第四章 設定 + おまけ
先日はお休みをいただき、ありがとうございました。
投稿を再開させていただきます。
第四章 設定 + おまけ
●キャラクター
『クロノ・フォン・ストラトス』
※パラメーターに変動はない為省略。
備考
今作主人公。知識チート戦記もののはずなのに結局腕力で解決する系転生者。
童貞を遂に卒業できた。前世から続く呪いの装備を、とうとう解除できたのである。
巷では『真実の愛』に生きる男と呼ばれているが、実際はオッパイ信者。でも美女や美少女の乳尻太腿ならだいたい好きという多神教でもある。
なお、ここまでの武功における報酬について『燃え続ける油の沼』や『山火事になると手が付けられない泥』の調査を条件に、爵位や土地といった褒美を待つとクリス陛下に伝えたこともあって更に『真実の愛』疑惑が広まっている。
ただし、とうのクリス陛下は何となく察しがついたようで、1人静かに頭を抱えた。
今章の終りに、父親が他家の伯爵を殺害したことが判明。クロノも頭を抱えた。
『クリス・フォン・クロステルマン』
※パラメーターに変動はない為省略。
備考
金髪碧眼の男装の麗人。クロステルマン帝国の皇太子。
好奇心旺盛で頭の回転が速く、生まれる時代と立場が違えば学者になっていたかもしれない。
姉上の一件でメンタルがボロボロ。クロノカウンセリングと、サーシャ王妃の遺言でギリギリ持ち直した。
ホーロス戦争において、東側の帝国貴族達への褒美をどうするか頭を悩ませていたが、シルベスタ卿達が持ちかえったカーラの情報によりきちんと土地を褒美にできると判明。精神的な疲労もあって狂喜乱舞した。
その場にクロノがいた場合、『真実の愛』疑惑が更に深まったかもしれない。
だが女だ。なんなら巨乳美少女だ。帝都の貴腐人達がこの事実を知った場合、反乱が起きるかもしれない。
どことは言わないが、『G』である。15歳はまだまだ成長期。
『グリンダ』
※パラメーターに変動はない為省略。
備考
TS爆乳美少女メイド。栗色の長い髪に金色の瞳をしている。
クロノと同じく元日本人。前世では風俗通いが生き甲斐の40代おっさんであった。
遂にクロノと一線を越えた。今後は『私で童貞を捨てたくせに』を持ちネタにするか検討中。でも童貞どころか、クロノの諸々の初めてはだいたいグリンダである。
ケネス達ストラトス家家臣団の希望の星。転生者×転生者ということもあって、生まれてくる子供の魔力量はこの2人に匹敵する可能性が極めて高い。
わりと真面目に、このままだと次代の勢力図がえらいことになる。
どことは言わないが、サイズが『I』となった。15歳は以下略。
『リーゼロッテ・フォン・シルベスタ』
※パラメーターに変動はない為省略。
備考
銀髪に鋼色の瞳をした美女。クリス殿下の親衛隊隊長を務めている。
鋭い嗅覚と類まれなる頑丈さ。そして強靭な精神をもつエリート戦士。鍛錬を欠かす事はなく、その技量も十分に高い。
前章にてカーラからクリス陛下を守れなかったこともあり、兎に角強くなることを決意。
日々の訓練メニューをこなす中、ショットガンやライフルの練習も追加した。体力だけならクロノ並みのフィジカルエリート。
それもあって、部下のレジーナ、及びオリビアとの共闘でカーラと『黒蛆』を撃破。そのご褒美として、カーラからホーロス王国の様々な資料を受け取った。
どことは言わないが、『H』。どことは言わないが、そろそろ成長限界かもしれない。でも十分すぎる程にでかい。
『クリス親衛隊』
※パラメーターは個々で違うが、全員『武勇』と『魔法』の数値が『60』以上。また、クリス陛下への『忠誠』は『90』以上。
備考
総勢15名の、生粋のお嬢様集団なはずの珍獣集団。グリンダ曰く『まだギリギリお淑やかと言える女子校の子達』。
名前の出ている親衛隊は、
銀髪の無表情トンチキ美人でラーメン大好きな『リーゼロッテ・フォン・シルベスタ』。
