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第1話 チート級の能力といきなりの人助け


 広がる草原は明らかに「異世界」であることがわかった。

 というのは、俺が転移した目と鼻の先で既に揉め事が起こっていたからだ。人間に襲いかかるクマ……の頭に大きめのツノがついたモンスター、逃げ遅れたのかおじいさんが取り残されていた。


「おっ、あの神様気が効くな」


 俺は腰に大きめの片手剣、ナイフ、アイテムバッグを装備しており、服もまるでRPGゲームの冒険者風な装備だ。シンプルなシャツとズボンの上に上等な革で作られたベストと膝当て、フード付きのマント。意外としっくりきている。

 何よりも、なんだが体が軽いくせに腕や足の筋肉が増えているような気がする。剣を抜いてみると頭の中にあのクマの化け物を倒す方法がふと思い浮かんだ。


1、魔法で簡単に丸焦げにする方法

2、剣でぶった斬る方法

 などなど、詳細に思い浮かぶ。

 俺は、剣を片手に一気に坂を下って、今にもおじいさんを食おうとしているクマの化け物に切りかかかった。


恐ろしいくらいのジャンプ力、腕力、剣のセンス。


 俺が着地すると同時にクマの化物は真っ二つになって倒れた。わなわなと震えていたおじいさんに笑顔で問いかける。


「大丈夫っすか?」


 俺の華々しい異世界ライフのはじまりは実に格好いいもので、強い力をもらって自由気ままに生きる。なんて素晴らしいんだ。

 

「あぁ、ありがとう。えっと、旅の人かな」

「はい。マレンといいます。えっと近くに村か街はあったりしますか?」


 俺はおじいさんに手を貸して彼が立ち上がると、剣を鞘にしまった。


「ここから少し言ったところに大きな街がありますよ。申し遅れました、私はそこの街のギルド協会の名誉会長……トニーだ」


 あぁ、神に感謝。これも初回オプションかな。いきなり有力者に恩を売る展開。


「よければ、街まで護衛します。実はこの辺には今日はじめてきまして……ちなみに旅人が泊まれる宿や稼げる場所はあったりします?」

「あぁ、もちろん。我が街がこの辺では最大の所属ファミリー数を誇る大きな街さ。モンスターの討伐クエストから金持ちおばあさんの肩たたきまで」

「ファミリー……?」

「おや、マレンさんはすごく遠くから来たのかな。ファミリーというのはまぁ、いわゆる組織だよ。同じファミリーネームを名乗る仲間同士で時には一緒に住み、助け合う。血がつながっていなくても男でも女でも絆さえあればファミリーになれる。もしかしたら、お兄さんもどこか良いファミリーに所属できるかもしれないね」


 俺の中でファミリーというと、ヨーロッパの方のマフィアとかギャングとかそういう人たちのイメージがあるが、似たようなものだろうか? いや、ギルド協会の名誉会長が自信満々に話すのだから俺が想像するマフィアやギャングのような怖い感じのものではないのかもしれない。



 たどり着いたデマルケットという街は、俺が想像するよりも遥かに大きな街だった。流石に、東京のような大きなビルは並んでいないが、石造りの大きな城のような建物や立派な協会、立ち並ぶ家や店も大きいものから小さいものまでさまざまで、一日では歩きれないほどの広さだ。


「広い……」

「ようこそ、デマルケットへ。街の中央にある大きな建物がギルド協会でね。ここでは各ファミリーに所属している冒険者や傭兵、旅の人なんかがクエストを受けるクエスト掲示板があってね。君は今後も世話になるだろうからね」

「クエスト……」

「この街じゃ、結構いい値段のものも多くてね。お兄さんがさっき倒したホーンベアーなんかはそうだな。300ゴールドは硬いね。その上、モンスターからドロップした素材は素材やで売却できるしね」


 クエスト、素材、売却。

 俺のゲーマー心がくすぐられる。もちろん、まだ使っていない魔法も試してみたいし、剣術以外に弓なんかも触ってみたい。


「そうだ、ちょうど君と同じ年頃の孫娘がいてね、よければ……」

「ああ、いや。俺は旅の者ですから。いつこの街を出て旅に出るかわかりませんし、あはは」


 いきなり、お偉いさんの孫娘と、なんて俺には御免だ。前世では、親の世間体とかいうくだらないもので無理やり見合いさせられて、互いに親の取引先とかで別れることもできず酷い目にあったもんだ。酷い目というか、俺死んだしあいつは今頃お縄だ。


「そうかい? うちの孫娘は美人でミスコンテストにも入賞するような子で」

「はい。きっと、いいお嬢さんなんでしょうね。ですが、俺のような自分勝手な男よりも、トニーさんのように堅実で安全な仕事に就いている優しい男がお似合いだと思いますよ」



 トニー名誉会長をギルド協会まで送り届けたついでに、街と周辺の地図を譲ってもらい、宿が並ぶ通りへとやってきた。

 バッグの中には、パスポートと書かれた身分証と金貨が数十枚。


「一泊、5ゴールドだよ」

「じゃあ、とりあえず一週間分、夕食付きで」

「あいよ。三階まで上がって端の部屋」


 無愛想な、おばちゃんから鍵を預かって階段を上がった。洋風な作りの立派な宿だったが、中も綺麗に整頓されている。ひとつ文句があるとすれば「土足」な文化になれないくらいだろうか。


 ミドルグレードの部屋はそこそこ広いベッドと、いい感じのソファーセット、小さなキッチンと猫足バスタブ完備のバスルーム、トイレ。

 水魔法が完備されていて水洗なのはミドルグレードかららしい。さすがのぼっとんはごめんだったので少し奮発してしまった。


「けど、クエストを受けていくらでも稼げそうだし。しばらくはホテル暮らしでいっか。前世であんなキツかったんだし、フリー最高!」


 ボフッとベッドに身を預けて、俺は夕食までゆっくり過ごすことにした。


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