閑話 人竜のいない戦場 中
閑話 人竜のいない戦場 中
サイド なし
付近に着弾した砲弾が、ゴングとなった。
「ぬううううん!」
豪快に振り下ろされる、ギルバート侯爵の鉄槌。それを横へ避けたシャルロットがすかさず彼の顔面へと石突による殴打を試みるも、彼は地面に穂先がぶつかる前にぐるりと翻した。
背を丸めることで石突を回避しながら、侯爵は横回転。遠心力の乗った鉄塊を彼女の脇腹に叩き込んだ。
「ごっ……がぁあ!」
衝撃波と、鎧がひしゃげる音。その中で、彼女は苦悶の声を雄叫びに変えた。
右足を地面に大きく食い込ませながら、侯爵の一撃に耐える。兜の下で目を血走らせ、柄から離した右手で彼の顔面を殴りつけた。
鐘を打ったような音と共に、侯爵が仰け反る。僅かに開いた彼我の距離で、彼女は鉄槌を横薙ぎに振るった。
片手を柄から離しているが、自身の脇腹に添わせることで軌道を安定させる。棒術のような軽やかさで、巨大な穂先を彼の胴に直撃させた。
金属が割れる高音を響かせ、と侯爵の重厚な鎧が大きくひしゃげる。ライフル弾すら数発は耐える装甲が、べこりと凹み亀裂さえ入っていた。
その下にある彼の体に、どれ程のダメージが入ったのか。並みの人間なら3度死んでもお釣りがくるであろう。
「ぬぅぅ……!」
地面に2本線を足裏で引きながら、しかし侯爵は倒れない。数メートル分後退しながらも、彼は両の足で地面を踏みしめ、右手と義手で鉄槌を構えた。
だが、それをシャルロットも予想している。既に鉄槌を振りかぶり、侯爵の左側へと駆けていた。
彼の義手は指がフックのように固定されている為、少しなら柄を引っ掻けられる。だが、握って動かすことはできない。
「どっせい!」
皇妃とは思えない掛け声と共に、シャルロットは祖父の左側から容赦なく鉄槌を振るった。
豪快な振り下ろしから、軽やかな逆袈裟。かと思えば、石突を槍のように素早く突き出してくる。
力だけではない。恵まれた才能とたゆまぬ訓練。そして優れた指導者によって生み出された、戦士の連撃である。
だが、彼女を戦士に育てたのは誰か。
「甘い!」
振り下ろしを足捌きだけで避け、逆袈裟を石突で受け流し、突きを籠手で打ち払う。
そうして全ての攻撃を防ぎ切ったギルバート侯爵が、右手で鉄槌を大きく引き絞った。
シャルロットと同じく、槍のように突き出される鉄槌。だが彼女と違い、石突ではなく人の胴程もある穂先部分である。その上、速い。
地面を踏み砕きながら放たれた突きを、シャルロットはどうにか左肘で受け流そうとした。鎧に包まれた腕を、どうにか軌道上に間に合わせる。
しかし、重量と加速が違った。逸らしきれず、もろに左腕へと衝撃を受けてしまった。
「ぐ、ぬぅ、ぉ……!」
たたらを踏む彼女に、侯爵は追撃を仕掛ける。
突き出した右腕を折り曲げ、穂先をぐるりと引き戻した。そのまま柄を義手で受け止め、横薙ぎの一撃を叩き込まんと踏み込む。
左腕が痺れて動かないシャルロットは、崩れるバランスを無理に戻すよりも、いっそ後ろに倒れ込んで横薙ぎを回避しようとした。
しかしそれよりも早く、ギルバート侯爵は穂先ではなく石突を繰り出す。
「ごっ」
後ろへ倒れかけていた彼女の腹部に突き刺さる、石突。メキリと音をたて、鎧が凹み衝撃がシャルロットの臓腑を揺さぶった。
体を『く』の字にして吹き飛び、わざとではなく本当に地面を転がるシャルロット。
濁った音を口から漏らしたかと思えば、兜の隙間から血が飛び散る。内臓をやられたらしいと、彼女はどこか他人事のように考えた。