黒髪ポニテ似非ギャル肌の色が可変式なファッションセンス派手派手『アリシア・フォン・シュヴァルツ』。
紫髪サイドテールクリス陛下にバブみを感じている女騎士その1『レジーナ・フォン・ブルース』。
オレンジ髪ボブカットクリス陛下にバブみを感じている女騎士その2『オリビア・フォン・ドーヴェイン』。
である。たぶん他の親衛隊もどこかしら残念。まだ見ぬ強敵達と思っていただきたい。もしかしたら名前や容姿の描写が今後もされないかもしれない強敵達()です。
主に皇領の法衣貴族の家から選ばれた令嬢達。法衣貴族と言っても、実際はほとんど血統による継承が続いている。その為、れっきとしたサラブレッド。
厳しい訓練の末に選ばれたエリート部隊。なお、最終選考は先帝コーネリアスの独断で行われた。
全員クリス陛下とは幼馴染であり、家族とも姉妹とも言える精神的な繋がりがある。
近衛騎士は親衛隊を含め、全員が『準男爵』以上の地位を持っている。まだ年若いシルベスタ卿は『男爵』だが、帝都守備隊の隊長は『子爵』だったりする。
どことは言わないが、親衛隊は最低でも『E』である。
『シャルロット・フォン・グランドフリート』
※パラメーターに変動はない為省略。
備考
グランドフリート侯爵家の令嬢にして、クリス陛下の婚約者。
腰まで伸びた赤いドリルヘアーの美女で、女性の平均を大きく上回る身長とバストをもつ。
れっきとしたお嬢様なのだが、言動のせいで色物系お嬢様っぽい。
何気に今章での出番が少ない。クリス陛下こと婚約者が、親衛隊こと愛人集団と海へバカンスに行ったと聞き、婚約者として急行した。
せっかくだし、クリス陛下を悩殺しつつ仲の良い親衛隊メンバーと遊ぼうとしていたが、クロノも砂浜にいた為撤退。婚約者に見せる為の水着ということで、かなり攻めた水着を選んだのが裏目に出たと言える。
なお、未だにクリス陛下が実は女だと知らない。
どことは言わないが、サイズは『H』。このアルファベットの女性キャラ多いなって?『H』というアルファベットが嫌いな男は少ない。つまりそういうことです。
『ギルバート・フォン・グランドフリート』
※パラメーターはまだ不明。
備考
クロステルマンに所属するグランドフリート侯爵家の当主。
『鉄血のギルバート』、あるいは『無敵のギルバート』の二つ名を持つ名将。圧倒的戦力差であっても、砦を守り味方の背中を狙う敵部隊を押しとどめた事でついた。
クリス陛下派閥の纏め役。長いキャリアと豊富な実績。そして潜ってきた修羅場の数もあって、皇帝派閥に欠かせない人材。
シャルロットの祖父であるが、実際は大伯父に当たる。実子は戦争で亡くなり、妻も他界しているので甥っ子を養子とした。その甥っ子も、既に亡くなっている。
今章では、ハーフトラックを利用し『電撃戦もどき』を提案。実行してみせた。
『カーラ』
所属:ホーロス王国 身分:暗殺者(恐らく騎士出身) 年齢:34歳
武勇:85
魔法:40
統率:50
知略:60
政治:60
忠誠:70(ホーロス王国)・友情:99
備考
ホーロス王国の暗殺者。身長2メートル越えのムキムキマッチョ。体術の技量においては、大陸でも有数の実力者でもある。
クロノとの戦闘で欠損した右腕と両足の代わりとして、魔物の一部を移植。完璧に適合した。
しかしかつての戦いで無茶をし過ぎた後遺症は残っており、寿命は残り半年もなかった。
それでも『怪人化』の薬を使っても理性を保っていたこともあって、ホーロス王国の錬金術師達は彼を称賛し、そのデータを元に更なる研究を進めようとしていた。
王国が危ういと判断した彼らは、研究資料と薬品を抱えて逃亡を図る。しかし、カーラと『黒蛆』によって阻止。全員王都と共に燃え尽きた。その研究資料と薬は、この世に一切残っていない。
友人達の最期の時間を守る為、城の前で奮戦。クロノがあの2人の時間を尊重してくれたことを察し、燃え盛る城の中へと姿を消した。
カーラの肉体という、ホーロスの錬金術師達が作った最後の遺産は、灰塵と化した。
