18-2
ハロンナの外に出て足裏の電磁石をオンにして要塞に降り立つ。振り返ると傷だらけでボロボロになったハロンナが目に入った。
「お疲れ様、ハロンナ。ありがとねっ」
3機でハロンナをなんとか押し出して要塞から離脱させる。
「みんなで待ってるからね!気をつけてね!」
「ああ、アンも気をつけろよ」
ラハラの通信が届いたかどうかわからないほどに早く、ハロンナが遠く小さくなっていく。
「さあ、要塞攻略と行こうか」
「ブースターから侵入したんだから、今俺達がいる所は動力伝達路、だよな?熱反応から目的地は近いか」
反射板で覆われた、ドーム状のALOFが余裕で走り回れる程のかなり広い空間だ。
先の戦闘中のブースター点火時の熱反応や要塞本体の熱発生源の位置から、動力炉の位置をおおよそ予測し、ブースターからの突入を決行したのだが、何せ情報が少ないのでここが何のための空間なのかもわからない。
だが、このドーム状の空間の先に凄まじい熱量を発する何かがあるのは確かだ。
「今ブースターを噴射されたら私達……」
「大丈夫だと思う。あっちだってこんな破損した状態で吹かしたらただじゃ済まないはず」
「うんっ、そうだよね、シシちゃん!」
「ああ、噴射の心配はいらなそうだぞ、メイ。どうやら、ここで直接仕留めるつもりらしいからな」
そう言ってラハラが方向を指し示す。示した先では、壁が盛大な火花を上げて切断され始めている。
「まったく、困ったものですね。メインブースターだけでなく、エネルギー増幅炉までやられてしまいました」
通信から無感情なイヴの声が流れてくる。
「イヴ!いい加減諦めたらどう!?」
「うふふ、それはこちらのセリフですよ。このままではあの雲海を超えられないので、プラン変更です。まずはアウターローバ第2陣が来るのを待ちます。そして、襲って奴隷にしてこの要塞を修復させる事にします」
「はっ!どうやら相当な痛手を負わしてやったみたいだな!1ついい事を教えてやる。そのプランには大きな欠点があるぞ。俺達が立ち塞がるって欠点がな!」
「呆れた。自分達を過大評価しすぎでは?」
火花を上げていた壁が一瞬静まり、勢いよく蹴破られた。姿を現したのは、ひときわ目を赤くギラつかせたレッドアイだ。
「みんな、来るよっ!」
「っ囮!?待って!別の方向からも来る!」
シシが叫び、足裏の磁石を切って上空へと飛び立つ。
反射板に隠れ潜んでいたチェーンソーアッシュレッグ1機が、上空から襲い掛かって来ていた。青白い光を纏うプラズマチェーンソーとプラズマソードが反発し合い、激しい火花が散った。
「反射板で索敵が阻害されていたか!?」
全方位カメラによる目視での索敵に集中する。レッドアイが腰を落とし、スラスターを吹かし始めた。
「壁に気を取られ過ぎていたか。助かったぜ、シシ。俺とフィーリアはあのレッドアイを、いや!」
「ああ、ラハラ、後は俺達に任せろ!」
俺達が侵入してきた穴から壁伝いに機体が入って来た。
イヴだ。
クーリアから奪った腕部や肩や腰からは真紅のプラズマ粒子が漏れ出ている。さらに背中には翼の様に一対の真紅の光を纏うプラズマチェーンソーが追加されている。
「ふーん。予想通りの展開。呆気なく終わってもツマラナイですが、予想通りというのも存外ツマラナイものですね」
「一人で、何を言っているッ!」
右手にオルタバレル、左手にはピストルマシンガン。さらに腰部にはサブアームで2丁のプラズマライフルを装備。計4丁の銃口をイヴに向ける。
「あらあら、フル装備ですね。フィア、本物のリヴァイブと模造品、その違いを見せて差し上げますよ」
イヴが両手と翼を広げて余裕のある素振りを見せる。
暗黒の宇宙をバックに真紅の光を放つシルエットに威圧感を覚えてしまう。だが、メイリアは怯みはしなかった。
「こいつっ!また言った!」
足裏の電磁石を解除。ドーム空間の床を滑る様にして動きながら一斉射を仕掛けた。
「空間認識能力と判断能力に優れる男の個体。射撃を中心に何でも熟すオールラウンダー、と言った所ですか。彼がサポートに入ると面倒なので、まずは単体での戦闘に誘導」
俺も全力でメイリアのサポートをしている。だが、当たらない。高速機動しながらの4つの銃口を全て見切って最小限の動きで回避している。その上、丁寧な解説まで始めた。
「お喋りめ!余裕だって言いたいのか!?」
「うふふ、あらあら、フィア、良く分かりましたね。では、続きを」
両手の銃を収納し、2本のダガーを装備。メイリアの真骨頂、格闘戦を仕掛ける。
「勘の優れる女の個体。高い洞察力が戦闘経験と結び付き、危険察知能力が生まれているのでしょうかね。近接戦闘を好むのは危険察知能力が刺激されるからでしょうか。その結果、勘が研ぎ澄まされる。おあつらえ向きの相手を用意してあげましたよ」
2本のダガーによる剣戟、その合間にプラズマブレイドによる斬撃を挟み込む。だが、どれも真紅のプラズマブレイドで軽くいなされる。翼をはためかせたバックステップで距離を取るフリをしてフェザーユニットのアームで掴みかかるが、それも躱される。
「なんで……!?」
「うふふ、実力の差がわかりましたか?戦闘に特化したこの体と優れた処理能力。あなた達の攻撃はスローモーションの様に見えますよ?」
距離を取り、メイリアが攻撃の手を止める。もしイヴが本気でやる気だったら俺達は死んでいた。これがリヴァイブの力なのか。
俺達だけでは勝てない。イヴを注視しつつ、仲間の2人を見る。
ラハラはレッドアイとの戦闘に入っている。
パッと見はレッドアイなのだが、コックピット付近を見ると機械が外付けされている。レッドアイを無人機に無理矢理変えたみたいだ。凄まじい急速旋回を繰り返しながら、赤熱刀を片手にアサルトライフルで戦っている。
ラハラは2丁のフィールドライフルのモードを器用に打ち分けで応戦しているが、ダメージを与えられていない。少しでも射撃の手が緩むとレッドアイが踏み込もうとしてくる。
シシはアッシュレッグと斬り結んでいる。が、プラズマ間の反発を斬り刻みながらチェーンソーの刃がソードの刀身を侵食していく。その度にシシは固定機銃やもう一本のソードを使って間合いを取り、仕切り直す。だが、呼吸を整えるのを待ってくれる相手ではないらしい。すぐさま次の鍔迫り合いが始まり、ジワジワと追い詰められていっている。
「2人に加勢したい……けど!」
「イヴを連れて行ったらそれこそ終わってしまう……」
「心配すんな、二人とも」
「そうだよ、反応速度の速さには驚いたけど、勝ち筋が見えてきた」
攻防を繰り返す内に2人の距離が近づいて来ていた。
不意にラハラがアッシュレッグに向かって収束ビームを撃つ。その隙きを狙って斬りかかってくる赤熱刀を全速力で駆けつけたシシが受け止める。お互いの相手を交換し、背中合わせで戦い始めた。
「俺達はチームだからな。だがそいつがこっちに来るのはヤバそうだ。フィーリア、イヴをもう少し抑えこんでおいてくれ!」
「頼んだよ、2人とも」
「了解!」




