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7隻の艦隊へ向けて宇宙を飛ぶ。少し先をルナンの新カスタム機、スターマインが行く。そのさらに先には戦闘が発するいくつもの光が見える。通信からはシシハナさんの咆哮にも似た、どこか悲しみを帯びている叫びが聞こえてくる。
「おい、シシ待て!クソっ!おいおい、嘘だろっ!」
縦列になっている敵艦、その真ん中辺りで大きな爆発が発生。その直後、ラハラの焦りと驚嘆の声が遅れて聞こえてきた。
「敵、3番艦の撃沈を確認。隊長、何があったのですか!?」
アンビーが状況の説明を求める。
「半壊状態にしたイエロノーズを掴んで、そいつの電磁シールドを頼りに戦艦のシールドを突破しやがった!」
「先頭の艦以外は通常シールドみたいだから、いけなくもないんだろうけど、かなり危険ね」
ヨルカ代表が心配そうなを声を出す。電子レンジに自ら入っていくようなものだ。そう何度も同じ事を繰り返させるわけにはいかない。急いで止めなくては!
新しくなったカスタムパーツの具合を確かめる。今までは肩の制御機からバイパスしてフェザーユニットにエネルギー供給を行っていた。今はニクトゲンから貰った制御機2つをメインブースターを潰して取り付け、そこにフェザーユニットを取り付けている。増設制御機からはいくつものケーブルが伸びている。これまでとは逆に増設ユニットから腕部、脚部へと余剰エネルギーを送るための剥き出し状態のケーブル。これらは急造のため収納が間に合わなかったのだ。
そして、ルナンの機体から発想を得た武器に繋ぐためのケーブルが2本、垂れ下がっている。これらは翼の付け根から生えているため、尻尾というより尾羽のように見える。
この状況を覆すために、みんなが力を合わせて作られた機体。その役割を確認するために、アンビーがしてくれた打開策の会話を思い返す。
「フェザーユニット用のプラズマ制御機を増設するの。ニクトゲンの、ワト隊長達が提案してくれたの。余ってるパーツがあるから使ってくれって」
「ちょっと待ってくれ。ただでさえリミッター付けて出力を制限してるのに増設したところで……」
「フェザーユニットの推力用の増設じゃないの。これは、より強力な火器を使用するためのエネルギーを確保するためのもの」
「今までも制御機の増設を考えた人は大勢いたけど成功例が無いって聞いた事あるけど、大丈夫なの?」
「メーちゃんの言う通り。誰でも1度は思いつくプランだと思う。けど実際に使いこなした人はいなかった。何故かと言うと増設分のエネルギーの分配が難し過ぎるからなんだよ」
「ああ、そっか。正式にサポートされてない機能だからそこも自力でなんとかしないといけないんだね。そこでフィアの出番だね……!」
「で、その強力な火器って?もしかして私の機体のカスタムプランのあれ?」
「そう。ルナンちゃん、メーちゃん、フィアさん、3人の力を合わせるの。まずは先頭の艦の電磁シールドを破って!」
そう、まずは先頭の艦の強力な電磁シールドを破るのが第1目標。後は後方で艦砲射撃体勢に入っている2隻が立て続けに主砲を発射。通常のシールド状態から出力を上げられる前に撃破する、という作戦だ。ただ、1つ新たな問題が発生している……。
アンビーが必死にシシハナに呼びかけている。
「このままだとシシハナさんが主砲に巻き込まれちゃう……」
「2人とも。私が撃ったら一直線でお姉さんの所に向って。その翼なら間に合うじゃないかな。ここは私が防衛線を張る」
「……頼めるか?ルナン」
「もちろん。それじゃ、始めよ」
ルナンの新カスタム、頭部に増設された厚みのある2つの尖ったセンサー。まるで猫の耳だ。それが前方に倒れて先端が開き、望遠レンズが姿を表す。
次に新しくなった右腕銃。名をファイヤーワーカーというらしい。前の物より大型化している。そして、ケーブルの接続口が3つになっている。これを胸の正面に構え、ルナン機の尻尾を接続。左手で補助グリップを掴んで固定する。さらに脚部を後ろに反らし、反動に備えてスラスターを後に向ける。
発射体勢に入ったルナン機を後ろから包み込むようにくっつく。2つの尾羽をファイアーワーカーに接続。フェザーユニットを前方に伸ばして展開。プラズマを放出して電磁界のフィールドを作り出す。
「フィールド安定、集束領域確定を確認したよ」
「こちらもエネルギー制御は好調。ファイアーワーカーの充填率もクリアだ」
「集束領域0.7度下げ、右に0.2。うん、照準良し。撃つよ」
ファイアーワーカーから太いプラズマのビームが放たれる。全身のスラスターを全開で吹かして反動を相殺。3秒ほどかけて放たれたビーム。それが電磁界のフィールドによって作られた集束領域を通る事で回転が加えられ、圧縮され、細く穿つようなビームへと変わる。シールドを貫通する事に重点を置いた小型の加速荷電粒子砲だ。