『サーシャ・フォン・ホーロス』
所属:ホーロス王国 身分:王妃 年齢:20代。詳しくは『黒蛆』によりデータを抹消
武勇:40 怪人時:95
魔力:75 怪人時:90
知略:85 ※やる気なしの為半減中 知略:42
政治:90 ※やる気なしの為半減中 政治:45
忠誠:1(王国)・友情:90・愛情・99
備考
クロステルマン帝国の元皇女にして、現ホーロス王国の王妃。
赤みがかった金髪に、抜群のプロポーションをもつ妖艶な美女。見た目は20代後半。どことは言わないが、『G』。
元々は才気に溢れ、その敬虔さもあって慈悲深く努力家な皇女であった。あるいは、この頃ならカールと無二の親友になったかもしれない。
しかし、14歳の頃に実の父親によって凌辱された。数回にわたり、彼の宴における余興としてその身を蹂躙されることになる。
その際に生殖能力を失い、後にホーロス王国へと嫁ぐことになった。
帝国を嫌悪するようになった彼女は、外国ならば幸せが待っていると壊れかけの心をどうにか保とうとしていた。しかし、ホーロス王国もまた『終わった』国であった。
結果、サーシャは『この身に降りかかる不幸は、全て神の御遺志。自分は地獄へ行くべき人間であり、きちんと地獄へ堕ちるに相応しい存在でなければならない』と考えた。
あるいは、それが彼女なりの自己防衛だったのかもしれない。
そうして、被害者だった皇女は、加害者である王妃となったのである。行った所業もあって、死後は地獄に堕ちるかもしれない。
だが、その旅路は1人ではなく、愛する者が隣にいる。もしかしたら、斜め後ろで友人が1人、囃し立ているかもしれない。
『ティキ・フォン・ホーロス』
所属:ホーロス王国 身分:国王 年齢:34歳
武勇:20
魔力:80
知略:75
政治:70 ※やる気なしの為半減中 政治:35
忠誠:1(王国) 友情:90 愛情:99
備考
ホーロス王国の国王。雪のように白い髪と白い肌。そして真っ赤な瞳。体つきは華奢で、喉仏もなく少年とも少女ともとれる中性的な容姿をしている。
実は成人男性の平均より背が低いのだが、女性としてはやや長身のサーシャと並んだ時のことを考えてシークレットブーツを履いていた。
どこか蠱惑的な雰囲気を纏った彼だが、実際は先代や先々代の国王が作り上げた対コーネリアス皇帝用のハニートラップ要員。
彼を始めとした第3以下の王子達には、様々な人体改造が行われていた。睾丸の摘出、発育の阻害、魔物の内臓の移植等々。
ティキ国王は、その実験における唯一の生き残りにして成功例である。単純に、彼が他の兄弟達より頑丈だったとも言える。
皇帝を篭絡する為に様々な手練手管を学び、類稀な容姿と実験の成果により帝国を乗っ取るという作戦は完璧に思えた。
しかし、『最高傑作』過ぎた故に、無意識に先々代と先代の国王を篭絡してしまう。
紆余曲折の果て、ホーロス王国には彼以外に王位継承権を持つ者がいなくなってしまった。
王国の首脳陣は事実上の壊滅。更に嫁いできたサーシャを、『自分達が孕ませて次代の王の親に』と動いた生き残り達も逆に手玉にとられて同士討ち。あげく、トップが消えたことで末端が様々な薬物の種子を持ちだし王国中にばら撒かれる始末。
こうして、ホーロス王国は自滅の道を歩んでいたのである。ついでに、コーネリアス皇帝は一連の流れを知っていた可能性が高いので、肝心のハニートラップが成功したかは半々であった。
サーシャ王妃に一目惚れしており、こっそりと共通の友人であるカーラに相談していた。
彼は燃え盛る城の中で、人生最初で最後のプロポーズを行ったのである。
後世に愚王として、あるいは悪漢として語られるであろう彼は、地獄への道のりで愛する人と、友人と共に、楽しそうに笑っているかもしれない。
『イーサン』
所属:クロステルマン帝国 身分:傭兵団団長 年齢:25歳
武勇:65
魔力:70
知略:60
政治:60
忠誠:30(帝国) 60(ストラトス家) 80(サルバトーレ王国)
