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ビーストル星から高速航路を使って基地に戻ってきたのが昨日の昼過ぎの事だ。
旅の疲れを癒やす間も無く、艦の乗員は仕事に追われる事となった。
もちろん俺とメイリア達3人のパイロットも例外ではなく、やる事はたくさんあるのだけど、帰ってきてからアンビー共々会議室に丸1日缶詰状態だった。
会議の始まりはイナリハ司令とヨルカ代表、それとドライヤ代表による現在の戦況説明であった。
「現在は膠着状態と言えるだろう。勢い良く攻め込んできたのは君達に奮闘してもらったあの時だけで、それからは散発的に無人機群が防衛ラインに抵触して戦闘が行われる程度だ」
「んー、非常に困った事に、防衛ラインを構築している1から3部の部隊員達はあの無人機との戦闘経験がほとんど無いのですよ。なので司令は軽く言いましたが、あの数の軍勢に襲われると苦戦を強いられているのが我々の部隊の現状ですなぁ」
強面な顔をしかめて、眉間の皺を揉み込みながらドライヤ代表が言った。
確かに大型モニターに映し出されている戦闘毎の敵の撃破数と味方の損害状況を見ると、快勝とは言えない数字が並んでいる。それを見ながらヨルカ代表が口を開く。
「この状況を運が良いと見るか、嵐の前触れと見るか、意見が別れる所ね。ちなみに、私達4部は敵の前線基地が構築されていると思われる宙域に攻撃を仕掛けているわ。攻撃というか威力偵察ね。ただあっちの守りも固くて、なかなか情報が集まらないの。あ、でも1つおかしな情報がちらほらと。イナリハ、あの映像出せる?」
代表の要請を受けて司令がモニターに映した映像。2機のレッドアイとそれに群がるドロンズ達の戦闘映像だった。それを見たハロンナの面々は険しい顔でそれぞれ顔を見合わせた。恐らくみんな同じ考えのはずだ。
「みんなして何か思い当たる事があるって顔ね。きっとフィアちゃんに関連した事でしょ?ラブラとルーデルさん、それとテクノラ君が来たら聞くわ」
イナリハ司令が画面を切り替え、次の話題へと話しを進めた。
「さて、ハロンナには帰ってきて早々だが任務を頼みたい。先程ヨルカ代表が言った威力偵察に参加してもらう。そろそろ敵側の情報を本格的に手に入れないと手遅れになりかねない。それとこの膠着状態により兵たちの間で不安と緊張がより高まってきている」
ドライヤ代表が険しい顔を和らげ、メイリア達の顔を順番に見ながら言った。
「アウターローバ侵攻戦の立役者たる君達がビーストル星での活躍を経て凱旋。今度はアウターローバに一泡吹かせる、という筋書きですな。慣れない相手に疲弊の色が見える1部と3部の代表としても、ぜひお願いしたいですなぁ」
「もちろんただ闇雲に攻撃を仕掛けるわけじゃないわ。これまでの威力偵察でわかった特に守りの固い3つの宙域、そこを4部の精鋭達で同時に叩く!」
守りの固い宙域に攻め込む。つまり激戦になるのは免れない。メイリアに緊張が走るのがわかった。
その後、詳しい作戦説明がモニターを使って行われた。あくまで威力偵察なので宙域毎に3艦での少数行動なのだが、何故かハロンナは単独ルートが指示されている。
「えぇ〜!?なんでハロンナは単独ルートなのですか」
「実はあんた達の担当宙域はさっき見せたレッドアイとドロンズの戦闘が多数目撃されているエリアなの。私の勘だけど、マゼンタヘッドが絡んでそうなのよね。もし奴が現れたら、逃げるも探るもあんた達の判断でいいわ。危険が無い程度に好きに行動して」
つまり好き勝手に素早く行動できるように単独行動、という事なのだろう。
一通り作戦説明が終わった真夜中、休憩を挟んだ所で残りの3人の代表が合流した。そこからの話題はサーチと俺の誕生の秘密についての話だった。
「あー、なるほど。噂のレッドアイに絡んでいるドロンズ。そしてマゼンタヘッド。そういう事ね」
俺の話を聞いてテクノラ代表が独り納得している。
「ちょっとテクノラ君、また独りで納得してる。それにもっと他に感想はないんですか!?」
「時間があまりなくてね。ラブラの感想はあとでたっぷりフィアに聞かせてあげてよ。それに技術部の見解としては大方見立て通りだったからね」
「もしかしてマゼンタヘッドもリヴァイブ……。サーチのように目覚めた個体なのでは?」
ルーデルさんが気づいたように言った。
「そうね。私もそう思う。待たせたわね。あんた達の意見を聞かせてくれない?」
ヨルカ代表に促され、俺は説明を始めた。
マゼンタヘッドについては、ビーストルからの帰り道、ハロンナの中でもみんなで意見を交わした。そして一致した見解はルーデルさんと同じ、マゼンタヘッドはリヴァイブなのではないか、だ。
何故レッドアイとドロンズが戦っているのかは分からないが、あのドロンズを操っているのはマゼンタヘッドか、あるいは他のリヴァイブか。
「何にしても情報不足ですね。特にリヴァイブについての情報は少ない。マゼンタヘッド以外にもいる可能性は大いにありますね」
「ルーデルさんの言うとおりね。だからこそ、あんた達、情報を集められるだけ集めてきて!」
「そうそう、その作戦を行うにあたっての君たちの装備の拡充プランがあるんだ。見てもらえるかな?」
テクノラ代表が耳をピンっと立てて、珍しくイキイキとした表情でモニターを操作し始めた。




