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戦闘が終わり、ボロボロになった俺たちは仲間の2機に牽引されながら母艦ハロンナへと向かっている。
「フィア、本当にありがとう、あなたがいなかったら何回死んでたかわからないよ」
「こちらこそだ。あの時メイリアが一緒に戦うと言ってくれたから俺も諦めないで戦えたんだ。そして、この世界でこの新しい体で生きていく、という本当の覚悟が決まったよ」
「本当の覚悟?」
「あぁ、君に俺の事を話す決心とも言えるな。まだこの世界がどういう所なのか、どんな人達がいて、なぜ戦っているのか、何より俺は何故AIなんかに生まれ変わったのか。わからない事だらけで不安だった。変なAIだと思われて解体や実験室送りなんて事も考えた。だからしばらく普通のAIを装うつもりでいたんだ」
「そっか、AIとして生まれ変わる……。普通じゃ信じられないけど、こんな体験したらそうも言ってられなくなるね。フィア、あなたは命の恩人だよ!解体も実験室送りなんて事もさせない」
「ああ、そうしてもらえると助かるよ。それとあの2人にもまだ秘密にしておいてもらえないか?」
仲間2人の事を信用していないわけじゃないけど、まだ会って間もない、いやまだ直接会ってすらいない彼らに俺の事を知られるのは気が引けた。だから戦闘中からずっとメイリアと話す時は通信で向こうに聞こえないようにしておいたし、ログにも残らないよう細工もしておいた。もちろん今もだ。
「フィアがそうして欲しいって言うならそうする。艦長や整備班のみんなにも秘密にしておくね」
メイリアがそう言って、カメラに向かってにっこりと微笑みかけてきた。
出撃前にメイリアをカメラで観察してた時の事を思い出す。
あの時、込み上がってきた「この子の力にならなきゃ」という想い、その想い自体は今でも変わらずある。
だけどそれはメイリアがカワイイからとかそういう色恋とはちょっと違くて、どこか使命感じみたものを感じるんだよね。そう、まるでAIにプログラミングされている行動理念に従っているかのような……。
どこまで俺の思考でどこからがAIとしてのプログラムなのか。本当に俺という自我はあるのか。そもそも本当に前世なんてあったのか……。AIの思考回路がおかしくなって人格が形成されただけなのでは?
「フィア、大丈夫?」
気づけば笑顔だったメイリアが不安そうな顔になっている。
自分が何者なのか、そんな事は考えてもきっとわからない。この先も生き延びて、運がよければ知ることができるかも、今はそう思っておこう。
「大丈夫だ。ところで、この世界についての情報がないか機内データを探してみたけど、あんまりそういったデータはないみたいだな」
「あー、たぶん戦闘に関するデータしかないと思うよ。艦のデータベースにあるだろうから今度見せてあげるね。艦につくまでまだ時間あるから何か教えてあげよっか?」
牽引しながらなため、速度が出せなくて帰るまでになかなか時間がかかるみたい。
「うーん、そうだな、それじゃあ、あの敵について教えてくれないか?なんでメイリア達は戦ってるんだ?いや、それどころかこの世界の組織とか勢力とか……」
「あーあー!待って!あんまりいっぺんに聞かれても答えられないよ!私達の歴史から話すと時間が足らなそうだから、あいつら、アウターローバについて話すね。あいつらについて判ってる事はまだ少ないんだけど、資源目的であのプラズマ雲海を超えてやってくる、外宇宙からの略奪者って言われてるの」
「外宇宙からの……。機体の見た目も使われてる技術も全然違うのはそういう事か」
「うん、そういう事なの。それでね、奴らを野放しにしておくと、その辺の資源衛星に補給基地を作ったりするの」
「まるで……」
「ふふ、まるで虫か何かみたいでしょ?だからみんな補給基地の事を巣って言ってるの」
そういってメイリアはいたずらっぽくカメラに向かって微笑んだ。気づけば俺も自然とふふっと笑い声を上げていた。
「あ、そうだ、今度はフィアの事を聞かせてよ!前世の世界の話とか!」
「ああ、いいけど、ごく普通の一般市民の話だぞ?」
それから艦に着くまで俺の他愛ない身の上話を続けた。
こうしてメイリアと話しをしていると自分に感情がある事をはっきりと感じられる。そしてその感情に引っ張られるようにして前世の思い出がフラッシュバックする。
そう、俺は確かに地球で生きていたはずだ。
そして今はこの世界で生きている。




