九話 第十一回クラン対抗イベント開催
前回のクラン対抗イベントで二位のクラン、『ブルーファイターズ』の艦隊の間を縫うように、二機のアーマードスーツが高速で飛んでいた。
青いボディに銀色の四枚羽が輝くエリアルアーマードスーツ、もう片方も同じようなカラーリングのマルチユニットアーマードスーツだ。こちらは全身にミサイルポッド、腰部にレーザーキャノン、右肩部に多連装ミサイルランチャー、左肩部に二連装レールガンと、かなりの重武装である。
「カナ、今回のイベントもアレ使うのか?」
マルチユニットのプレイヤーが訊ねる。すると、カナと呼ばれたエリアルのプレイヤーが自慢げに答える。
「当然、しかも前のイベントの時よりも進化したやつだよ。今見せようか?ロイ」
「やだよ、巻き込みBAN喰らいたくないし」
「されっこないよ。運営の上の立場に私の彼氏いるから」
「あー、そういやそうだった」
不穏な会話を交わす二人は艦隊の先頭にいるブルーファイターズの旗艦へと飛んで行く。
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防御陣地に移動する最中、ユカが俺に訊ねてきた。
〈ハナサギ君、エリアルヘロンの主兵装は理解してる?〉
「ビームマグナムとビームブレード、あと腕にビームトンファーが付いてます」
俺はディスプレイをタップして、兵装を確認してみる。
大体は言ったのと合致している。
「ほかはないです」
〈分かった。あなたは虎の子だから、ここぞというときに出撃してもらうけれど大丈夫?〉
「もちろんです」
俺は即答する。目の前にデブリ帯が見えてくる。戦艦が一隻通れるかどうかの隙間を通って基地に到着する。小惑星に偽装した基地が三つ。真ん中が指揮の中枢を担い、周りの二つがアーマードスーツの発着等を行う。既に何隻もの艦艇が集まっている。
すぐにユカ達率いる本隊が合流、防衛体制を構築していくのだった。基地の指令室に行くと、すぐに作戦会議が始まった。会議と言っても実に簡素なものだったが。
「デブリ帯にターボレーザー砲塔とスナイパー部隊を配置してある。あなた達が通ってきた隙間のところにね。できるだけそこで敵を食い止める。アーマードスーツ部隊はその隙間を通り抜けた奴だけを相手して。デブリ帯を抜けて敵の本隊を叩きに行くのは禁止。分かった?」
ユカの言葉に皆がうなずく。
「ハナサギ君とシンギュラリティだけど、どうしてもやばくなったら出撃してもらうから」
「虎の子って訳か」
ヨッシーが納得したようにうなずく。その時、プレイヤーの目の前にディスプレイが展開される。
《第十一回クラン対抗イベントを開催します》
ついに、俺にとって初めてのイベントが開催された。
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ブルーファイターズの艦隊がデブリ帯の前方に出現する。
「あれがシンギュラリティを確保したっていうピースコンパスの拠点か」
先頭の旗艦の艦長席に座ったカナが指示を出す。
「レーダー偽装解除!アーマードスーツ隊は発進、シンギュラリティを奪取せよ!」
艦艇から次々と発進し、デブリ帯へ向かっていく。
「敵のレーダーに映って大丈夫なのか?」
副リーダーのロイが女に話しかける。
「さあ、知らない。私が出れば感づかれていようがいまいが変わんないし」
「シンギュラリティ相手にアレがどこまで通じるか、にすべてがかかってるな」
ロイの言葉にカナが頷く。
同時刻、ピースコンパスのレーダー監視員がスナイパー部隊からの通信を伝える。
「敵性勢力確認!敵多数がデブリ帯に突入とのこと!」
「アーマードスーツ隊、発進!」
その指示で艦艇のカタパルトデッキ、基地の格納庫からアーマードスーツがとびだしていく。
「レーダーに敵の艦隊が映っていない以上、慎重な行動をとらざるを得ないわ。敵と交戦する時は出来るだけ消耗を抑えて」
ユカが忠告する。レーダー監視員が逐一状況を伝える。
「デブリ帯を抜けた敵影はなし、スナイパー部隊とターボレーザーで食い止められてます」
ユカが頷いて格納庫で待機しているエリアルヘロンに通信をつなぐ。
〈ハナサギ君、絶対に勝手に出撃したりしないでね。私が合図した時だけよ〉
ユカの忠告に俺は苦笑いしながら答える。
「分かってますよ、のっぴきならない状況になったら教えてくださいね」
本当はミネーたちと一緒に戦いたかったが、ダメと言われている事をわざわざやるほどの勇気は持ち合わせていない。一度も戦わずに終わることはないだろうが......。
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「誰もデブリ帯を突破できていないようね」
カナがニヤッと笑う。ロイが訊ねる。
「俺が出ようか?」
「......頼むわ」
ロイが格納庫に向かう。程なくしてマルチユニットアーマードスーツがカタパルトデッキに現れる。
「ロイ、マルチユニットヴァレンシア出る!」
マルチユニットヴァレンシアがデブリ帯に向かう。ディスプレイを操作し、兵装を選択する。
「キャノンキャンサー使用、全員どけ!」
マルチユニットヴァレンシアがバズーカ砲を発射する。弾頭がデブリ帯の隙間の中ほどで爆発し、赤い粒子をまき散らした。その粒子は発射されたレーザーを拡散させて味方を守る。
「敵の防衛設備は封じた。後に続け!」
マルチユニットヴァレンシアを先頭に、ブルーファイターズのアーマードスーツが再突入していく。
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防衛設備の無効化の一報はやはりスナイパー部隊からもたらされた。ユカは即座にアーマードスーツ隊に指示を出す。
「全機、敵は防衛設備を無効化、白兵戦に備えて!」
そんな通信を聞いていた俺は思わず操縦桿を握る。
「......出ちゃダメだった」
頼むぞ、ミネー、アリス、みんな。
ピースコンパス史上最大の戦闘が今、幕を開けようとしていた。