「フィア、メイリア。行って!」
着弾を確認する前にルナンが語気を強めて言った。
「ありがとう、ルナン。気をつけてね!」
「ここは頼んだ!」
発射体勢から離脱し、全速力で向かう。前方で大爆発。どうやらシールドを貫通して艦を沈める事に成功したようだ。
わらわらと敵機が向かってきている。だが無視して通り過ぎる。
「なんだっけ、嵐撃の幽鬼だっけ?その戦い、楽しんでって」
ルナンが戦闘を開始した。威力と連射速度共に以前よりも増した正確無比な狙撃の嵐が背後で花火を上げている。
2番艦を通り過ぎる頃、ニクトゲンの主砲が到来。近くで大爆発が起きる。3番艦がいた所はその残骸が散らばっている。そのさらに前方、4番艦の近くでシシハナさんとラハラ、そしてアウターローバの機動兵器達が三つ巴の戦いをしている。
「いた!隊長がシシハナさんに攻撃して気を引き付けてるんだ!」
「ラハラ、下がれ!シシハナさんは任せろ」
「ガハァッ!助かった!そろそろ思考加速の限界が近かった」
ラハラが苦しそうに息をしながら言う。
オルタバレルへのエネルギー供給を増大。単発モードでラハラの近くの敵機を撃ち落としていく。通常のライフルと同等かそれ以上の威力にアップしている。
ラハラが離れていく。シシハナさんはドロンズやイエロノーズだけでなく、アッシュレッグすら捉えて、獣の様に斬り裂き、屠り、穿ち、破壊の限りを尽くしている。だが、攻撃に偏りすぎていて見ててヒヤヒヤする。
「シシハナさん、落ち着いて!」
「ぐぅぅぅ!メイリ、違う!スズハナぁぁ!」
「スズハナって前に言っていた……」
困惑するメイリア。
「声は届かないか!あんな危険な戦い方いつまでもさせておけない!」
「あなたは私の居場所を奪った!愛おしい妹!憎い!愛おしい!あぁぁぁ!」
完全にターゲットをこちらに定めて向かってきた。フェザーユニットで翻弄しようとするが的確にこちらを捉えてくる。これが野生の勘なのか!?
IFFが作動しないのはシシハナさんがマニュアル操作のためだろう。こっちはそれに引っかかって火器管制装置を通した攻撃ができない。
「少しでも足止めしなくちゃ!でも余裕が無さすぎる!」
「まずは敵艦から引き離そう!このまま俺達についてきてくれよ!」
4番艦がシールド出力を上げきる前に主砲を撃ち込まなければ作戦は振り出しに戻ってしまう。アウターローバの機体を置き去りにして、艦の爆発想定範囲外まで逃げる。全速力で追いかけくるシシハナさんから肝が冷えるような攻撃が飛んでくる。
「これ以上避け続けるのは無理だ!やろう、メイリア!」
「っだね!オーケー、フィア!」
フェザーユニットで羽ばたくようにプラズマを広範囲に放出。そこにシシハナさんを誘い込む。
「シシハナさんが考えてくれた技だよっ!ちょっと荒療治だけど我慢してね!」
オルタバレルから高電圧の光球を放つ。放出したプラズマ雰囲気中で雷が発生。シシハナ機を直撃。動きが止まる。クーリアの耐電装備はなかなかの物だ。落雷程度では故障はしない。だが、パイロットへのダメージはあるはずだ。動きが止まっているのがその証拠。
前回のフラッシュオーブと違う点がある。前回のは雰囲気中に達した光球はすぐに雷となって消えてしまった。だが、出力を上げたオーブはまるで意思があるかのように雰囲気中を漂い、雷撃を放出している。フラッシュオーブ、改め、ウィル・オー・エレクトロだ。
「シシハナさん、ワトさん達の意志を感じ取って!ていうか、これシシハナさん大丈夫なの!?」
「これでも出力は抑えたんだ。バイタルサインは正常、では無いが危険域には行っていない。気を失ってくれればいいんだが……」
電撃を受けるシシハナ機の後ろで4番艦に加速荷電粒子砲が直撃、爆発する。だが、4番艦から逃げるように出てきた敵機達がこっちに向かってくる。このままだと電撃で棒立ちのシシハナさんが狙われる。そう思い、オルタバレルを使って光球を打ち消す。
機体を抱えてその場を離れようと、手を伸ばして近づいたが、回避される。
「うそっ、まさか、まだ……」
「消すのが早かったか!?」
「はぁはぁ、ううん、十分効いたよ。ありがとう2人とも。見苦しい所見せちゃったね」
「ふぅー、落ち着いたか、シシ」
「ご迷惑おかけしました。隊長も、ありがとうございました。みんなの声、届いていたけど戻ってこられなかった……」
「家の事情を抱えたまま仲間の死に遭遇して、色々溢れ出てきちまったんだろう。何はともあれ、お前らまだいけるか?」
「はい!」
「ええ、なんとか行けます」
「久しぶりのラハラ隊3機編成だな」
「おっ、そうだな。それじゃあ、ラハラ隊、暴れてやるとするか」