明確な隙を晒すシャルロットへ、すぐさま追撃はやってこない。
彼女がノロノロと視線を動かせば、そこには石突を地面につけ、肩で息をする祖父の姿があった。
スタミナ切れ。年齢を考えれば、むしろ動け過ぎている彼だが、慣れない義手もあって大きく体力を消耗していた。
流れ弾が、彼の肩をかすめていく。それを気にした様子もなく、侯爵はシャルロットを見下ろした。
「ようやく、静かになったか。小娘……!」
兜でくぐもり、疲労で掠れた声。
およそ、砲声弾雨の戦場で聞き取れるものではない。だというのに、不思議とシャルロットの耳にしっかりと届いていた。
「儂はな……愛していたよ。お前を。実の孫のように。お前の父であり、我が義理の息子も。そして、本当の祖父である、弟のことも……」
その大きな背を丸め、呟くように語るギルバート侯爵。
彼の瞳に、戦士としての輝きも、将としての冷たさもない。
「お前の祖父が、我が弟が……儂の妻と子を殺したと、知るまでは」
それは、ただの老人の瞳であった。
家族に先立たれた、悲しみを背負った翁の目。
「理由を問うたら、当主の座が羨ましかったと言っていたよ。本当は、儂も殺すはずだったらしい。だがそれに失敗し、真相を突き止められ、今際の際に教えてくれた」
ゆっくりと、彼は杖代わりにしていた鉄槌を握り直す。
息を整えたこともあってか、その声は徐々に熱と張りを取り戻し始めた。
「ふざけた話だ。儂は、かつて言った。お前に影のお役目は厳しいのではないかと。当主の座を継ぐのは、お前でも良いのだと。そう弟に告げ、しかし奴は首を横に振ったというのに……!」
一歩、また一歩と、彼は力強く地面を踏みしめる。
弾丸がその歩みを妨げるように何発も飛来するも、侯爵の足は止まらない。
「後になって、『思ったより辛かった』だと?ふざけるな!そんな……そんな子供のような理屈で!儂の妻子は殺されたのか!信じていた身内に!暗殺者を仕向けられて!恐怖と痛みの中、死んでいったのか!」
血を吐く様な声で叫ぶ侯爵が、シャルロットの傍に立つ。
「全て、お前の祖父のせいだ。何も知らなかったなど、言い訳にならない」
動けない彼女を、憎悪に染まった瞳が見下ろす。
「地獄で、父親と一緒に本当の祖父を殴ると良い。お前のせいで、私達は死んだのだと……な」
ゆっくりと、侯爵は鉄槌を振り上げ───。
その動きが、止まった。
「っ……!」
兜の下で、歯をこすり合わせる音がした。そんな侯爵を見上げながら、シャルロットは体内の魔力をどうにか整える。
あまり魔法が得意ではないが、やらなければ死ぬと、必死に体内の止血を試みていた。
「お前が……お前達が、悪いのだ!儂は……いいや、儂も……!」
柄を握る彼の腕からも、ギシギシと音が鳴る。
「……先に、地獄へ行っていろ。我が屋敷の地下で眠る、妻と子以外は。全員、地獄の底で罰を受けるべきなのだ」
振り下ろされる鉄槌。頭蓋を砕かんと迫る一撃に、シャルロットは動けない。
もはやここまでと理解しながら、彼女は目を逸らさなかった。せめて視線だけで『敵』を射殺さんと、睨みつける。
だから、目撃した。
激しい火花が穂先で散ったかと思えば、軌道が逸れてシャルロットの兜をかすめて鉄槌が地面を砕く。
流れ弾が偶然当たったのか?否。遠方からのライフル弾では、ギルバート侯爵の攻撃を逸らすことなどできない。
銃声を響かせた主へと、侯爵は素早く体を向ける。
