第九十三話 聖人とは
第九十三話 聖人とは
魔女裁判などという、血生臭い話はどこへやら。街は今、大人も子供も笑って騒ぎ、食べ、飲んでいる。
飛び散った血肉は綺麗に掃除され、舞台の上にはストラトス家が呼んだ楽団や大道芸人。更には街の者達の歌自慢や一発芸まで披露されていた。
最初から、ただの愉快なお祭りだったように。人々は楽しんでいる。
そんな中、自分は礼服に着替えVIP席に向かった。
先程までは魔女裁判の被告人であった為、教皇聖下に挨拶することはできなかった。だが、今は違う。となれば、頭の1つも下げに行かねば後が面倒だ。
何より、彼は大事な『共犯』である。機嫌を損ね過ぎて、自爆まがいの『奇跡の暴露』を後々されては困る。
そう思い、営業スマイルを浮かべながらVIP席に向かったのだが。
「失礼します。ごあいさ───」
「クロノ殿!」
クリス様が、突っ込んできた。
半泣きで抱き着いてきた彼女を、咄嗟に受け止める。ふわりと花の香りが鼻腔をくすぐり、こちらの胸板に置かれた小さな手の熱に心臓が熱くなった気がした。
どうすれば良いのだと手をわちゃわちゃさせる自分を、クリス様が見上げてくる。
「良かった、無事で……!信じていたけど、それでも、心配で……」
「……ご心配をおかけしました。自分はこの通り無傷です。腕の傷も、もう治りましたから」
「それ!それだよ!別に銃で腕を撃つ必要はなかったでしょ!?あんな、血がたくさん……!」
涙目のまま、クリス様が睨みつけてくる。
ただ迫力はあまりなく、なんかホッコリした。
「いえ、その方がわかり易いかな、と」
「わかり易いって、そんな理由で自分の腕を撃たせちゃだめでしょ!もっと自分を大事にして!」
「申し訳ありません。今後は気を付けます」
「もう、絶対だからね!?というか、なんでそんな微笑ましそうな顔なの!」
「それはそうだろう、クリス皇帝」
びくりと、自分とクリス様の肩が跳ねる。
……迫力があり過ぎる方が、きたか。
アナスタシア女王が、『やれやれ』とでも言いたげな顔で近づいてくる。
「主従の温かい絆をそうも見せつけられては、誰だって口元が緩むというものだ。仲が良いのは素晴らしいことだが、我々の存在を忘れてもらっては困る」
口元が緩む、か。
確かにアナスタシア女王の口元は笑っているが、やはりその眼光は鋭い。空から獲物を値踏みする猛禽類のような瞳に、自然と背筋が伸びた。
クリス様はようやく他の王達や教皇聖下の目もあることを思い出したようで、慌てて自分から離れる。
……それと。
視界の端で、シルベスタ卿が掲げていた、『もっと情熱的に!激しく!愛を叫んで!』とか書かれた看板を素早く背中に隠すのが見えた。
何をやっているのだ、あの親衛隊隊長……。近くのモルステッドの兵士達が、信じられないモノを見たという顔をしているぞ。
「さて。せっかく本日の主役が来てくれたんだ。まず、彼の話を聞くとしよう」
アナスタシア女王の言葉に、どうにか気を引き締め直す。
愛らしい皇帝陛下とトンチキな親衛隊隊長に毒気を抜かれそうになったものの、ここには油断ならない相手ばかり。
あまり隙を見せていては、食われかねない。
「各国の代表である皆様と、教皇聖下に是非ご挨拶をしたいと思い、参上しました。しかしアナスタシア女王陛下。私はこの場において、主役ではありません。主役の1人に過ぎないのです」
営業スマイルを浮かべ直し、ゆっくりとこの場に集った者達を見回した。
「あの奇跡は、この街に集った全ての人々が起こしたこと。全員が主役と呼ばれるべき存在です。ただ、もしもその中でも特筆すべきお方がいるとしたら……」
ゆっくりと、部屋の中央にいる人物の前へと移動する。
そして、片膝をつき白髭の老人を見上げた。
「御身こそ、主役と呼ばれるべきかと。教皇聖下」
「…………」
うっすらと、隠し切れない冷や汗を浮かべる聖都の、勇者教のトップ。
