夢一夜 孤独の蛭
かち・・・・カチカチカチカチ・・・カチカチカチカチカチカチ
「あー・・・寒みィ・・・灯油入れねェと・・・」
「あー・・・・キレちまッてる、めんdddddどくせぇ。」
日入りが早くなるこの季節。気温の低下と共に
彼は自らをその寒く暗い部屋へ堕とし続けている。
その男は黒馬が颯爽と疾走抜けるかの如く
小気味よい音を奏でながら一心不乱にボタンを
押す...押す...押す...
俺はここの主人公。名はまだない。
無いのはてめーの名前だけだってか?舐めんなよ俺を。
仕事無し。甲斐性無し。女性経験は少し。
パズルゲー、推理ゲーがめちゃ得意。
あ!あと言語能力。国語力もかなり高いです。よろしくお願いっす!
食虫植物の様な口上を引っ提げ、彼は口を大きく開けて配信を開始する。
自らにない物を喰らう為に。そして自らの冷たい孤独を喰らってもらう為に。
不思議だ。決して艶やかではない彼の言葉は
確かに美しい蛭のように危うく、そして滑らかであった。
そんなある夜、彼はいつもの様に配信を開始する
「あーぷよぷよ配信でもすっか!」
「えー配信タイトルは“ぷよぷよ”配信っくれー俺ァ“上等”なんだよ!?っと...」
月がいつもよりも横たわる。
薄明の底に鈍く光る河原で彼を待つ運命とは。