そこには、砕けた兜を捨て、銀髪をなびかせた親衛隊隊長。リーゼロッテ・フォン・シルベスタがいた。
彼女は走ってきた勢いのまま跳躍し、右手の剣でギルバート侯爵に斬りかかる。彼も即座に鉄槌を引き戻し、穂先で刃を受けた。
血と刃こぼれだらけの刀身から火花が散り、衝撃でへし折れる。だがシルベスタ卿は間髪容れずに身を捻り、空中で蹴りを放った。
鉄靴に包まれた足が、侯爵の胸を打つ。そこは、シャルロットによって亀裂の入った箇所であった。
「がっ……!?」
痛みで一瞬動きが止まったギルバート侯爵の顔面へと、追加で蹴りを放つシルベスタ卿。
吹き飛んでいった侯爵へ、彼女は無表情のまま銃を向ける。
発砲。間延びする黒色火薬の音が残る中、ぐるりと銃を回転させ次弾を装填。再度引き金を絞る。
都合4発の弾丸を、シルベスタ卿は全て侯爵に命中させた。殴られたように身を捻る彼が、追加で数歩、後ずさる。
弾切れになったショットガンを投げ捨て、シルベスタ卿は開いた腕をシャルロットの方へ差し出した。
「立てますか、皇妃殿下。無理でも気合で立ってください」
「ごふっ……!よゆ、う、ですわぁ……!」
のろのろと、シャルロットがシルベスタ卿の手を取り、鉄槌を杖代わりにして立ち上がった。
それを一瞥することもなく、銀髪の麗人は続ける。
「戦えるのなら、手を貸してください。無理なら逃げてください」
「勿論、戦いましてよ……!」
ぶんぶんと、頭を振った後。
シャルロットは、シルベスタ卿の隣に立った。
「ここで退いては、グランドフリート家の名が傷つきますもの。何より、ワタクシは『鉄血のギルバート』の孫でしてよ……!」
「孫……?」
ギルバート侯爵が、肩を震わせる。
「まだ言うか……!薄汚い卑怯者の血を引く者が、我が孫を名乗り続けるとは……なんたる不遜!」
「あったりまえですわよ、耄碌お爺様……!」
ボコボコになった兜を脱ぎ捨て、その下で頭に巻いていた布を解いたシャルロット。
彼女はその布で口元の血を拭った後、鉄槌の柄と右手を左手と歯を使って縛る。
「───ワタクシは、誰が何と言おうと貴女の孫娘ですわ。その首を獲って、証明してみせましょう」
「……狂っているのか、お前」
「あら。戦場では怒る猪のように狂う戦士こそ強いと、貴方に教えて頂きましたわよ」
「立場を考えろ、たわけ」
ギルバート侯爵が、シャルロットが、シルベスタ卿がそれぞれ武器を構える。
「もういい。お前と話すのは疲れた。ため込んだ恨み言は、首を獲った後に言ってやる」
「地下で眠る奥様とご子息と同じお墓へ埋葬してあげますわ。年末年始に、愚痴を聞きに行ってあげてもよくってよ」
「場違いな気がしますが……仕事ですので。死んでください。ギルバート侯爵」
最初に動き出したのは、シルベスタ卿だった。
折れた剣を両手で構え、地面を這うような低い姿勢で駆ける。ほんの僅かに遅れて走り出す、ギルバート侯爵とシャルロット。
低い姿勢で間合いを詰めたシルベスタ卿が、侯爵の右膝へと刀身を叩き込む。関節の隙間ではなく、関節の板金に衝撃を与えた。
関節の動きを阻害する為の斬撃。しかし、折れた剣で出せる威力では『足りない』。
「ぉおお!」
ギルバート侯爵が掬い上げるように振るった鉄槌を避け、シルベスタ卿が横に転がる。
直後に跳び込んできたシャルロットの振り下ろしを、彼は義手で横から殴りつけて逸らした。
続けて背後から脇目掛けて剣を突き立てようとするシルベスタ卿の顔面に、侯爵の右肘が炸裂する。額から盛大に血を出しながら仰け反った彼女の腹部へ、彼は容赦なく後ろ回し蹴りを放った。
