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「これはこれは、大勢来ましたね。クェルツの皆さん、私はあなた方と争うつもりはございません。私の敵はあなた方がアウターローバと呼ぶ連中です。邪魔をしなければ私からは何もしません」
広域に向けた通信。恐らくこの場にいる全連合軍が聞いたはずだ。
「こいつが報告のあったマゼンタヘッドもといイヴね!そんで要塞を乗っ取った、と。あんた達から見て言ってる事は信じられそう?」
通信を聞いたヨルカ代表が聞いてきた。
「はい、私達と戦うつもりがないのは本当だと思います。でもあれを野放しには出来ない!」
「あの要塞は大量破壊兵器を搭載しています。プラズマ雲海を超えてアウターローバを襲いでもしたら、アウターローバとの関係がさらに拗れる可能性が高いです。きっと修復不可能なほどに……!」
雲海の向こうの人達はまさかリヴァイブが反旗を翻して要塞を奪取したとは思わないだろう。俺達、クェルツが奪取した要塞で仕掛けてきたと思うはずだ。
そんな事になれば和平への道など閉ざされてしまう。
「なるほどね、このヨルカ様としても戦争を避けられるのなら避けたいわ!全艦に通達、標的は無人機のみ!レッドアイ及びシャトルを護りなさい!」
先頭を進んでいた410艦隊の部隊が戦闘に突入した。後続の連合軍ALOF隊も続々と戦域に到達していく。
「ラン姐、盾お願い」
「了解、ルナンちゃん、暴れちゃいなさい!」
オグレスの大型盾に隠れるようにしてスターマインが嵐のような射撃を開始、戦場に花火が上がる。
近づく敵はオグレスのワイヤーアンカーに捕らわれ、剛腕をお見舞いされている。
だが、すぐに敵の物量に押され始める。
「くっ、数が多すぎるわ!ルナンちゃん、少し下がるわよ」
「いや、そのままでいい。私が加勢しよう」
ルナンの嵐撃を掻い潜りながらツヴァイス機が合流。様々な武器を使い、2機が処理しきれない敵機を破壊していく。
「ありがとうございます!まさかツヴァイス代表と小隊を組む日が来るとはね」
「ちょっとーっ!なんで僕達とじゃないのーっ!」
「それは我々が既に3機だからだ」
「こら、ラピ!慣れない宇宙仕様機に宇宙戦なんじゃ!集中せい!フラついとるぞ!」
「それはヌバナも同じだ」
ヌバナは宇宙でも変わらず重装甲を頼ったブースターでの突進。
ブルは2人の会話にツッコミを入れながら四ツ腕形態で砲撃。
ラピは流石に殴打は諦めて2丁のピストルマシンガンを装備している。機体にブースターを増設、それらを駆使してステップを踏むように群れの中を駆けながら乱射している。
バラバラに戦っている様に見えるが、お互いをちゃんとカバーし合っている。なんだかんだで息の合った3人みたいだ。
「心強いな」
「だね!無人機の数がどんどん減ってる!やれるよ!」
アウターローバの連中も連合軍の意図を分かってくれたみたいで、最初は銃口を向けられる事もあったが、今では共に無人機と戦ってくれている。
連合軍のクーリアを庇うように盾にでアッシュレッグの爪撃を受け止めるレッドアイ。攻撃を受け止められ、動きの止まったアッシュレッグを斬りつけるクーリア。
そんな光景を見てメイリアが少し涙ぐむ。
「あらあら、私を出しにして仲良くなるつもりですか?ちょっと、苛立ちますね、これは」
「イヴ、クェルツならイヴの居場所もある。フィアが築き上げた新人類としての居場所がある」
圧倒的なスピードで無人機達を斬り刻みながらシシがイヴに訴えかける。
「そうだ、今ならまだ間に合う!俺達の所へ来い!」
貫通力の高い収縮ビームでイエロノーズを盾ごと貫きながらラハラも説得にはいる。
瞬間的な判断で的確に2つの射撃を使い分け、敵機を撃墜していくラハラ。彼の周囲は安全地帯と言っても過言ではない。
「せっかく手にした第2の人生なんだよ!殲滅だなんて物騒な事言ってないで私達と――」
「気にくわないですね。あなたのお花畑思考で分かったような事を言わないで下さい。あの星が今どんな状況だか知らないでしょう?」
要塞の熱量が高まる。スラスターに火が灯り、回頭し始める。
「謀略、略奪、闘争、殺戮。生き延びるためならどんな醜く卑しい手段も辞さない、そんな連中が蔓延り、支配する星なのです。消したほうが宇宙のためですよ」
「そんな事になっているのか……。だけど!ここにいるアウターローバの連中は共に戦ってくれている!全員がそういう人間じゃないんだろ!?」
「彼らもどんな理由があってここで戦っているのか、いいえ、戦わされているのか。うふふ、私は想像もしたくありません」
180度回頭し、巨大なお椀型のブースターがこちらを向いた。
「お前ら、要塞から離れろ!!」
幸い、要塞近辺で戦っていたのは俺達だけだった。全機、すぐにブースターの熱風が届かない所まで退避する。
「待ってくれ、イヴ!」
呼び掛けも虚しく、速度を上げ、プラズマ雲海へと進んでいく要塞。
「ラハラ隊、ハロンナへ戻れ!あのブースターなら追いつけるやもしれん!我々は無人機共を片付けたら向かう!」
ツヴァイス代表が道を示すように剣でハロンナを指す。
「了解だ!」
「ここはお願いします」
ラハラとシシが迷いなくハロンナへと向かっていく。
「ツヴァイス代表、いや、みんな、ありがとう!行くよ、フィア!」
「ああ、なんとしても彼女を止めよう!」




