表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したと思ったらロボットの戦闘支援AIになっていました 〜量産機だけど美少女パイロットとこの先生き残るためにエースを狙います!〜  作者: 夕暮れタコス
第13話 理性と獣性

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/100

番外編 ラハラの追憶2

「俺がみんなを守るんだ!」


 垂れ下がっていたタラップに跳びつき、一息に登り切る。リリとドマが大人達に腕を引かれ避難通路へと入っていくのが見えた。2人とも心配そうに、そして信じられないといった顔で俺を見ている。リリと目が合い、リリが片腕を俺の方に伸ばしたが、扉が2人の視線を遮った。


「くそっ、誰かこの怪我人を頼む!君、私が機体を動かすまでそこにいるんだぞ!」


 狐の獣人が叫んでいるが、内容は頭に入ってこなかった。コックピット後部から予備のパイロットスーツを取り出して着替える。少しサイズが大きいが着れなくもない。ついでに操作マニュアル本もあったので拝借する。マニュアルを見ながら急いでパイロットスーツをシートに固定する。

 授業やら雑誌で得た知識はあるものの、実際に触るのは初めてだ。マニュアル片手に起動手順をこなして行く。次はパイロット認証……。


「テストモードを終了。本機のパイロット正式登録をお願いします」


 うおお、なんて幸運なんだ!AIの合成音声がパイロット登録を促している。


「認証、ラハラ・イフェイオン」


「ラハラ・イフェイオン。声紋登録完了。機体チェックを開始。システムオールグリーン。初回起動のため、操縦最適化を行います」


 機体のパラメーターがメインモニターに流れるように表示されていく。なんのこっちゃと眺めていると、画面が切り替わり、照準マークと画面の端々に黒点が表示された。どうやら操縦桿を操作して黒点に照準を合わせろという事らしい。

 

 また揺れが発生する。くそっ、悠長にやってる場合じゃないんだが、やるしかない!

 あぁ!難しいぞ!時間がかかった!悔しがっていると、2回目の調整が始まった。1度目の結果を反映して操縦桿の操作感が変わり、やりやすくなった。また2度目の結果が反映されて、3度目になるとスムーズに照準を合わせられるようになった。よく出来てるもんだ。


 左右のスティック調整が終わり、ペダルの感圧調整も終わった頃、ホワイテスが1機近づいてきた。


「大丈夫か?ん、なんで起動している?ああ……、テスト中の機体だったからか」


 さっきの狐の獣人の声がスピーカーから流れてくる。きっと起動できなくてコックピットの中で困り果ててると思ったんだろうな。オニオも搬送されて、周りの人気はなくなっている。


「もういい、養成学校の生徒なのだろう?乗り込むという事は操縦も習っているという事だろうな?覚悟はできているか?現在このブロックで戦えるALOFは我々しかいない。接近中の敵は5機。テロリストの様だが、そこそこ腕は立つようだ。前に出て戦えとは言わん。物陰から適当に援護してくれ。あぁ、それと私の名はイナリハだ」


 なんだかさっきまでとは違う、冷たい雰囲気を感じる通信だった。操縦は座学でやった程度。習っているとは言い難い。まるでその事を見透かされていて、責め立てられている様に感じた。だけど、今更降りるなんて出来ない!近くにあったアサルトライフルと盾を手に取る。


「ふむ、降りる気は無さそうだな。名はなんという?」


「ラハラだ!」


「ラハラか。来るぞ」

 

 格納庫の分厚く大きなドアがALOFの大きさくらいの長方形に溶断されていく。急いで物陰に半身を隠し、溶断されゆく長方形の真ん中に照準を合わせる。溶断が終わると共にALOFの足によって蹴破られる。