備考
金髪碧眼の青年。長身でがっしりとした体つきをしており、『戦う王子様』という雰囲気を纏っている。
サルバトーレ傭兵団の団長をしており、ストラトス家に雇われた。
彼の夢は『サルバトーレ家の復興』と『幸せな結婚生活』である。
スネイル公国は元々属していた王国から独立した際、周辺の小国を無理矢理併合した。その際に滅ぼされた国の1つが、サルバトーレ王国である。
帝国基準だと子爵以上伯爵未満な面積の国であったが、それでも王族だけあって魔力量はかなりのもの。日々の鍛錬もあって、肉体に魔力がよく浸透しており身体能力と戦闘技術は帝国の近衛騎士に匹敵する。
また、彼の傭兵団は元々サルバトーレ王国の家臣達であり、練度が高い。
国を失ったことが影響してか、家臣達は普通の貴族にコンプレックスがあり『貴族より貴族らしくあろう』としている。『貧しても高貴であれ』が傭兵団のモットー。
その影響もあって、イーサンもまた絵物語に出てくる王子様みたいな性格となった。
彼と彼の家臣達は、サルバトーレ家の復興を目的としている。ストラトス家に従いスネイル公国と戦い、かつての領土を奪還。独立は無理でも、貴族になろうと考えている。
なお、もう1つの目的はシンプル。好みの女性…とある部分が平坦な美女と、一生添い遂げたいと考えている。子供は3人欲しいとのこと。
これらの事情から、クロノと帝都出向組のストラトス家から重要マーク。雇われ傭兵団とは思えない待遇に、サルバトーレ傭兵団は『我らの大将があの人竜に認められた!』と喜んでいる。なお、厚遇過ぎてイーサンは困惑中。
家臣達を連れて帝都からストラトス家に向かった彼だが、もしかしたら道中でフラウ・フォン・ストラトスと運命的な出会いをした……かもしれない。
『カール・フォン・ストラトス』
※パラメーターに変動はない為省略。
備考
アイオン伯爵、殺っちゃった♡
『アイオン伯爵』
所属:クロステルマン帝国 身分:伯爵 年齢:51歳
武勇:50
魔法:60
知略:30
政治:45
忠誠:30(帝国) 50(伯爵家)
備考
逆恨みでストラトス家と帝都を行き来する者を片っ端から偶然()やってきた傭兵達を使い襲っていたら、突然屋敷を強襲したカールに槍で刺され……死んだ!
ちなみに、帝国貴族の各数値は『50』が平均である。血統による継承のデメリットがもろに出ちゃった系伯爵。帝国ではそれ程多くないが、珍しくもない。
●Q&A
Q.
皇帝がサーシャ王妃を襲ったのって、スラムの改善案に腹を立てたから?
A.
いえ。本当に『ちょうど良いから、味変で』感覚で襲われました。途中で『あ、娘の1人なの?じゃあ珍味ってことで』扱いされました。
Q.
これ、ホーロス王国はティキ国王改造しない方が上手くいったんじゃ?
A.
残念ながら、それやらないとコーネリアス皇帝が普通に警戒してホーロス王国潰しちゃうので……。
どっちにしろ、詰んでいました。
Q.
もっと早くティキ国王がサーシャ王妃に告白していたら、何か変わった?
A.
大筋は変わらないかと。サーシャ王妃は、もう愛する人が隣にいても止まれない状態でしたし、ティキ国王の現状もあってどちらにせよ止まる気はなかったと思います。
サーシャ王妃にとっても、彼は特別な存在でしたから……。
Q.
あの日、サーシャ王妃が夜コーネリアス皇帝の部屋を尋ねなければセーフだった?
A.
たぶん、アウトでした。彼女は彼好みの美少女に育っていたので……。
あの日夜中に皇帝の部屋を尋ねなかったとしても、どこかで壊されていたと思います。
Q.
イーサンとフラウのラブロマンスは!?
A.
たぶん次の章で出ます。
Q.
てっきり、カールはここで死ぬのかと……。
A.
私もちょっと考えたのですが、カールにはまだ役目があるので。
Q.
アイオン伯爵よ。ナレ死するとは情けない。
A.
急にカールが突撃してきたから……。
Q.
もしかして、サーシャ王妃って才能の塊?
