17-2
火花を上げるエクスキューショナーと、その前に佇むイヴの周囲には4つの黄色いプラズマ光が線を引くように飛んでいる。
「フィア、イヴが何したかわかる?」
飛び回るプラズマ光を分析して正体を明らかにした。
「小型のプラズマ推進機で作ったブーメランみたいな物が飛び回っている。恐らくあれもイヴが遠隔操作しているな」
肉薄で相手の視界を塞ぐと同時に背部のブーメラン達を放ち、ライフルで刃を受けるその時にプラズマの刃で主要機関を斬りつけたのだろう。
ブーメラン達がイヴの背面へと収まり、リヴァイブの支配下にあったチェーンソーアッシュレッグ達が再び動き始めた。
「うふふ、これで戦力増強ですね。さ、あの人達を追いかけましょう」
もはや倒したリヴァイブには見向きもしないで移動を始めた。
しばらく進むと前方で戦闘の光が見えてきた。急いでそこへ向かう。
近づいたことで要塞がさらに大きく見えてきた。恐らく例の砲口なのであろう、大きな穴が中心に空いている。熱反応がほとんどない事から動力炉は停止していると思われる。
「早いな、もう追いついたのか。なんだか妙だぜ。敵が想定よりかなり少ない」
「ですね、もっと大群を相手するものだと思ってました」
2人の周りには20機の無人機達がいる。残骸から見て、元は30機程いたようだ。俺達とイヴ、それにイヴの無人機達が加勢し、あっという間に殲滅。
「うふふ、恐らく思った以上に疲弊が激しいのでしょうね。プラズマの海を超えてこちら側へ送り込んだ戦力が尽きかけているのでしょう。でも急いでくださいね。作戦ではそろそろ第2陣がやってくるはずですから」
「なるほど、その第2陣が要塞と共に攻め込むつもりだったわけか。疲弊が激しいのは、4部がちょっかい出していたのが効いていたって事か」
アウターローバの侵攻作戦は3段階あったと、イヴが説明を始めた。
第1段階、艦隊によるプラズマ雲海を越えた侵攻。雲海付近の宙域の防衛隊を押し退け、要塞建造のための拠点を設営。戦艦と兵器を惜しみなく使った攻撃で危機感を与え、防衛線を構築させて、要塞建造の時間を稼ぐ。
第2段階、膠着状態を作り出し、要塞の建造と第2陣との合流を行う。それが今の状況だ。
プラズマ雲海を越えるのは楽でなく、潮流に似たプラズマ濃度を見極め、穴を抜けるようにして通ってくるらしい。それでも電子機器をやられ、機能不全に陥る可能性は高く、雲海突破後は機器のチェックに追われてすぐには動けないとの事だ。
そして、第3段階が要塞と合流した艦隊による本格的な侵攻の開始、だ。
「けれど第1段階の時点で大きな誤算がありました。幾度の偵察隊による報告以上の戦力が防衛隊にはあり、艦隊の損耗が激しすぎたのです」
「それで控えめな膠着状態に陥ったわけね。連合軍が強気な攻勢に出ていれば終わってたかも」
「でもシシちゃん、それじゃ星間戦争みたいにアウターローバとの終わらない本格的な戦争が始まっちゃう」
「そうだね、メイリア。この状況は私達にとっては願ってもない状況になっている」
「けどまあ、実際既に戦争状態だ。フィアがいるからといって、和平への道はそう簡単じゃない。メイ、そこは肝に銘じておいてくれよ」
「そうだな、ラハラ。だけど、希望は捨てたくない」
もちろんラハラも心を無情にして戦えと言っているわけじゃない。メイリアに覚悟を問うているのだろう。少し前のレッドアイ達のように戦わなければならない状況は必ず出てくる。その時全力で戦えるのかどうか。
でも俺には観測できている。彼女の中にある強い意志を。
「レッドアイ達は私達の意思に答えて武器を捨ててくれた。あんなチャンスがまたいつくるかわからないけど、ここにいないと希望も掴めない!だから、私、戦います!フィア、付き合ってね!」
「もちろんだ、メイリア!」
「うふふ、和平ですか。私は殲滅を望みますけどね」
