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平凡男子のVRMMO~初心者だけど宇宙で無双します~  作者: めくりの
一章

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七話 まさかの邂逅

 スペースウォーリャーズからログアウトした俺はVRゴーグルを外して時計を見る。四時二十分、かなり時間が経っている。

「はー、お腹すいた」

 有栖川がお腹をさすりながら立ち上がる。

「ちょっと早いけど、飯行くか?」


「なら良いところを知ってる。そこに行こう」

 峰岡がそう言って上着を羽織る。

「まだ早いぞ、俺あんまり腹減ってない」


「私はすいてるから行こうよ」

 なんだコイツ。おやつでも食っとけバカ。そんなことを思っていると、後ろから声を掛けられる。

「あ、あの花鷺さんですか?」

 振り向くと、小柄な女の子が立っていた。丸眼鏡に三つ編みのおさげはどことなく文学少女を思わせる。

「あ、えと」


「はわわ、自己紹介がまだでしたね。木南きみなかえでといいます。さっきは助けてもらって、ありがとうございます」

 木南?もしかして。

「ヴァリュートって人ですか?」

 俺が訊ねると、楓はぴょんぴょん飛び跳ねる。

「わあ、よくわかりましたね」

 流石にヨッシーなわけないしな、これぐらいなら予想がつく。

「ヨッシーって人も戦ってたよな。あの人は?」


「あの人はニートよ」

 有栖川が眉一つ動かさずに言い放つ。

「ああ、そう......」

 他人の人生計画に口を出すつもりはないが、ゲームにうつつを抜かしている暇はあるのだろうか。

「あ、あの、お礼がしたいんですけど、お時間ありますか?」


「俺?一応空いてるけど......」

 俺は峰岡たちの方を見る。峰岡が口を開く。

「六時にいつものところで合流な」

 峰岡が言うと、有栖川も楓に向かって激励を送る。

「楓、うまいことやりなさいよ」

 うまいことってなんだよ。あといつものってどこだよ。

「そ、そんなんじゃないですよ。い、行きましょう花鷺さん」

 俺は楓と連れ立って講義室を出る。まだ四限が終わっていないので人通りはまばらである。

「えっと、どこへ行くんですか?」

 俺が訊ねると、楓は顔をパッと輝かせる。

「スペースウォーリャーズオフィシャルショップです。丁度買いたいグッズがあって。ついでに花鷺さんにお礼もできたらと思って」

 オフィシャルショップ?なんかCMでやってたな。

「確か、PILCOにありましたよね」


「そうですそうです。かなり大きい店舗なんですよ」

 PILCOというのはかなり大きな商業施設、簡単に言ってしまえばイ○ンモールである。

「でもここからだと結構時間かかるんじゃ......」


「爺やに車を出してもらってますので」

 爺や?現実で爺や呼びしている人間を初めて見たぞ。見れば正門の前に立派な黒塗りの高級車が止まっているではないか。

「え、あれ?」

 俺はなかなか凄い子とお近づきになってしまったと感じながら黒塗りの高級車に近づいていく。

 車からいかにも執事のような格好をした初老の男性が降りてくる。

「御勉学に励んでおられますかな、お嬢様」


「当然ですとも、お父様とお母さまの期待に応えなくてはいけませんから」

 

「ほほほ、爺やも鼻高々ですぞ......して、隣の方は?」

 爺やのにこやかな表情が俺を見るなり一変する。それはそうだ、得体のしれない男がお嬢様の隣にいるのだ、警戒はするだろう。

「こちらの方は私の恩人です。丁重に対応なさい」

 楓の口調が変わる。さっきとは違って、どこか凛々しい印象を受ける。

「......そうでしたか、お嬢様の恩人とは。ではどうぞ」

 爺やが後部座席のドアを開ける。俺は促されるままに楓の次に乗り込む。すると、楓がこっそりと耳打ちする。

「ああでも言わないと爺やは貴方を乗せてくれませんわ。あくまで方便ですので」

 楓が気を遣ってくれたのは言われなくても分かる。わざわざ方便と釘をさすってことは......お嬢様ってのは大変なもんだな。

 三十分ほど揺られたのち、PILCOに到着した俺と楓はすぐにオフィシャルショップへ向かった。

 見渡す限りのグッズに俺は心なしか圧倒される。

「これは......すごいな」


「でしょう?日本で一番規模の大きいオフィシャルショップなんですよ」

 楓がグッズを物色しながら言う。

「あ、あのぬいぐるみ」

 俺は見覚えのあるぬいぐるみに目を留める。俺の初陣の相手だった三枚羽のアーマードスーツのぬいぐるみ。プレイヤーがグッズになってるのか。その隣にはカガリのアーマードスーツのぬいぐるみもある。

「プライマルクランのグッズですね。イベントで優勝したチームはグッズ化がされるんです」


「グッズになるのか。プライマルクランってすごいんだな」

 俺がしみじみとつぶやいたとき、後ろから快活な声に話しかけられる。

「そう、プライマルクランはすごい。よくわかってるじゃない」

 振り向くと、俺より背の高い女性が真っ白な歯を輝かせてこちらを見下ろしている。身長は180はあるのではないだろうか。

「えと、どうも」


「私はね、向こうじゃ『地獄の番犬』って呼ばれてるんだ」

 何の話だ?俺が戸惑っていると、楓が目を輝かせる。

「『地獄の番犬』、プライマルクランの中でシンギュラリティに最も近いと言われているプレイヤーです。前回のクラン対抗イベントでは撃墜数三百を叩き出したトッププレイヤー、まさかこんなところでお会いできるとは......」

 楓は感涙を流す勢いだ。なかなかすごい人らしいが、どうせならシンギュラリティ本人に会いたかった。俺はそう思い、早々に会話を打ち切ろうとするが、楓は会話を続ける。

「今度のイベントはもちろん......?」


「勝ーつ!」

 なんだそのしょうもないノリは。ファンならもっと聞きたいこととかあるだろ。

「期待しててよね」

 女は俺と楓に向かってそう言ってその場を去った。

「ちなみに番犬ってどれだ?」


「そこの三枚羽のアーマードスーツです」


「ああ、これか」

 ......ってこの三枚羽が地獄の番犬ってやつなのか⁉俺、初陣で化け物と戦ってたのか。

「どうかした?」

 楓が俺の顔を覗き込んでくる。

「あ、いや、何でもない。そんなことより、お目当てのグッズがあるんじゃないのか?」


「あ、そうだった」

 こうして俺と楓は買い物をなんやかんやで楽しみ、爺やの車で峰岡の言っていた『いつもの』に向かうのだった。


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