第十話 チーター出現
ミネーたちはレーダーを注視して敵の攻勢に備えていた。
「一瞬で突破されたわね」
アリスが呆れたように言うとミネーも賛同する。
〈キャノンキャンサーだとさ。まあ、それを持ち出したってことはかなりの数がターボレーザーとスナイパーに焼かれたんだろ〉
その時、ミネーの隣にいたアーマードスーツが撃ち抜かれて爆散する。
〈は?〉
アーマードスーツ隊に衝撃が走る。アリスは即座に自機を移動させる。敵が小さく視認できる。遠くからでも重武装なのが分かる。
「敵はフルファイトか?」
先頭のアーマードスーツの画像を望遠で拡大する。
「こいつは......!」
アリスにはその重武装のマルチユニットに見覚えがあった。
「こいつら、ブルーファイターズだ!」
先頭のマルチユニットから無数のミサイルが発射される。
〈ブルーファイターズっていうと、カガリに負けてチートに手を出したやつがリーダーやってるところか〉
ミサイルをよけながらミネーが言う。プライドの欠片もない負け犬集団だ。
〈聞き捨てならないな!〉
マルチユニットヴァレンシアがミネーのエリアルシュトレインに向かって腰部のレーザーキャノンを乱射する。
〈運営が何も言ってこないんだからチートじゃないんだよ!〉
マルチユニットヴァレンシアがエリアルシュトレインへ一気に距離を詰め、ビームブレードで斬りかかる。
〈じゃあどんな装備だよ、言ってみろ!〉
エリアルシュトレインも負けじとビームブレードを繰り出す。
〈言えないね!だってチートだからァ!〉
ビームブレードが激しくぶつかる。そこへヴァリュートの援護射撃が加わる。
〈チートは健全にゲームを遊ぶまともな人に迷惑をかけているんです。恥を知った方がいいですよ!〉
エリアルゴーストがライフルを連射する。
〈うるせぇ!何も知らないくせに!シンギュラリティを経験したからこその選択だ!〉
マルチユニットヴァレンシアがありったけのミサイルを発射する。敵味方を問わない攻撃にミネーが驚く。
〈こいつ、やばすぎだろ〉
ミサイルの弾幕をかいくぐるようにアリスのエリアルワンダーランドがマルチユニットヴァレンシアと激しく切り結ぶ。
「私たちだってシンギュラリティとやりあったさ」
エリアルワンダーランドがヴァレンシアの左肩部のレールガンを斬り落とす。
〈くそっ〉
ロイが苦悶の表情を浮かべる。
こいつら、思った以上の手練れだ。シンギュラリティらしき機体は見ていないが......。
〈手を抜いてやがるのか?〉
マルチユニットヴァレンシアの右腕がアリスに斬り落とされる。
〈敵は想像以上だ、カナ!〉
ロイはそう叫ぶなり、逃げに徹する。
__________________________________
「何が想像以上だ。油断しやがって」
カナが立ち上がって格納庫に向かう。四枚羽のエリアルバレルディのコックピットに乗り込む。
「最初から使っていくか」
エリアルバレルディがカタパルトから射出される。エリアルバレルディはとんでもない速度でデブリ帯を突き抜け、戦場に到着する。
「来たよ」
アリスがエリアルバレルディをきっと見据える。
「あれ、チーターの機体じゃない」
指令室のディスプレイに写された機体を見てユカが眉をひそめる。
「面倒な奴が来たわね。てかあいつカガリに負けてたわよね」
「噂じゃ単機でクランを壊滅させられたとか」
レーダー監視員が肩をすくめながら言う。
「眉唾物の話ですけどね。ハナサギ君を出しますか?」
「まだよ、あいつがチートを使うまで待機よ」
ディスプレイを外の映像に切り替える。相変わらずマルチユニットヴァレンシアの飽和攻撃は敵味方問わずに脅威的なまま。ミネーとヴァリュートが抑えようとしているが、簡単にはいかないようだ。チーターとアリスも互角の戦いを繰り広げている。チートを使っていないから何とかなっているが、ひとたびチートを使われれば、ハナサギ君の力を借りるしかない。
ユカがハナサギに通信をつなぐ。
「ハナサギ君、そろそろやばくなりそうだから準備しておいて」
〈分かりました。それと、俺の隣にすごい武器が懸架されてるんですけど〉
そっか、ハナサギ君は初心者だもんね。知らないよね。
「大丈夫、私を信じて」
__________________________________
エリアルバレルディとエリアルワンダーランドが激しく鍔ぜりあう。
「エリアルじゃその四枚羽根はつけられないはずだけど?」
〈だから何だよ〉
カナが笑いながら返す。
〈お前のとこがシンギュラリティを持ってることは分かってるんだ。さっさとよこせよ〉
「何で?チート積んでもカガリに勝てないからァ⁉」
アリスが煽る。それにカナが乗せられる。
〈ほざけェ!〉
エリアルバレルディの四枚羽根からオルガ(全方位無線射撃砲群)が無数に射出される。
「粗相してんじゃねえぞ、負け犬!」
アリスがオルガから距離を取りながらまた煽る。
〈逃げ腰で言われてもね!〉
負けじとカナも煽り返す。
アリスが周囲を確認する。マルチユニットの飽和攻撃と無数のさっき放たれたオルガのせいで敵も味方もリスキル状態に陥っているようだ。
まだ何人か味方が生きているようだ。ミネーやヴァリュートはそう簡単にはやられないだろう。エリアルワンダーランドがライフルを乱射するが、飛び交うオルガが盾となってほとんどエリアルバレルディまで届かない。辛うじて届いたレーザーも無敵チートだろうか、少しの損傷も与えられなかった。
オルガからのレーザーがエリアルワンダーランドの右脚を撃ち抜いた。
爆発の衝撃で機体が大きく揺れ、体勢を崩す。
「しまった」
目の前にオルガが躍り込む。チーターは流石に荷が重かったか......。アリスが苦笑する。
〈墜ちろ!〉
カナが叫んだ瞬間、エリアルワンダーランドの周りのオルガが赫い軌跡によって切り裂かれる。
〈なんだ今の〉
カナが急いでレーダーを確認する。目を惹くものは映っていない。
警報音がけたたましく鳴り響く。その瞬間、S-Mode状態のエリアルヘロンが目の前に現れる。その手には巨大なメイスが握られている。
「ハナサギ君、後は頼んだ!」
アリスが叫んで基地へ戻る。
その声を聞いた俺は返事を返して巨大なメイスを目の前のエリアルバレルディに向けて振り下ろす。
「任された!」