吹き飛んでいくシルベスタ卿に一瞥することもなく、ギルバート侯爵はシャルロットが繰り出した石突を、首を傾けるだけで回避。義手でボディブローを放ち、彼女の足が浮いた瞬間右手一本で鉄槌を叩き込んだ。
だが、彼女らの猛攻は終わらない。吹き飛ばされたシルベスタ卿は猫のように着地したかと思えば、間を置かず駆け出している。その最中に腰の後ろから拳銃を引き抜き、発砲。
連続で放たれた弾丸が彼の右足に着弾し、6発目が関節の板金を大きく歪める。苦悶の声を上げながらも迫るシルベスタ卿を迎撃しようと鉄槌を振るギルバート侯爵だが、彼女は直前で跳躍。
彼の頭上を跳び越えながら、身を捻り上下逆さまとなって侯爵の兜を切りつける。
激しい金属音と共に、ギルバート侯爵の視界が僅かに揺れた。そこへ、シャルロットの鉄槌が叩き込まれる。
顔面へ直撃し、兜が砕け散った。ぶしゃり、と赤い血が飛び散る。
だが、侯爵の目が動きシャルロットを捉えた。義手がすぐさま突き出され、彼女の頬を抉る。
よろめいた所へ、掬い上げるような鉄槌の一撃。彼女の体が浮き上がり、口から血の混じった吐しゃ物がこぼれた。
放物線を描いて飛んでいく彼女と入れ替わりに、シルベスタ卿が斬りかかる。
弾切れとなった拳銃を顔へ投げつけるも、彼は首を傾けるだけで回避。しかし、一瞬だけ視界が塞がれた間に彼女は間合いを詰めていた。
突き出される折れた剣。断面は鋭く尖り、侯爵の皮膚を貫くのに十分な凶器である。
喉へと迫る切っ先に、彼は自ら口を開いた。刀身をガッチリと歯で挟み込み、固定する。
ならばと横へ刃を動かすより先に、シルベスタ卿の右側頭部へと侯爵の右拳が突き刺さった。
手放された鉄槌が地面に落ちるより速く、義手の拳が続けて彼女の腹を殴る。止めとばかりに振り下ろされる右肘を、シルベスタ卿は横回転で回避した。
この状況でなお無表情のまま、シルベスタ卿は跳び回し蹴りをギルバート侯爵の側頭部に叩き込む。
回避は間に合わない。右足の関節が動かず、彼はその場に釘付けとなっていた。
「おおおおおお!」
だからどうしたと、『鉄血のギルバート』は雄叫びを上げた。
動けぬのならと、左足で地面を踏み砕き、裂帛の気合を込めて義手を振るう。文字通りの鉄拳がシルベスタ卿の脇腹を抉り、彼女の口から赤い物がこぼれた。
だが、シルベスタ卿も止まらない。ぎょろりと相手を睨みつけ、左の掌底を侯爵の顔面に打ち付けた。
顎に衝撃へ受けた所へ、すかさず右フック。更に右耳を掴み、跳び膝蹴りを鼻に叩き込んだシルベスタ卿。
蹴りの勢いで侯爵の右耳がもげ、彼の上体が大きく仰け反った。追撃の為左腕を引き絞ったシルベスタ卿だが、その瞳を見開く。
侯爵の重心はブレていない。それに気づいて咄嗟にガードした所へ、彼は頭突きを放った。
受けたはずのシルベスタ卿の腕が軋みをあげ、籠手が割れる。衝撃で背中から地面に叩きつけられ、受け身も取れず彼女の視界が揺れた。
そこへ振り下ろされる、侯爵の右腕。咄嗟に横へ跳び退いた彼女だが、振り下ろされた腕の先は先ほどまでシルベスタ卿がいた位置ではない。
フェイント。ギルバート侯爵は己の鉄槌を掴み取り、振り向きざまに背後へと振るう。
「どぉりゃあああああ!」
「ぬぁあああああああ!」
2人分の雄叫びと鉄槌がぶつかり、片方が弾かれた。
シャルロットの得物が、遠くへ弾かれる。蓄積されたダメージが、勝敗を分けた。