彼に、あらかじめ用意していた言葉を続ける。
「こうしてお会いできたことを、心より嬉しく思います。聖下。私のような戦場しか知らぬ無骨者でさえ、心が洗われるようです」
「……そう畏まる必要はない。我らは皆、同じ存在。父である創造神から生まれた、兄弟だ」
教皇聖下が、軽く手を振るう。
「ストラトス男爵。貴殿の言う通り、『この場にいる全員が主役』。あの奇跡は、儂1人の祈りでは起こせなかった。立ち上がり、同じ目線で話そうではないか」
流石に、『自分のおかげで起きた奇跡』とまでは言わないか。
今回の一件は、場合によっては教皇聖下の権威を強める力をもつ。だが、同時にタネが露見した場合と、その後に『絹を使わず同じことをやれ』と言われた時の保険として、全員を強調してきた。
あくまで、各国の王達も巻き添えにしたいらしい。
そのことは、全員わかっているだろう。誰も否定する者はおらず、自分は立ち上がった後一礼した。
「光栄です、教皇聖下」
「よい。しかし、まさかフィリップ司祭が悪魔に憑りつかれていたとは……邪悪なる者達は、どこに潜んでいるかわからんな」
チラリと、教皇聖下が聖都から連れてきた護衛達に視線を向ける。
その中で1人、一瞬だけ肩を小さく跳ねさせた者がいた。
「私もまだまだ未熟。魔女裁判の再開を最も推していたフィリップ司祭が悪魔に操られていた今、やはり魔女裁判は軽々に行ってはならないだろう」
司祭とは言え、彼が魔女裁判再開派の代表だったように語る教皇聖下。
若手が中心に騒いでいたらしいが、はたして本当にフィリップ司祭がその派閥の代表だったのだろうか?
もっと高位の者が叫ばないかぎり、ここまでの大事にはならない気がする。
それこそ、大司祭級。ともすれば、教皇の座も見えている枢機卿達の誰かが関わっている可能性も……。
……まあ、聖都のごたごたに付き合っていられる程、こちらも暇ではない。
「なんにせよ、敬虔な神の子を死なせずに済んだ。そのことを、今は喜ぼう」
教皇聖下の言葉に、ニッコリと笑いながら軽く会釈する。
「いやはや、それにしても目出度い!」
突然、モルステッド国王が声を上げた。
彼は張り付けたような笑みを浮かべ、誰かに言い聞かせるような声量で続ける。
「悪魔と契約した魔女は死に、我らは奇跡に立ち会えた!それを祝わずして、何を祝うのか!」
どうやら、3カ国揃って魔女裁判を後押ししたことをうやむやにしたいらしい。
別に、ここで誰が言い出したとか、犯人捜しをする気はないが。望み過ぎるのは良くない。
成果は十分。ここは彼の発言に乗っておこう。
「そうですね、モルステッド国王陛下。私も是非この奇跡を共に祝いたいと思い、秘蔵のワインを持参した次第です」
視線を入り口側に向ければ、使用人がボトルを運んでくる。
「ほう。気が利くではないか、クロノ男爵。流石は奇跡を体験した男だ!」
「いえいえ」
「それに趣味も良い!やはり『真実の愛』は華奢な男子の方が主側に回るのが正義だ!がっはっは!」
何言ってんだこのおっさん。
思わず頬を引きつらせる自分と、顔を真っ赤にして視線を伏せるクリス様。彼女の男装がばれるわけにはいかないので、その辺りは否定しづらい。
「何を言うのか、モルステッド国王」
ぴしゃりと、教皇聖下が彼を注意する。
良かった。腐っても聖職者だけあって、きちんと───。
「『真実の愛』は自由だ。1つの形を正義と定めてしまうのは、あまりにも浅慮である」
お前もか爺。
そうだった。こいつ勇者教の教皇だった。
「しかし、教皇聖下。お言葉ながら、『真実の愛』は一方的であってはならない。我らのように体の大きな者が組み敷く側に回れば、それは強要になる」
話を広げるなおっさん。
「確かに『真実の愛』において、強要された関係は最も恥ずべきものだ。しかし、互いに信用関係があるのならどちらが上か。どちらが前か後ろかなど関係はないはず」
争うな爺。
え、もしかして皆さんもう酔ってらっしゃる?
