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99 どういうことだろうな

 吹き荒れる魔力。ロードリウスから発せられるそれに晒されながら私とカザリちゃんは共に身構えた。こちらも魔力は全開。だけどカザリちゃんが奴に力負けしていないのに対して、私はハッキリ言って明らかに場違いだ。


 魔蓄の指輪を欠いていることで魔力ブーストの恩恵を受けていない今、私は魔族を前にするには──それも魔王の直下である幹部、四災将を相手取るには貧弱が過ぎる状態となっている。


 攻魔の腕輪も装備できていない以上、私はこのタッグ戦のメインを張れはしない。と、それはカザリちゃんもわかっているために、私たちは自然と動いていた。カザリちゃんが一歩前へ、私が一歩後ろへ。前衛後衛と綺麗に別れたっていうほどじゃあないけれど、横並びから少なからず主軸と副軸の意識を互いに持った感じ。


 メインはカザリちゃんで、私がそれをサポートする。攻め手がなくとも糸繰りなら嫌がらせのしようなんていくらでもある。そこにミニちゃんも加えていいならちょっかいのかけ方はもはや無限だ。


 と言っても、それが通用するかどうかはロードリウスの戦い方や能力次第。いったいどう出る、と警戒する私たちに奴は。


「スタンギルに対してもそのように戦ったのかね」


 と、こちらのフォーメーションを目にして思いの外冷静に、淡々とした口調でそう言った。あらら、冷静じゃないの。さっき怒ったように見えたのはフリだった? それともいざ戦闘開始となって一瞬で頭を冷やしたのだろうか。


 どっちにしろ面倒なタチには変わりないが。


「ふむ……これはどういうことだろうな。私の目に君らがスタンギルを凌駕し得る者だとは映っていない。勇者一流の擬態か、はたまた。探らせてもらおう」


 ロードリウスの右手に魔力が集中。これ見よがしに何かをするぞと知らせてくるのは奴の余裕の表れに違いない。臨戦態勢のショボさで一気に舐められたのがわかって(視線からして特に私ね)ちょっと腹も立つが、侮って油断してくれるなら幸いでもある。


 できればその間に大きな傷のひとつやふたつは与えたいところだよね。


「まずは小手調べだ」


 右手が振られた。するとその軌道上から、爆発するみたいに無数の何かが飛び出した! 咄嗟にミニちゃんを前面に展開して壁になってもらい防御する──ぐっ、押される。凄まじい衝突音を立ててぶつかってきたそれらの正体は、水だった。ただの水ではなく、青紫の色に染まった粘性高めの液体。


 ロードリウスは水属性の使い手! そして魔術師タイプの戦法を取る、と判明した。魔族は個々人によって使える術も身体的機能もバラバラで人類の魔術知識の類型からは外れているものの、それでも基本の属性として火・水・土・風の適性持ちが多いことは共通している。と、これまでの魔王期での魔族との戦いからそう判じられている。


 私はスタンギルについて土属性の使い手だったと予測している。土の攻撃術を見せたわけじゃあないけど、天然魔石を介しているとはいえあれだけ莫大な質量の土石を操っていたことや、またその身の頑強さがどことなくナゴミちゃんの逞しさを連想させたものだから、勝手にそうだろうと思っている。


 魔力支配? とか、ザリークの使った手下を生み出す影? みたいな明らかに基本属性にも希少属性にも含まれない訳のわからない術だか異能力ユニークだかもあれど、それに比べたらロードリウスはまだしも人類側の常識に則った正統派な戦い方をするようだ。魔族の中でも常識寄りか非常識寄りかは別れるものらしい──。


 と言っても、ビックリ能力無しで四災将にまで登り詰めているとなればそれはそれで怖い。正統派にとてつもなく強い、ってことなんだからあまり歓迎できたものではないんだけども。