彼女の右手の指がへし折れ、巻いていた布が千切れ飛ぶ。
「まだぁ!」
だが彼女は止まらない。姿勢を低くし、ギルバート侯爵の腰にタックルする。そのまま両腕でガッチリと押さえようとして。
「遅い!」
凄まじい轟音が、シャルロットの後頭部から響く。
「ア゛ッ……!?」
タックルと同時に振り下ろされた、ギルバート侯爵の左肘。頸椎に響く衝撃に、シャルロットの呼吸が一瞬止まった。
そして、鎧の首元から覗く襟を侯爵が右手で掴み上げる。女性としては長身かつ鎧を纏った体が、まるで綿がつまった人形のように持ち上げられた。
「哀れなものよ……産まれさえ……産まれさえ違えば……」
朦朧とする意識の中、襟を掴むギルバート侯爵の腕に手を伸ばすシャルロット。
引きはがそうとするも、その手にはまともに力が入らない。それを見たシルベスタ卿が駆け出そうとするも、足がもつれて転倒した。
彼女の視界もまた、揺れたままである。無表情のまま地面を手で押すも、立ち上がることができない。
「どうして……どうして……」
魔力を回し、意識を保つシャルロット。
彼女は、見た。
「どうして、もっと悪辣な子に育ってくれなかった……!?」
祖父の、泣き顔を。
歯を食いしばり、瞳から雫をこぼす『鉄血のギルバート』。その涙は、ただの老人のようであった。
だが、その右腕はゆっくりと振りかぶられていく。確実に相手の頭蓋を打ち砕かんと、拳は硬く握られていた。
そんな祖父の姿を見ていたシャルロットの視線が、ふと上を向く。
それに釣られるようにして、ギルバート侯爵も瞳を上に向けた。
落下してくる、アダム派の砲弾に。
ここは、決闘場ではない。弾丸が飛び交う戦場の真っ只中。戦っているのも、必死なのもこの2人だけではない。
ゆえに。ある意味でそれは、当然の光景であった。
普段なら、避けられたはずの速度。近距離での直射ならともかく、山なりに降ってくるただの鉛の塊だ。この2人なら、余裕をもって回避できる。
だが、シャルロットの体は動かない。本人の意思に反し、侯爵の腕を握っていた手からも力が抜けていた。
ギルバート侯爵も回避はできないが、彼女を砲弾に投げつければ生き残る。それは、可能であった。
───道連れすら、無理ですのね。
そう自嘲する彼女の視界が、大きく動いた。
迫りくる砲弾とは、反対側に。
「は?」
疑問の声を上げたのは、誰だっただろうか。
ポカンと、口を開けるシャルロット。彼女が見下ろす先で、ギルバート侯爵もそっくりの顔をしていた。
驚きで開いていた彼の口が、歪む。
それはまさに、先程シャルロットが浮かべた自嘲の笑みと瓜二つであった。
「おじい───」
放られた彼女の目の前で、砲弾が落下する。シャルロットは目撃した。『鉄血のギルバート』の胴体へと吸い込まれた鉛の塊が、彼の巨体を四散させる瞬間を。
間欠泉でも掘り当てたように地面が弾け、土の雨が降る。赤い物と鉄の破片が混ざったそれを浴びながら、シャルロットは落下した。
受け身もとれず、大の字で叩きつけられた皇妃。ぐちゃぐちゃに汚れた彼女が、込み上げてきた血と一緒に口へ入った土を噴き出す。
「……やっぱり。ワタクシは、貴方の孫でしてよ。お爺様」
その呟きに、答える者はいない。
回復したシルベスタ卿がシャルロットへと駆け寄り、抱き起して。
彼女らのいる場所へ、幾つもの砲弾が降り注いだ。
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