この醜い論争に、助けを求めて他の王達に視線を向ける。
クリス様はダメだ。既に耳まで真っ赤になって、思考が停止している。アナスタシア女王も、まるで犬の粗相でも見るような呆れまじりの余裕の顔をしているが、一応女性。セクハラになるかもしれない。
となれば、ここは最年長であるスネイル公国の宰相閣下に……。
「見てくれ。これは孫が私の誕生日に書いてくれた詩でな。将来は作詞家として大成すると思うのだ」
「は、誠にその通りかと」
あの爺、孫バカの振りして適当な騎士に話しかけて避難しやがった……!
流石はスネイル公王の右腕。隙が無い。そして性格が悪い。まさに外道。
「ええい、埒が明かん!クロステルマン皇帝!クロノ男爵!貴殿らならわかるだろう!小柄な者が上になる形こそ正義だと!」
「儂は何も、そういう形の『真実の愛』を否定しているわけではない。ただ、視野を狭めてはならないと考えている。わかってくれるだろう、クロステルマン皇帝。ストラトス男爵」
やめろ。大真面目に『これは宗教談義です』って顔をしてこっちに飛び火させるな。
……くそ、勇者教では宗教談義だこれは!
悲しきかな。そもそも旧版の聖書でも、新約聖書でも、こういった話題はきちんと論議されているのだ。
歴史上の偉人達や哲学者達が大真面目に神話の英雄や聖人の『右か左か』を議論し、聖都では『学問』として語られてさえいる。
別にそういう趣味を否定する気はないが、各国の代表が集まっている場ではしないでほしい。本当に。
「……兄上も、そう言えば美少年の愛人を囲っていたな……」
やめてくださいアナスタシア女王陛下。ノリス国王のことを、これでも尊敬しているのです。そういう話は聞きたくない!
「さあ、どちらだクロノ男爵!もしや、実は閨だと主従逆転などということはしていないだろうな!いや、それもまた有りだが!」
「ストラトス男爵。若い内から可能性を自ら減らしてはならない。広い視野を持ちなさい。愛の形は、人の数だけあるのだ」
どうする!?どう答えれば良い!?
ここで『真実の愛』に興味ないと答えれば、先程のクリス様の様子はなんだと問われかねない!ただでさえ、自分達はそういう噂に溢れている!
彼女の性別が露見すれば、帝国は終わりだ。アダム様……ウィリアムズ伯爵家を神輿にして、クリス様派閥以外の貴族達が皇位継承権について騒ぎかねない。このタイミングでの内乱は、敵国にとってまたとないチャンスである。
では、しかし……!