「難なく防ぐかね。反応良し、守り良し。それではもう少し趣向を凝らそう」


 ミニちゃんの陰に隠れる私と、身に纏った闇の魔力で水の散弾を凌いだカザリちゃんを満足そうに見やったロードリウスは、またもや見せつけるように両手を頭の高さで広げた。あたかも指揮者にでもなったようなポージングだ、と感じたのはあながち的外れでもなかったようで。


「この子らと愉快に踊ってくれたまえよ。死のワルツを」


 ロードリウスの手からドバドバと垂れた青紫の水は、ただ地面を流れていくのではなくその場で形を取って独りでに動き出した。いささか線は細いが、人型になったそれらの数は……正確には数え切れないけど少なくとも二十や三十は下らないなこれ。わーお、二対一っていう数の有利が一気に逆転されちゃったよ。


「悪いけどダンスなんてちっとも知らないんだよね」

「ふ、ならば身を委ねるだけでいい。この子らが君を踊り狂わせてくれるとも。真っ赤なドレスで飾り立てて、ね」


 だからそれをお断りだって言ってんだろうが。と、中指を立てる暇もなく人型の水たちが一斉に駆けて襲いかかってきた!


 棒人間みたいな不安定さがある体型の割には壮健な脚力をしてらっしゃる。そしてあっという間に距離を詰めてきた彼らの腕はそれぞれ刃状だったり槍状だったり無数の棘状だったりして、物騒極まりない。これで私の服を血染めのドレスに仕立て上げようってことなんだろうが、そうはさせてなるものか。


「ミニちゃん!」


 ミニちゃんの上に乗る・・。そしてサーフィンよろしくの滑走移動を開始。波はないけどミニちゃんはサーフボードと違って自分で動いてくれる。安定感は悪くない。代わりに速度はいまひとつってところだけど、私の足が止まらないだけでも利点が大きい。


「突糸!」


 逃げながらの攻撃がしやすいからね。距離を稼ぐのはミニちゃんに一任して私は迎撃だけに努める。これはいい役割分担だ、と初めは思ったんだけど。二発三発と続けて突糸を食らわせていく内にマズいことに気付く。


 この水人間ども、急所がねえ! テッソとかは正確に眉間を撃ち抜けば一撃で仕留められたっていうのに、水人間だと頭だろうが胸だろうが貫かれてもピンピンしている。そらそうか、こいつら生きてるってわけじゃないもんな。ロードリウスが操っているただの水に過ぎないんだ。だったら人型をしていたって人間と同じ箇所に急所なんてあるわけもない。


 じゃあどうすればいい? 突糸は一点集中の貫通力特化、水人間を貫通するくらいの威力はあってもそれじゃ大したダメージになっていない。こいつらを仕留めるには──そう、私以上の数に群がられているカザリちゃんがそうしているみたいに、大火力の一発で吹き飛ばす。それくらいしないといけないんだろうが、言わずもがな攻撃に適したアイテムがなくて攻め手を大幅に失っている私にそんな攻撃力は望むべくもない。


 こうなったらミニちゃんを攻撃に回すか? それなら数を減らすこともできそうだ……だけどそうすると、その間ミニちゃんの助けなしで水人間をやり過ごさないといけなくなる。数体ならまだしも十体以上に追いかけ回されているとなると、いくら防魔の首飾りがあっても厳しいぞ。倒し切る前に私が追い詰められるほうが先になりそうだ。


 あっクソ、悩んでいるせいで突糸の勢いが弱い。それとも水人間がこっちの攻撃に生意気にも慣れてきたのか? 武器状の腕に弾かれるようになってきた。やはりあの部分だけミニちゃんが攻める際にそうしているように、殺傷力を持たせるための硬質化が施されているようだ。


 これでは僅かなダメージすらも与えられない。せっかく遠距離用の攻撃手段として編み出したお気に入りの技だけど、水人間に突糸はまったく有効じゃないと認めるしかない。それどころか幾度も私を助けてきた締め技も──関節も気道も水人間にはない以上──用をなさないからには、糸繰りそのものが無力なのか?


 だとしたら、私にできることは。



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