第18話 占い師・ワルツ
凄腕の占い師といえば、路地裏にひっそりと不思議な魔女の棲家のような場所にいるのではないかなんて思ってみたが全く違った。
俺がやってきたのは、ギルド協会だった。
「どうもどうも、お待たせしました。えっと、マレンさんですね」
ギルド協会、占い師部の個室の中占い師らしい紫色のローブを身に纏った女性が入ってきた。
「どうも、ゾゾスファミリーのマレンと言います。この度はレッドファミリーの紹介で」
「あぁ! 私はワルツと言います。ファミリーには所属してなくて……。まぁギルドの犬ですね! アハハ」
占い師とは思えない明るさに押されつつ、彼女の魔力が強いことを俺の肌が感じる。俺よりも少し年上だろうか、若いミレイナやムーンにはない色気がはだけたローブの胸元から見え隠れしていた。彼女はソファーの向かい側……ではなく俺の隣に座る。
距離感が少しバグっている人なのかもしれない。
「どうも、あのレッドファミリーの呪いの件についてなんですけど……」
「あぁ、あれね。結構前にグラン自体は見つかってたんだけど。あの砦を突破できる人材がいなかったのよ。だって術士グランって超引きこもりでさ。なんてたって門番のケルベロス。あれを倒せるパーティーなんてほとんどいないしね。その上、砦の中はトラップだらけ。でマレンさんはどうすんの?」
「まぁ、イけると思います」
「超かっこいい! いいね、その強気な感じ。いいわぁ。素敵」
ワルツは俺の手をぎゅっと勝手に握ると胸元に引いてきゃんきゃんと喜んだ。あまりにも陽キャなノリについていけず苦笑いをするしかない。
「ち、ちなみに。グランを倒せば呪いは解除されるんだな?」
「うーん。大方の呪いはそうよ。でも実際はグランの根白に行って呪いの依代を見てみないとなんとも言えないのよね。例えば、術者が死んだ時にトラップを仕掛けているっていう場合もあるのよ。だから今回のクエストでは私も同行するためにレッドさんたちからには私を経由するようにお願いしたの」
「なるほど……依代って呪いをかけられた人の一部とかですか?」
「ご名答。まぁ体でなくても大切にしていたものとかでもいいのよ。大事な手櫛とかナイフとかね。グランほどの術者なら万が一呪いが解除された時のためにトラップを用意しているはずだから。貴方にして欲しいことはね」
彼女はぐっと握った俺の手を胸に抱えるように押しつける。
「して欲しいこと?」
「うん。私をグランの部屋まで連れてって。そうしたらきっとどうにかできるし。あ、その前に一緒にホテルでも行く? 私貴方のこと気に入っちゃった。強くて稼いでてファミリーのボスでしょ? その上、その控えめなところもカワイイし。お姉さんがいっぱいいいことしてあげる」
ぴったりと体がくっつけられ、太ももからじんわりと彼女の体温が伝わってくる。胸に押しつけれた俺の手は柔らかいものに包まれ、彼女のゴールドの瞳に吸い込まれそうになる。ピンク色のしたがちろりと見え、顔が近づく。
「あ、あの! 女の子が苦しんでる間に良くないと思うんで。さっそく行きませんか。その砦に」
「あら、残念。貴方くらい強かったらケルベロスなんてすぐ倒せるしいいじゃない? あっ、それとももしかして……何回でもできちゃうから時間かかるタイプ? お姉さん、それも大歓迎よ。私もだから……♡」
やっと手が解放されたかと思ったら、彼女の細い指が俺の足をすっと膝から付け根まで撫でた。まるで、獲物をみるヒョウみたいに彼女の目が光る。
色狂いなんて言われるタイプの人なんだろうか? それとも、本当に俺を魅力的だと思って……るとか?
「とりあえず、すぐにでも出発した方がいいと思うんだが?」
「まぁそうね。あの子まだ若いし、寝てばっかりじゃかわいそう。私は貴方と寝たいんだけど」
「あのワルツさん。ここギルド協会ですよ? 一応個室ですけど」
「何よ、私は誰にでも色香を使うわけじゃないのよ? 遠慮しちゃって。クエストが終わったらにしましょ。その方が長く楽しめるし。あっ、でも音が気になるなら今ここでシてあげようか?」
彼女はぺろりと何かを舐める真似をして見せたが、俺は首をブンブンと振る。仮に、仮にそれをしたとして彼女が止められるはずがなさそうに思えたからだ。
全く話を聞かないワルツはすっと立ち上がると準備をするから待っててね。と言い残して部屋を出て行った。
ドッと疲れた俺は大きなため息を吐きつつ、久々の女性の柔らかさになんだか嬉しい気持ちにもなってしまったのだった。




