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駅長室にて
「なに? またあの問い合わせ?」
この忙しい時に電話なんかかけてくるなよ。そんな胸の内をありのまま映した顔を向け、男は訊ねた。
「また例の婆さんッス……」
訊ねられた方の男が答える。こちらが後輩なのだろう。相手の顔を窺いつつも、助けて欲しいと訴えている。
「仕方ないなぁ。もう……」
先輩の男が手を差し出し、電話をこちらへ回せとジェスチャーで伝える。
「もし……●●駅へはどう向かいますか?」
このしゃがれた声の主から、この電鉄会社は同じ内容の電話をもう何度も受けていた。