「あのっ!」
クリス様が、大声を上げてセクハラおやじとセクハラ爺の意識を自身に向かせる。
「今日は、愛の形を論じる日ではなく、奇跡が起きたことを祝う日です!それなのに、そういったことで言い争うのは良くないと思います!」
未だリンゴのように真っ赤な状態だが、そう言い切ったクリス様。
純粋な若者の叫びに、駄目なおっさんと爺も、2人も揃ってバツの悪そうな顔をする。
「むぅ……それも一理あるか」
「確かに、儂としたことが少々熱くなった。今は、奇跡を間近で目撃することができたことに感謝するとしよう」
ようやく性癖トークから解放されると、そっと胸をなでおろす。
ありがとうございます、クリス様。フォーエバー、クリス様。
あやうく暴走して、『性癖は多神教!』などと。世迷言を言う所だった。
……本当に世迷言だよ。こっちまでアホが伝染してんじゃねぇか。
感染症って、こわい。
「時に、ストラトス男爵。今回の件だが」
受け取ったグラスにワインを注がれながら、教皇聖下がこちらに視線を向ける。
「聖人認定を受ける気はあるか?」
瞬間、部屋の空気が一変する。
「あの奇跡はここにいる者全ての願いが、我らの主に届いた結果だ。しかし、その中心にいたのは間違いなく貴殿であろう。どうだ」
こっちの話題は、あらかじめ予想していた。
故に、用意していた言葉を笑顔と共に返す。
「光栄の極みです、教皇聖下。御身程の方にそこまで言って頂けるとは、勇者教の信徒としてこれ以上の喜びはありません。しかし、謹んで辞退させて頂こうと思います」
「何故だ、クロノ男爵。貴殿はまさに奇跡の体現者。主が御身を守ってくださったのは、地上を光で照らせということかもしれんぞ」
そこまで我関せずを貫いていた宰相が、素知らぬ顔で言ってくる。
「左様。俺もそう言おうと思っていた。聖人認定を受け、より地上に教えを広めることを考えた方が良いのではないか?」
モルステッド国王も、そこに便乗する。
アナスタシア女王は無言だが、そもそも彼女にとってこの流れも予定の1つだったはずだ。
自分がこの魔女裁判を突破したとして。そのやり方次第では聖人認定を行う。そして、帝国から引きはがす。
聖人となるのを受け入れたのならば、すぐさま聖都へと赴かなければならない。過去の前例から、そのような決まりになっている。
また、聖人が俗世の戦争に直接関わるのは異教徒との聖戦のみ。連合と帝国の戦いに介入する権利を、失うということだ。
流石に自分が聖都へ行っている間にストラトス領を襲うようなことはしないだろうが、それでも帝国は負ける。
自惚れかもしれないが、この身が欠けた状態で連合に勝利する可能性は限りなく低い。なんせ、父上は帝都で裁判中。ギルバート侯爵は流石に自領での仕事に集中しないといけない。
だからこそ、自分の返答は決まっている。
「私は、そうは思いません。皆様がそうおっしゃって下さるのは、とても嬉しいです。しかし、やはりあの奇跡はこの場にいる全ての人達が起こしたこと。もしも聖人認定をなさるのなら、それこそ全員で、となるでしょう」
アナスタシア女王に、スネイル公国の宰相。少なくともこの2人は、この言葉に頷けない。
ノリス国王亡き今、オールダー王国を纏めているのは彼女である。そして、公国との同盟も彼女が公王の後継者になることが条件だ。
そして、宰相も長期間国を離れることはできないだろう。公王の息子達がいつ暴発するかわからない今、重しとなれる彼が聖都に行くことは不可能。
自分が戦線から離れるのなら、貴方達にも道連れになってもらう。
「良いではないか!名誉なことだ!」
そんな中、モルステッド国王は乗り気であった。
「流石にこの街の全員とはいかんが、この場にいる主要な者達が聖人認定されるのは有りだろう。皆で聖都に赴き、教えについて語り合おうではないか!」
……なんだ?
彼が道連れ案に乗る可能性はあったが、ここまで強く勧めてくるのは意外であった。
モルステッド国王は、鼻息を荒くして熱弁する。
「今回の件で皆わかっただろう!地上にはまだ、悪魔どもと契約した魔女が残っているのだ!それを正す為に、新たなる聖人が世を導く必要がある!俺はクロノ男爵の言に、大いに賛成だ!」
彼は、自国がどうなっても良いのか?
モルステッド国王の子供は、たしかまだ10代前半だったはず。とても王国を纏める程の力はない。しかも、各貴族達が独断行動を繰り返している最中だ。
その状態でモルステッド国王が聖人認定の為に国を離れるなど、国を亡ぼすも同義である。いったい何を考えている?