「うおおおお!」


 トリガーを引くのと同時に無意識に叫んでいた。が、蹴破った機体の姿は無く、銃弾は虚しく扉の向こうへと飛んでいく。


「狙いは悪くないが、敵も思考する人間だ。そう単純ではないぞ。今だ、開けてくれ」


 俺に向かって話していたかと思えば、違う誰かに合図を送った。その合図と共に格納庫の扉が音を立てて急速に開き始める。扉の陰に隠れていた敵のALOF、グレインが慌てて遮蔽物を求めて動き出す。その中の1機、動き始めが遅かった機体をイナリハが素早くライフルで仕留めた。


「すげぇ……」


「感心している場合じゃないぞ。こちらが2機である事もバレた。攻め込んでくるぞ」


 イナリハの言う通りだった。盾を構え、アサルトライフルを撃ちながら4機が横並びになだれ込んできた。

 

「援護を頼む」


 そう言うと盾を構えて4機の側面に回り込むように走り出す。


「そういう事は、先に言ってくれよ!」


 急いで援護射撃を開始する。落ち着け、こういう時こそあれを使うんだ。格納庫を俯瞰するように、敵の位置、味方の位置、遮蔽物、敵の銃口の向きを把握する。そして息を止めて頭の中で呪文を唱える。


 空間認識能力の向上と思考加速の自己暗示。能力拡張実験の数少ない成功例。その1人が俺だ。認識能力の向上はともかく、思考加速は使うために息を止める必要があるうえふ、脳の負担も大きい。後で頭痛に悩まされる事になるが、今はそんな事言ってられない。


 敵の動きがスローに見える。4機が一斉に銃口をイナリハに向けようとしている。イナリハのあの盾じゃ受けきれないだろうな。発砲が始まる前になんとかしなきゃ。イナリハに近い敵を撃てば、他の敵の視界に火線が映り、俺にも注意が向くはずだ。ただ撃つだけじゃなく、致命的なダメージを与えて無視出来ないようにする。ここからじゃ角度的に良くない。この物陰から飛び出る必要がある。よし、あの物陰へと移動しながらなら、いい角度で撃てる。

 物陰から飛び出しながら観察する。装甲の厚い部位ではだめだ、盾に阻まれる可能性がある場所も駄目だ。よし、この角度なら膝が狙える。当たってくれよ!


 移動しながらの射撃は難しかったが、思考加速のおかげで冷静に狙えた。膝にダメージが入り、片膝立ちになるグレイン。目の前の仲間がそんな状態になった事でほか3機が一斉にこっちを向き始める。一番早く銃口を向けてきた端っこの機体に向けて発砲。持っていたアサルトライフルを打ち抜き、さらに頭部も撃ち抜いた。

 痛っ!


「ガハァッ!」


 頭痛で息が漏れ、思考が元に戻る。よろめきながらなんとか遮蔽物へと駆け込んだ。


「どうした、大丈夫か?まったく、驚いたな。後は任せてそこにいろ」


 回り込んだイナリハと俺によって挟まれた形となった敵達は動揺し、銃口が右往左往している間にイナリハによって無力化された。



 

「ラハラ、今回は助かった。だが、もうあんな無茶はするな。あの活躍が無かったら殴っていたところだ」


 騒動が一段落し、片付けに追われる基地の人達を見ながら俺はホワイテスの足元に座っている。その隣で立ったままのイナリハがそう言った。


「あんただっていきなり敵に突っ込んでいったりして、どういうつもりだったんだ?」


「敵は綺麗に横並びになってくれていた。側面に回り込んだ俺から見れば縦並びだ。敵からしてみれば前にいる味方が邪魔して射線を確保できなくなる。そんな状況でラハラが乱射でもなんでも発砲してくれれば、わざわざ隊列を乱して俺を狙うより、お前の方に注意が向く。そうなれば先頭の1機、多くてその後ろの2機との戦闘に集中すればいいだけだ」