「そっか。イヴ、あなたが私達と戦う気がないのは良くわかったよ。同じ敵を相手してても方向性の違いを感じていたのはそういう事だったんだね」
「ええ、目的は違えど、現在の目標は同じ、と言った所ですかね。さて、噂のレッドアイがお出ましですよ」
話しているうちに要塞は目前に迫っていた。出撃ゲートから現れた24機のレッドアイ。3機編成で散り散りになって四方八方から銃口を向ける。
増設した装甲。ガトリングガンや滑空砲等の大型武器、肩には全機ミサイルポッドを装着している重装備っぷりだ。
「拠点防衛装備と言ったところか!メイリア、ミサイルに気をつけろ!」
「ミサイルって前も言ってたけど、誘導兵器の事だよね!?」
「プラズマの濃いこの宇宙では珍しい兵器なのでしょうね。莫大な費用をかけているアトミックムーバーとは違って、プラズマに阻害されて誘導性能は落ちるはずです」
アトミックムーバーはきっとレッドアイ達が乗るあのミサイルの事だろう。兵器情報をもっと聞きたかったけど戦闘が始まった。
「お前ら、囲まれるなよ!チッ、確かに誘導性能は悪いが、それでも厄介だな!」
変則機動で火線を回避しながら迫りくるミサイルを固定機銃で撃ち落とすラハラ。
「あの3機に接近します」
同じようにミサイルを撃ち落とし、その爆炎に隠れながら最も近い3機小隊に向かって全速力で進むシシ。
「シシちゃん、私達も行くよ!」
オルタバレルの連射モードでミサイルを撃ち落とし、翼による急加速で火線を置き去りにしてシシと同じ標的に向かう。
自分達の方に向かって来ている事を察した3機は急いで後退する。さらに加速して、小隊を追い越してから、ターン。シシと挟み撃ちの形を作り、3機を撃墜。
別の場所で大きな爆発が3つ発生した。見ると無人機達で小隊を囲うようにして、イヴが奮戦していた。また1機撃墜。さらにもう2機。しかし、無人機達も数が減ってきている。
「ふーん、そろそろ潮時ですかね。みなさん、ここまでありがとうございました。私は先に行かせてもらいますね。これは感謝の気持ちです」
盾を持ったイエロノーズをイヴの前に集めて、文字通り盾にする。その間に機体温度を高めて胸の銃口を淡く光らせる。
「みなさんの無事を祈ってますよ」
そう言ってイエロノーズを巻き込みながら重粒子プラズマ砲を放った。
出力は抑え気味ながらも、薙ぎ払われた黄色い光は2小隊、6機を飲み込み、火球を発生させた。
「イヴ、どこに行く!何をするつもりだ!」
俺の問いかけには答えずに、爆発に照らされながら4機のチェーンソーアッシュレッグだけを引き連れて要塞へと高速で向かっていった。
「くそっ、やっぱり何か企んでやがった!」
イヴを追いかけ1小隊が離脱。残り6機、みんなに焦りが見える。
「クーリアの推進力じゃ逃げに入られると、くっ!追いつけない!」
「シシ、落ち着け!フィーリア頼む!」
一番推進力のある俺達を警戒して、弾幕が濃くなる。近づけない!
「苦戦しているようだな。ラハラ、シシハナ、一度下がれ。持ってきたぞ」
俺達が来た方向から高速船の反応が接近。そして、聞き覚えのある声が通信から流れた。
「この声はまさか……!」
「そういう事か!フィーリア、少しここを頼む!」
そう言って2機は高速船へと巡航形態で向かっていった。
そして、入れ違いで高速船から1機、巡航形態で向かってくる。
「狙い撃ちされたらまずい!敵の気を引きつけるぞ!」
「オーケー、フィア!」
派手に翼を広げながら、持てる全ての火器を使って攻撃を仕掛ける。
「支援感謝する。ふむ、こいつらがレッドアイか」
速度そのままに、マントを翻しながら、巡航形態から通常形態へと移行。背後のウェポンラックから実態の大剣を取り出し、巡航の速度を活かして斬りかかる。
「遅くなったな、ツヴァイス、助太刀に参上した」




