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平凡男子のVRMMO~初心者だけど宇宙で無双します~  作者: めくりの
二章

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十七話 次なる作戦

カクヨムコン11が落ち着くまで休載します

 ヴァリュートが声を掛けるとガープは攻撃を止めた。話ができる状態だと判断したヴァリュートは武装を全て解除して自機をアガレスに近づける。

「大丈夫?」


〈うん〉

 少年は疲れたような声で返事を返す。先ほどとは打って変わって静かな様子にヴァリュートは安心する。

「コックピットはどこ?お姉さんが迎えに行くから」


〈ダメだよ、僕は人を殺しすぎた。罪を償わなきゃ〉

 十二歳の少年が背負うには重すぎる罪の意識。それがヴァリュートの心を締め付ける。

「君が背負う必要はないわ。子供のしたことの責任は大人が取るから」

 大勢の人を殺したという事実は消えないが、そうするしかない環境にした人間にも責任を取らせるべきだ。

「今はコックピットから出て、私のところに来て」

 ヴァリュートが言うと、首元から球体がせり出してカパッと開く。ヴァリュートは自機の手を球体の方へ向け、手のひらを上に向ける。球体の中から出てきた少年がその手のひらに足を乗せる。

「こっちにおいで」

 コックピットハッチが開き、身を乗り出したヴァリュートが手を差し出す。

 少年はその手を取った。二人はコックピットに入る。

「もう人を殺さなくていいんだよ」


「本当?」


「噓つかないよ」

 ヴァリュートがエリアルゴースト・イポススタイルをガープから遠ざける。

「パイロットの少年を救出、格納庫の安全は?」


〈こちらを基地司令室、よくやってくれた。沿岸部の敵も片付いた。格納庫に戻って大丈夫だ〉

 ガルダがねぎらいの言葉をかける。

 エリアルゴースト・イポススタイルが穴の開いた天井から格納庫に着陸する。機体のコックピットハッチの部分まで床が下がる。ヴァリュートはコックピットハッチを開いて少年とともに外へ出る。ヘルメットを外すと、硝煙と海の入り混じった香りが鼻をくすぐる。