「あー、なるほど……。丁寧な解説どうも」


 その状況になれば各個撃破は余裕、そういう事なんだろう。最初の1機を仕留めた腕を見るに、確かにやれそうだ。


「ふふ、そうだな。わざわざ丁寧に説明してやったんだ。理由はわかるか?」


 イナリハが口元に笑みを浮かべて言う。


「え?うーん、わからないな」


「近々新しい部署が作られるそうだ。侵略者に備えたプラズマ雲海付近、外縁宇宙の防衛隊だ」


「へぇ〜」


「実は私がこの基地にいるのはその部署に来ないかと、ここの司令、コウコウ司令からスカウトを受けたからだ」


 確かにここは連合軍の基地になったと言っても駐留しているのは9割アマナ人だ。獣人がいるのは珍しい。しかし、話が見えない。


「で、どういうこと?」


「少し回りくどかったかな。私の隊のやつらにも声をかけたのだが、振られてしまってね。新しい部署での隊員募集中なのだ。そしてその候補生にレクチャーというわけだ」


「え、それって……。えぇ!でも俺まだ15歳だぞ!?」


「ほう、それは良かった。軍に入れる最少年齢は15歳からだ。もちろん今すぐにじゃなくてもいい。学校を卒業してからでもいいんだ。私の隊に来ないか?」


「……1つ条件がある!俺のクラスメイトの2人も一緒に入隊させてくれ!」


「ふむ……。すぐに、というのは難しいが、そうだな、卒業後に迎え入れるので良ければ約束しよう」


「えぇ〜、すぐにじゃダメなのかよ!」


「考えてもみろ、新兵を3人も迎え入れてまともな戦力になるものか。それに、ALOF隊は3人1組、定員オーバーだ」


「それじゃ結局……」


「あと3年もすれば私はパイロットを引退する。実は艦長をやらないかと誘われているんだ。それまでにお前を隊長へと育てあげる。そして1人前となったら彼らを迎えに行けばいい」

 

 体が震えた。こんなチャンス、滅多に来るものじゃない。このまま卒業したら俺達はバラバラになる。だけど、それを繋ぎ止められる。リリとドマとずっと一緒にいられる。もう迷いはなかった。


「俺、すぐに入隊するよ」


「ふふ、ありがとう。よろしく頼む、ラハラ」


 リリ達と再開して、先生にイナリハからの提案を話した。先生は大喜びだったが、リリとドマは違った。


「んだよ、ずりぃな。抜け駆けかよ」


「せっかく仲良くなれたのに……。寂しいよ、ラハラ君」


「このまま卒業しても、俺達はバラバラだ。3年後、俺が隊長となってお前達を迎えに来てやるよ!そうしたらずっと一緒の最強部隊の完成だ!」


「……なんだよ、それ。メチャクチャ楽しそうじゃねえか!お前の下ってのが気に食わないが、実力で引きずり降ろしてやるぜ!」


「ずっと一緒……。いいね、それ!うん、ドマ君と2人で待ってるね!ちゃんと迎えに来てよね!」


 リリの満面の笑み、心の底から嬉しそうだった。



 カラン、と溶けた氷がグラスの中で崩れてぶつかり合う音で目を覚ました。ビーストルへの旅路。出発前にイナから貰ったあいつのお気に入りの酒。それを飲んでいるうちに寝てしまっていた。イナの居ない艦内であいつの好きな酒を飲む。そんな事をしたから郷愁地味た夢を見たのかもしれない。

 俺が見たリリとドマの最後の顔。リリのあの満面の笑顔。ドマの俺を信頼しきった楽しそうな顔。

 結局約束は果たされなかった。彼らが卒業を迎えるその年に、あの忌まわしい事件が起きたからだ。犠牲者リストにあった2人の名前。いや、2人だけじゃない、俺を兄の様に慕ってくれた年下クラスのみんな。イタズラをしても優しく叱ってくれた先生。知った名前がたくさんあった。だけど、どうしても視線は2人の名前に吸い込まれてしまった。


 ラハラ・イフェイオン。懐かし名前だ。イフェイオン、両親から受け継いだこの名を捨て、俺はラインラークを名乗る事にした。亡霊としてあの笑顔を、信頼と友情、そして約束を灰と化した奴らに復讐するために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