まさか、そんなこともわからない程、脳みそお花畑ではあるまい。彼は追い詰められた人ではあるが、決して考えなしではないのだ。
では、わかった上で?国を見捨てようと……いいや、自国から逃げようとしている?君主である彼が?
なぜ?
「だがそうだな。家族がいる者は、聖都かその近辺に引っ越させる必要もあるだろう。俺の子供もまだ小さいし、アナスタシア女王も甥達だけ残すのは不安ではないか?だから───」
「待っていただきたい」
クリス様が、先程とは違い凛とした声で話を遮る。
「ボクはクロノ殿が聖人認定される程立派な人だとは思っているが、今回の件でそれが認められるのは違うと思っている。しかし、だからと言って複数人が1日で聖人になるなど、許されることではない」
彼女は、真っ直ぐにモルステッド国王を見つめる。
「勇者教における聖人とは、地上の導き手にして、神の御意思を代弁する者。その認定は慎重に議論されるべきものであり、軽々に決めて良いことではない」
「し、しかしな、クロステルマン皇帝。今回の偉業は、まさに神の奇跡。これを聖人認定せずして、誰を聖人認定するのか」
「だとしても。たとえ教皇聖下がお認めになったとしても、枢機卿達のご意見を聞くべきです。聖人認定は、その後です」
「ならば、それは聖都に行ってからでも良いだろう。まずは皆で聖都に行ってからだな」
「何より」
キッパリと、聞く耳もたんというように、クリス様が彼の言葉を断ち切った。
「現在聖人と定められている方々は7名。そこに我らが加われば、『13人』となります。勇者アーサーは、13人の妻を弟子の1人に連れ去られたことで亡くなった。よって、勇者教において13という数字は呪われたものとなっています」
自分、クリス様、教皇聖下、アナスタシア女王、宰相、モルステッド国王。
確かに6人も同時に認定されたら、誰かが呪われた数字につかねばならないわけか。
「聖人は、多くとも12名であるべきです。13名となってはならないと、ボクは考えます」
「い、いや。ならば、認定する側である教皇聖下には辞退して頂いてだな……」
「何をおっしゃるのですか!聖人認定された方には、初代教皇聖下もいらっしゃるのですよ!?それを否定なさるおつもりですか!」
「う、うむ。いや、それは……」
凄まじい剣幕のクリス様に、モルステッド国王がたじろぐ。
彼女がここまで怒るとは。だが、反対してくれるのは予定通り。
クリス様は、うちの父上とも宗教談義が……『真実の愛』以外の宗教談義ができる勇者教の敬虔な信徒である。
それが、こんな『ペテン』を奇跡とし、聖人認定を通すなど有り得ない。
元々万が一こういう話になったら、反対してくださるよう頼んでいたし、彼女も快く引き受けてくれた。
「まあまあ。クリス皇帝。その辺りで良いだろう」
アナスタシア女王が、不敵な笑みで軽く両手を広げた。
「聖人認定を行うか否か。確かにこの場で判断して良いことではない。それぞれが話を持ち帰り、じっくりと考えるべきだ」
「たしかに。その通りであるな」
彼女の言葉に、宰相が同意する。
「年甲斐もなく、奇跡に浮かれていたらしい。ここは、神の血を頂くことで心を清めるとしよう」
宰相が、赤いワインの入ったグラスを掲げる。
「その通り。複数人を同時に聖人認定するなど、前代未聞。儂の『提案』が皆に混乱を招いたことを、悔やむばかりだ」
それに対し、教皇聖下もグラスを掲げた。
これにて、全員纏めて聖人認定はお流れとなる。
だがその決定に、モルステッド国王だけが最後まで不満そうであった。どうにかできないかと、彼は酒をろくに飲むこともせず周囲に問いかけていた程である。
しかしその努力が実ることはなく、本日は解散となった。
何故モルステッド国王が、あそこまで聖都に移り住むことに固執していたのか。
その理由を知ったのは、随分と後になってからだった。
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