A.
はい。皇帝×名門貴族の娘の子なので。たぶん、武術に関しても鍛えていないだけで磨けばシルベスタ卿並みの実力者になっていたと思います。
第1皇子と第2皇子も才能マンでしたが、クリスを皇太子にするのに反対した結果、纏めてコーネリアス皇帝に斬り殺されました。
Q.
そう考えると、クリス陛下はともかく、フリッツ皇子のステータス低くない?
A.
フリッツ皇子
「良い血筋でも、優秀な者が生まれるとは限らない。それが私だった。それだけだよ」
Q.
ホーロス王国って、魔物のサンプル多すぎない?
A.
あの世界、森の奥へ行けばどこの国でも魔物と遭遇するって言うのもありますが、あの国の場合諸々の実験の為に養殖もやっていたので。
Q.
魔物の養殖って、できるの?
A.
できます。ただし、滅茶苦茶危険です。
しかも、育てたからと言って懐いてくれるとは限りません。むしろバリボリ飼い主食い殺そうとします。
Q.
海……魔境過ぎない?
A.
たぶん、現代の潜水艦でも生きて帰れる可能性が低いぐらいには、深海はやべぇですね!
●おまけ もしも、クロノがホーロス王国に生まれていたら
王城の前の広場では、民衆が集まり歓声を上げていた。
掘っ立て小屋の出店が建ち並び、楽団までやってきて軽快な音楽を奏でている。
誰がどう見てもお祭りだ。多くの人々が笑みを浮かべ、街はボロボロだったが、ここだけは陽気な雰囲気に包まれていた。
だが、21世紀の日本の記憶がある自分には……およそ、この空気に相応しくない物が広場の中央に設置されている。
集まった民衆に見えるよう、木を組んで2階建て相当の高さにした台に、男が上って元気よく宣言した。
「これより、革命精神を侮辱した大罪人達の処刑を行う!」
民衆が、喝采を上げた。
連日の処刑で汚れたギロチンの刃が日の光に照らされ、その下にパンを1つ盗んだだけの瘦せ細った老人が固定される。
───僕は、どこで間違えたのだろうか。
処刑台を遠くから見つめながら、自分は声1つ上げることができなかった。
殺せと叫ぶ民衆の声に、刃を支える縄が豪快に切り落とされた。
被っているフードを、更に目深にかぶり直す。
もう、何も見たくなかったから。
* * *
ホーロス王国。それが、自分の転生した国の名前。
北の方にある小さな村に生まれ、貧しい暮らしを続けていた。
自分が特別不幸だったのではない。村全体がそうだったし、隣の村も、その更に隣の村も毎日が貧しかった。
違うのは、偶にやってくる神父達と騎士達ぐらい。彼らはでっぷりとした腹を揺らしているか、筋骨隆々としているかのどちらかで、毎回綺麗な格好をしていた。
彼らがやってくる度に、村の少ない金や食料が消えていく。時には、神父達が村の若者を男女問わず『隣人愛』だの『真実の愛』だの言って、夜中に教会の奥に引きずり込む。
何度も、石を投げて頭蓋を砕いてやろうかと考えた。今生の肉体は、どういうわけか異常に身体能力が高い。
しかし、実行に移したことはなかった。騎士が魔法とやらを使っているのを見たことがある。ここはファンタジーな世界なのだ。きっと、彼らは自分なんかより強い。
そう思い、いつも腹を鳴らして暮らしていた。
だが、転機が訪れたのは12歳の頃。
食べる物は同じなのに、他の子供達より妙に発育が良かったこともあって、森に向かう狩人達の手伝いをするようになった。
今生の両親が流行り病で亡くなっていたのもあって、死んでも誰も悲しまないという考えもあったのかもしれない。あるいは、その身体能力に目をつけられていただけかもしれない。
どちらにせよ、無策に森の奥へと踏み入った者達を、この世界は許さなかった。
魔物化した、体長4メートルを超えるクマが現れたのである。大人でも手が回らない大木をへし折りながら、その怪物は自分達に襲い掛かり───。
それを、自分は簡単に殺せてしまった。
咄嗟に振るったこの瘦せ細った腕は、あまりにも容易く怪物の首を引き千切った。
騎士達でも苦戦し、あるいは敗北することもあるという魔物を、である。どうやら、この肉体は自分が思っていた以上に高性能だったらしい。
