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第13話 ファミリー募集の条件


 家に帰った時に、誰かが食事を用意してくれているのは当たり前だろうか。幼少期から独り立ちするまで当たり前の家庭が多いと俺は思う。

 けれど、それはかなり幸せなことだと大人になってからわかった。自分のことを自分でやるというのはやっぱり結構辛くて、一人暮らしの時は夕食を抜いて寝てしまうことも多かった。


「おかえりなさいませ、マレン様、ムーンさん。お食事の準備ができております」


 ミレイナは、俺のバッグをさっと手に取るとムーンにお辞儀をした。


「ありがとう、ミレイナさん。みんなで食べようか」



 食堂に並んでいるのは、ステーキとスープ、それから彩り豊かなグリーンサラダ。こんがりと焼いたクルトンは大きめで粉チーズとよく絡んでサラダを華やかにしている。

 最近、俺がほとんど平日はクエスト報酬をもらってくるからか食事が豪華になってきている。良い傾向だ、せっかくの異世界でのチート能力。楽しまなきゃ損だろう。

 

 ナイフがすっと入る極上の肉はサシが入っていて、口に入れればとろけるようにほぐれていく。絶妙なバターと塩の味に肉の甘みが合わさって何枚でもいけそう。

 さらっとした肉の油をコンソメベースのスープで流し込み、クルトンと粉チーズがたっぷりのグリーンサラダで口の中をリセットする。

 次はふわふわのバゲッドパンと一緒にステーキを食べ、それから赤ワインをぐっと流し込む。


「美味しい」

「よかったです。ムーンさんが作ってくれるお野菜が取れるようになったらもっと食卓が華やかにできますね。にんじんのグラッセとか早く作りたいですね」


 ミレイナは小さく切ったステーキを頬張り、それから隣にいたロンナの分も追加で切っている。野菜を急かされて嬉しそうなのはムーンだ。彼女は、料理を食べながらもあれやこれや頭の中で畑の配置を考えているらしく、ちょっと上の空だった。


「あのさ、実はファミリーメンバーを新しく募集しようと思っているんだ。屋敷の護衛、俺のクエストの幅を広めるためのパーティーメンバーにミレイナさんやムーンさんの負担を減らす料理人や使用人、商人や庭師。みんなにも条件を聞いておきたくて」

「そうですね、ではロンナ様の家庭教師をお願いしたいですね。性別は女性、少なからずデマルケット大学を卒業している方で」

「えぇっ、お勉強やだぁ」

「ロンナ様、来年からは学園に行くのですよ。勉強、しておかないと。あと、確かに庭師の方は嬉しいですね。裏庭の畑はムーンさんのものですから玄関前のお庭の管理をなどをお願いしたいですね。それから、ファミリー専属のお医者様や薬師の方もいいですね。さすがに、私だけでは補佐できない部分ですから」

 俺は、てっきり「私がいるので平気です」なんていうかと思ったが、ミレイナはたくさんの要望を口にしてくれた。俺に遠慮をしなくなった。と考えてもよいだろうか。嬉しいような、先が大変なような。


「ムーンさんは何かあります? 畑が大変なようなら弟子的な立ち位置の人でもいいですし……」


 俺の言葉に、彼女はフォークを置くと真剣な顔をしていった。


「私、しばらくは女性のメンバーだけがいいです」

「えっ? 俺は」

「あぁ! マレンさんはいいんです! 私を助けてくれたそのす、じゃなくて……人だから。信用できる人ですから!」


 彼女はブンブンと手をふって訳のわからない言い訳をする。それから、火を切ったみたいに彼女は話し出した。ジェイクにされたこと、もちろんロンナがいるのでオブラートには包んでいるがひどいものだった。彼女が経験談を話すたび、ミレイナの顔が曇って……小さな怒りを孕んでいく。


「その男性をマレン様が先程追い払ったと?」


 静かだけれど、ミレイナはとても怒っている。ラベンダー色の瞳が俺をじっと見据える。


「あぁ。悪事も環境部に告発したし……すぐに逮捕されるかその前に怖い顧客にってとこかな」

「息の根は止めなかったと?」


——え?


 なんか今、すごく物騒なこと言いませんでしたか?


 息の根を止めるなんて映画や小説の中でしか聞かない言葉を口にする美人メイド。ミレイナはちょっと大胆なところがある子だなとは感じてはいたが、俺が思っているよりも彼女はもっと違った子なのかもしれない。


「ミレイナさん、マレンさんがあんな人のために手を汚すことはありませんよ。でも、ありがとう」


 ムーンがなんとかミレイナの怒りを沈めて彼女は俺に向き直った。


「マレンさん。私やっぱりすぐには知らない男の人と一つ屋根の下で暮らすのは怖いです。ですから、私は別の場所に住んで通ってもいいですか?」


 俺としては、正直な話女性ばかりでちょっと肩身が狭いのでバランス良くファミリーを集めたい気持ちがある、俺自身が女性に苦手意識があるし……。

 俺と同じようにムーンは男性が苦手になってしまったのだろう。彼女は不安そうに唇を震わせていた。そんな彼女に俺は「別の場所で暮らしてくれ」なんてことは言えなかった。


「わかった。女性を中心に探してみるよ」


 俺の言葉に答えたのはムーン、ではなくミレイナだ。


「えぇ。それがいいと思います。うちには小さな子もいますし私もその方が一旦は安心だと思います。それに男性はマレン様一人で十分でしょう? 奥様だって探さないといけないんです。ファミリーに男性が入ったらその男性が食い散らかすかもしれないでしょう? ねぇ、ムーンさん」

「そ、そうですね! 確かに! マレンさんに彼女さんができるまではそれでいいと思います」

「お兄ちゃん、がんばれ!」


 なんだか、おかしな方向に話が進んでしまったが、ムーンとミレイナとロンナが楽しそうならそれでもいいかなと思う。


 こうして、俺のハーレム生活がなんとなく軌道に乗り始めるのだった。


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