったかもしれない。
僕はもう一度宮本を見た。彼女は相変わらず窓の外を見ている。