村の食糧事情を、改善できるかもしれないと、この時は思った。それからは狩人達と積極的に森へと入り、木の実や野生動物の肉、そして薪を集めていった。
これにより、村はほんの少しだけ豊かになった。自分がもたらしたのは、微々たる変化。しかし、それでもそのほんの少しで餓死する者が減ったのである。
どうにか、猪どもを家畜にできないか。そんな風に考えていた、数カ月間のこと。
しかしどこから聞きつけたのか、すぐに騎士が徴税にやってきたのである。
増えた分の余裕は、根こそぎ持ち去られた。その上、奴は村長達に『ある物』を健康に良いと称して売ったのである。
それが前世で言う麻薬に類するものだと、村長達村の様子を見て、すぐに気づいた。
勝てないと思っていた騎士だが、不意打ちならばと殴り掛かり───拳の一撃で、彼の筋肉質な右腕は枯れ枝のようにへし折れた。
本当に、今生の体には驚かされる。
そいつを縄で縛ってから話を聞けば、何でもただの小遣い稼ぎの為に、独断で徴税と薬物の密売に手を染めていたらしい。
金をやるから見逃してくれと叫ぶ悪徳騎士を担ぎ、領主の所へと向かうことにした。
自分は、この時期待していたのだ。
過度な徴税は、騎士達の独断であったかもしれない。それは領主にとっても不利益となるはず。
ならば、徴税計画が見直され、今後村の皆が飢えずに済むかもしれない。薬に脳を壊された村長達も、きちんとした医者に診てもらい復帰できるはず。なんせ、ここは剣と魔法の世界なのだから。
もしかしたら、自分が騎士として召し抱えられるかも。だなんて、そんな妄想をしながら馬より速く駆けて。
現実というものを、知るのだった。
領主もまた、腐っていた。麻薬の密売に手を出し、その金で隣国の高級な敷物や美術品を買い漁っていた。
その領主は、こちらを反逆者と指さして吠えた。
騎士への加害は、言い分はあるものの認めるしかない。しかし、奴が問題視したのは麻薬の密売を糾弾したことである。
家畜の分際で生意気な、と。そう言って、領主は自分に騎士達をけしかけ、自らは魔法を使った。
死にたくない。その一心で、がむしゃらに抗い、
───あっさりと、勝ててしまった。
騎士達の手足をへし折り、放たれた火球ごと領主の頭蓋を粉砕した。
ずっと、勝てないと思っていた存在を、この肉体は容易く蹂躙したのである。
初めての殺人に対する恐怖か、あるいは思わぬ力を手に入れた高揚感か。
息を乱し、正常な思考ができなくなっていた自分は、生き残った騎士達が方々に逃げて行くのを見逃してしまったのである。
そこからは、まるで濁流の中に身を置いているようだった。
次から次へと、自分を殺しにくる貴族や騎士達。
被害は村にまで及びかけ、どうにか彼らを守ろうとした。ひたすら拳を振るっているうちに、いつの間にか国中が大変なことになっていたらしい。
この世界の人々にとって、『平民でも貴族を殺せる』というのは劇薬だったのだ。
各地の村や街で反乱が起き、その中でピエールという男が頭角を現す。
彼は自分に接触してきて、様々な話をした。ピエールという男は話し上手なうえに聞き上手で、ついつい、話し過ぎてしまったものである。
民主主義、火薬、鉄砲、革命。その他諸々。
そんなことまで話すつもりはなかったのだが……自分は、話し相手に飢えていたのかもしれない。
こう言っては悪いが、生まれ育った村の人達はあまり脳みそを使わないのだ。
頭が悪いのではなく、使おうとしないのである。何を考えても無意味だと、そう教わって生きてきたから。
だから、理論だって会話ができる相手に、前世ぶりに出会えて浮かれてしまったのだ。それが───後世において、『稀代の詐欺師』と呼ばれる男なら、なおのこと。
彼は自分から聞いた話を独自に解釈し、他の村々へと広めていった。
それはまるで、冬の森に火を放ったようであった。
薬物で支配されていた者達を除き、国中の民が立ち上がったのである。それ程までに、『貴族を倒せる』というのは刺激的だったのだ。