 少年もヘルメットを外し、白い肌と小麦色の髪を見せる。

「ここはマスクなしでも息ができるんだね」

 少年はポツリと一言。それはエステア連邦が如何に危うい状況かを察するのに、ヴァリュートにとっては十分だった。

「そう。好きなだけ吸えるよ」

 ヴァリュートが言ったとき、軍用バギーが格納庫に入ってきた。助手席にガルダの顔が見える。

 軍用バギーが止まり、ガルダとユカが降りてくる。

「ヴァリュート!」

 ユカが駆け寄る。

「大丈夫なの?尋常じゃない様子だったけれど......」


「自分でもよくわかってないんです。なんであんなにのめりこんだのか......」

 格納庫に続々とアーマードスーツが戻ってくる。

「気持ちはわかるけど、これはゲームであるという前提は忘れないで」

 ユカの言葉にヴァリュートが頷く。

 ヨッシーがヴァリュートとカナのところに歩いてくる。

「ヴァリュート、お前大丈夫なのか?」


「心配かけてすいません」

 ヨッシーが眉をひそめる。

「謝ることはないが......お前、一旦ログアウトした方がいい。さっきも人格が変わりかけてた。現実に戻って頭冷やしてこい」

 ヴァリュートが頷く。

「分かりました。後のことは任せても?」

 ユカが頷く。

「任せて。お疲れ様、ゆっくり休んでね」

 ヴァリュートがログアウトする。

「このシナリオ、どうもおかしくねえか?」


「同感、シナリオの先が全く読めない。ものすごい数の分岐があるシナリオって線は現実的じゃないし......」

 ヨッシーが同意を示す。

「まるでリアルタイムで状況が進んでいるような感覚だ。NPCの人間味が強いのも何か関係があるのかもな」

 二人の間に沈黙が流れる。がそれをファナリスが破る。

「あの、ヴァリュートさん、大丈夫なんですか?」


「えと、ファナリス君だっけ?あの子は大丈夫よ。心配してくれてありがとう」

 ユカが笑う。この子もハナサギ君たちと同じぐらいの年齢かしら。

「あのアームドシップから嫌な電波というか、干渉波が出ていて、それがヴァリュートさんに影響を与えていたような気がして」

 その言葉にユカとヨッシーが顔を見合わせる。

「教えてくれてありがとう、あの子に詳しく聞いてみるわ」

 ユカが言うと、ファナリスは一礼して走り去った。

「ヴァリュートに影響か......」


「機体に影響を及ぼすんじゃなくて、人そのものに影響を及ぼすなんて」


「もしかしたらゲーム側がプレイヤーの脳みそいじってたりしてな」

 ヨッシーが茶化すように言ったのでユカはとりあえず吹き出しておく。

「このゲームには高度な自律AIを積んでるって聞いたこともあるし、あながち間違いじゃなかったりしてね」




__________________________________

 いまだ襲撃の余韻の残るフロンタル基地を月明かりが照らす。

 この襲撃でフロンタル基地は大きな打撃を受けた。幸い、海上に待機していたエステア軍の小規模艦隊は脆弱で、ハナサギたちの奮戦で撃滅することに成功した。

 とはいえ、基地の防衛体制は大幅に弱体化している。四十五機いた地球連合軍のアーマードスーツも二十機にまで減り、彼らの母艦たる艦艇も大半がガープの攻撃によって沈んでしまったか、あるいは機能を停止している。

 ピースコンパスの戦力としても、旗艦は多少の損傷で済んだものの、複数の僚艦は撃沈されて、地球から遠く離れたピースコンパスの基地のドックにリスポーン。やられたアーマードスーツのパイロットもそこでリスポーンすることとなった。

「日中の襲撃による被害は深刻だ。一番近い基地に救援を要請はしたが、こちら側でも最大限の努力はするべきだ」

 ブリーフィングルームでガルダが語る。

 司令室も攻撃の余波は受けており、決して軽くない被害を被っていた。作戦立案書を分析していたコンソールは座席と分析官ごと瓦礫でペシャンコにされている。

「喫緊の課題は、失った戦力の補強である。今の我々の状態では、宇宙に上がることすらままならない。幸い、ユカ殿の組織の旗艦はある程度の戦闘能力と航行能力を保っている」

 ガルダがユカの方に目線を向ける。

「そこでこんな作戦を立てた。スクリーンが動かないので口頭での説明になってしまうが容赦しろ。

地球連合軍特殊作戦群の残存部隊がエステア軍の地球軌道艦隊に攻撃を仕掛けるという情報をつかんだ。我々はこれを援護し勝利後、残存部隊の戦力をこちらにすべて引っ張ってくる。

 これなら我々が失った戦力を補い、宇宙での作戦行動能力を取り戻せる可能性がある!」

 ガルダが雄弁に語り終えると、まばらな拍手が起きる。

「作戦に参加するのは?」

 リクが挙手しながら訊ねる。

「すでに決めてある。作戦を指揮する艦はピースコンパスの旗艦『ノアの方舟』だ。作戦に参加するパイロットはリク、ファナリス、メイナード、ハナサギ、アリス、ヨッシー。それ以外のパイロットは待機だ」

 ガルダが背筋を伸ばす。

「もう一度言うが、特殊作戦群の残存部隊と合流出来れば、このくそったれな状況をひっくり返してエステア連邦に反撃するチャンスが生まれる。作戦に参加する兵士はこれを忘れるな!

 ガルダは一息で言い切ると、ブリーフィングルームから出ていった。

「六人で出撃か、何で全員動かさないんだろ」

 俺の疑問にユカが答える。

「敵は撃退したけど、まだ気は抜けないから。フロンタル基地は防衛をアーマードスーツに依存してる状態だし、あまり数は出せないのよ」


「なるほど、そういえばピースコンパスの人もめっきり数が減りましたね」


「リスポーン地点が撃沈されてたのよ。今頃地球からずっと離れた基地にいるそうよ。撃沈寸前の状態でドックにリスポーンするからすぐの出撃は無理だろうし」

 ユカがため息をつく。

「旗艦が無事で良かったわ」

 仮に旗艦が撃沈されていたらこのシナリオはどうなっていたのだろう。近場の基地からの応援を待つだけ?

 俺はフーズがいないことに気が付く。

「あれ、フーズさんは?それにフレイさんも」


「フレイ?ああ、総裁はシェルターに、フーズさんは格納庫で整備班を指揮してる。あの小太りのおっさん、色々おかしなものを搬入してたみたいよ。イポススタイルとかバティンスタイルとか他にも特殊兵装があるとか」

 ユカが立ち上がってアリスに声を掛ける。

「私は戻るから、あんまりここに長居しないでよ」


「何でわたしに言うのさ」

 アリスが訊ねるが、ユカは答えずにブリーフィングルームを去った。

「お姉さん、信用されてないんじゃない」

 アリスの隣に座っていた少年が笑いながら言う。アームドシップ、ガープを操っていた彼だが、エステア連邦との戦争に決着がつくまでは責任問題を保留するという処分が下された。

「生意気言ってんじゃないよ」

 アリスが少年の額を指ではじく。バチンといい音が鳴り、少年が涙目になりながら額を押さえる。

「ファナリス、リク、船に行きましょ」

 アリスもリクとファナリスに声をかけて席を立つ。

 こうしてピースコンパスと地球連合軍はさらなる作戦に向けて準備を進めるのだった。

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