自分もピエールの革命に参加し、貴族の蔵書から独学で身に着けた魔法で戦い、そして人々の傷を癒した。
同時に、各地で『もしも革命が成功しても、無暗に役人や貴族を処刑してはならない』『彼らの持つ本や書類を燃やしてはならない』『そんなことをしては、国を運営できなくなる』『明るい未来の為に、このことを忘れないでほしい』。そう、語って回ったのである。
ピエールとの出会いで、言葉にして伝えればわかってくれると思っていた。彼らの頷きを、理解してくれたのだと思っていた。
しかし、自分は忘れていたのである。
この世界の、現実というやつを。
* * *
革命が始まり、3年後。カーラさん率いる『黒蛆』と、激闘の末に自分は勝利し、その直後から数日間寝込むことになった。
革命はなされたと、安心しながら。
しかし、起きた時には全てが手遅れだった。
法衣貴族や各地の統治者を殺すなと伝えていたはずの民衆が、彼らを無差別に殺しその死体に遊んでいる。
信じていたはずのピエールは、まるで王のように強権を振るい恐怖政治を敷こうとしていた。しかも、これは後から知ったことだが、彼は何度も眠っている自分を殺そうとしていたらしい。
しかもどうやら、ピエールの裏には地方のとある伯爵がいた。彼は、今が好機と王位の簒奪を目指している。
不思議なものだ。彼らは自分の故郷すら焼き、同じ国民同士ですら殺し合っている。
まるで会話が成立しない。誰も彼も、『革命』や『自由』という言葉を盾に暴徒と化している。
倒すべき敵だったはずのカーラさんや『黒蛆』達。投獄される前に少しだけ会話した、国王夫妻。彼らの方が、余程敬意を持てる相手だった。
せめて、あの2人だけでも逃がそう。さもなければ、この国は大陸中の王侯貴族を敵に回す。
そう考え、捕虜に不当な暴力を振るうバカどもを蹴散らし、様々な体液で汚れていた国王夫妻を監獄から救い出した。
しかし、魔法で出した水で己を清めた彼らは、亡命を拒絶したのである。
ならばピエール達と戦うのかと問えば、それも違うと言った。
国王夫妻は、何年も前から死ぬ気でいたのだ。
次に無理矢理連れ出そうとすれば、自害してやると笑いながら、彼らは檻の中へと戻っていった。
その表情を見て説得は不可能と判断し、今一度ピエールのもとへ国王夫妻の処刑を止めるよう言いに行く。
無い知恵を絞って、彼らを処刑すれば何が起きるかを語った。
だが、疑心暗鬼に飲まれ、熱狂した民衆の声しか聞こえない彼の耳には、何も届かない。
焦った自分は、民衆に処刑をやめるよう言いに行った。しかし、彼らは自分を指さしこう言う。
「革命を侮辱するのか!」
「我々が正義なんだ!」
「お前は革命精神を侮辱している!」
「処刑だ!処刑だ!処刑だ!」
罵声が飛んだ。石が飛んだ。矢が飛んだ。弾丸が飛んだ。
肉体はかすり傷程度しか負わないのに、足元がおぼつかなかった。
彼らの姿が、あの日殺した貴族とだぶって見える。
───自分は、どこで間違えたのだろうか。
そう、獄中の国王夫妻の前で嘆けば、彼らは揃って困ったように笑い。
「君は、まとも過ぎたんだね」
「悪いことは言わないから、いっそ海にでも出た方が良いわよぉ」
この大陸に、希望を抱く者の居場所などないのだと。そう言った。
なんたる皮肉か。自分が革命後にこの国で出会えた『人間』は、この2人だけだったのである。
彼らが処刑されて、1週間後。ピエールと伯爵、両方から指名手配された自分は、最後にギロチンを破壊しながらこれから起こるだろうことを叫んで、王国から逃げ出した。
向かった先は、海であった。
この世界で『いっそ海に出ろ』とは、遠回しに自害しろという意味である。だが、あえて自分は言葉通りの意味で海に出た。
襲ってきたピエールの私兵から奪った金で船と食料を買い、独学の魔法を頼りに出港する。
何とも、晴れやかな気分であった。これから待つのは、人外魔境だというのに。潮風を浴びながら、下手くそな歌まで歌いながら沖へと向かったのである。
そして、案の定1日と経たずに海の魔物達によって船を沈められた。
腕試し感覚でクラーケンを2体程倒したのだが、その後に出てきた巨大なサメによって、あっさりと船は轟沈したのである。
負けたのは、ちょっと悔しい。でも、それでも良かった。自分の心はとうに壊れていたのか、死への恐怖まで鈍化してしまったらしい。
だがまあ……やはり、僕はこの肉体を舐めていたらしい。
また、生き残ってしまった。
見知らぬ砂浜で目を覚まし、もしやあの世かと周囲を散策して、ただの無人島であると理解する。
我ながら、呆れて声も出ない。どこまで今生の自分は頑丈なのか。もう1回海へ出るのも億劫で、島で暮らすことにした。
どうにも、この無人島にはかつて人がいたが、何らかの理由で滅んでしまったらしい。
残された文明の名残を調べて暮らすのは、転生してからの時間で最も楽しいものだった。
幸い、果物は豊富だし鹿や猪などの野生動物も多い。偶に虎と遭遇するし、魔物化した個体もいるが、そこは無駄に頑丈な体でちょちょいのちょいである。
DIY感覚で壊れた建物を修理して暮らすこと、約1年後。
新しく、住人がやってきた。
マストの折れた船に乗り、1人の少女?がやってきたのである。名前は、グリンダというらしい。
少し会話すると、お互いに転生者だとすぐにわかった。
何でも、帝国で奴隷として売られるも、その日の内に檻を壊して脱走。他の奴隷仲間達と傭兵団を立ち上げたのだという。
ちょっと前に帝国では皇帝が死に、皇太子も戦争で討たれて大混乱。それを機に反乱をしたら、ホーロス王国で起きたピエールの革命もあって大成功……に、思えたのだが。
どうにも、彼女の方でもで内ゲバが起きたらしい。
その隙をつき、オールダー王国が大進撃……が、その国でも『革命』や『反乱』の考えが広がり、その火消で手一杯になったのだとか。
反乱軍としては、態勢を立て直すチャンスだった。しかし、彼女の仲間達は誰がリーダーになるかで揉めたあげく、グリンダさんを嫁にした者こそトップとか言い出したのである。
全てが嫌になった彼女……いや、前世は男らしいけど、今の感覚は女性に近いらしいので、彼女と呼ぶが。
兎に角、グリンダさんも自分同様、全てを放り投げてきたのだ。反乱軍の船をかっぱらい、半分自殺する気で海に出たのである。
そして出向して1日もしないうちに、クラーケンの襲撃で船が壊れ、後は流されるまま……という、何ともどこかで聞いたことがあるような話だ。
というか、もしかしてこの無人島、意外と大陸から近い?
『と、言うわけなんだけど。私もこの島に住んで良い?』
『良いも何も、別に僕の島でもないですからね。好きにすれば良いのでは?』
『ありがとう。あ、襲わないでね?殺すのは良いけど、性的には嫌だ。この体はファーストキスすらまだだからね。どうせなら、綺麗なまま死にたいのさ』
『襲いませんよ……常識で考えてください』
『……日本語もだけど、久々に誰かと会話した気がするよ』
『……奇遇ですね。こちらもです』
そんなこんなで、無人島だった小さな島は、2人だけの島となったのである。
それから、村の地下に眠るアレやコレやを探索する、珍道中が始まるのだが……。
今生で『しでかした』自分達は、まだそのことを知らない。
『あ、そう言えばクロノ君って童貞?』
『……だったら何だって言うんですか』
『いや。そんな顔をしているなーって』
『ぶっ飛ばしますよこの野郎!?』
『きゃー野蛮!でも今の私は野郎じゃないし、腕っぷしも強いんだなー。これが』
『は?僕の方が強いですけど?何回、この無駄に強い体に振り回されたと思っているんですか』
『……何回救われたじゃない辺り、苦労を感じるね』
『やかましい!』
ただ、島での暮らしが騒がしくなったのは、紛れもない事実である。
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革命や反乱という概念を広める切っ掛けとなった彼らが悪いのか、それともそうせざるを得なかった環境が悪いのか。
どちらにせよ、大陸は毎日大騒ぎなようです。
なお、このルートだとクロノとグリンダ以外の本編ネームドは全員死にます。




