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転生したと思ったらロボットの戦闘支援AIになっていました 〜量産機だけど美少女パイロットとこの先生き残るためにエースを狙います!〜  作者: 夕暮れタコス
第11話 独りと機械

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番外編 シシハナの時間潰し ―VSハイブースト―

宇宙に戻るにあたって宇宙戦のリハビリにと書いたものです。時系列的には結構遡ります。

「ふぁ〜あ」

 

 特にする事も無いけど起きよう。

 海賊モドキを退けて数日。平和だ。

 ドミトリアへ到着するのもあと数日。退屈だ。

 もう敵襲もないだろう、ということで船内は早くも休養モード。

 私も満喫したいけど、ここ数日なんだかモヤモヤする。


「おはよう、スズハナ」


 テーブルの上の妹の写真にいつものように挨拶する。元気にしてるかな。

 スズハナからのメールを読み返す。元気が出た。でも声を思い出そうとしても上手く思い出せない。それほど会ってないんだな。スズハナの声を思い出そうとするとメイリアの声にすり替わってしまう。


 スズハナとメイリアは何となく似ている。声や容姿的にではなく、性格的に。だからメイリアと一緒にいるととても落ち着く。

 そうだ、メイリアに会いに行こう。この時間ならもう起きてるはずだ。朝食がてら食堂へ行ってみよう。


「あはは、それはパンケーキだよ、フィア。ホットケーキはこっち」


「見た目じゃまったく見分けつかんのだが」


 やっぱり食堂にいた。メイリアお気に入りのあそこだ。フィアと仲良く話している。

 

 心がモヤッとした。

 

 そうか、フィアに私のメイリアを取られたから、もやもやするのか。

 フィアが嫌いなわけじゃない。メイリアや艦の事を本気で思っているし、実際助けてくれた。

 いい人だ。力になりたいとも思っている。

 けどそれはそれ。このモヤモヤを晴らす手段が欲しい。やはりあれしかない。


「少なくともこの食堂では生地が甘いのがホットケーキ、甘くないのがパンケーキ」


「「あ、シシハナさん、おはようございます」」


 ハモっちゃったね、と2人で笑いあっている。落ち着け私。


 厨房にホットケーキを注文し、ドリンクマシンでコーヒーを入れながら平静を装って質問してみる。


「フィアの世界にもホットケーキとかあったの?」


「ありましたよ。面白い事に食文化なんかはあまり変わらないみたいです。この携帯も同じような物がありました。スマートフォンって呼ばれてましたけどね。文化や技術の行き着く先は案外似通っているのかもしれないですね」


「ふふ、それは興味深いね」

 

 出来立てのホットケーキとコーヒーを手に2人がいるテーブルに同席させてもらう。この甘いホットケーキとコク深いコーヒーが最高の組み合わせ。

 さて、2人には悪いけど憂さ晴らしに付き合ってもらおう。

 

「ところで今日は2人に頼みがあるの。シミュレーターで模擬戦をしてくれない?」


「え?私達でよければ」


「ハイブーストにももっと慣れておきたかった所なので、ちょうどよかったです」

 

 早く戦いたいという気持ちを抑えて、3人での会話を楽しみながらじっくりと朝食を味わう。


 さあ、楽しい朝食も終わり。食後のお楽しみの時間だ。格納庫に移動してそれぞれの機体に乗り込む。シミュレーターモードを起動。


「2人の力を合わせた全力がみたいの。私も全力で戦うから」


「ひゃっ、お、お手柔らかにお願いします」


 通信越しにメイリアが少し怯えた声を出す。ふふ、可愛いんだから。


 戦域は小惑星帯。ハイブースト装備の2人にとって不利なエリアのはず。なのにここがいいと言ってきたのはフィアだ。


「ハイブーストの練習にちょうどいいかな、と」


 あっちは真面目な訓練のつもり。一方、こっちは憂さ晴らし……。ちょっと申し訳なくなる。ちゃんとやろう。

 姿勢を正して気持ちを入れ替えもう一度言う。


「全力で行くよ」


 出撃(スタート)の合図。モニターに精巧なCG映像が映し出される。機体の加速や動きに合わせてパイロットスーツの耐G機能で体が締め付けられたり、操縦桿が重くなったりで、操縦時にかかるGを再現している。完全再現とはいかないけれど、これがなかなか本来の操縦と近い感覚を再現している。


 相手の出撃地点及び武装は不明。小惑星帯の中に入り、まずは索敵。さて、中を突っ切って来るか、迂回してくるか。

 見えた。小惑星を器用に避けながら青白い光の軌跡が走っている。私の方には向かってきてないから、まだ補足されて無さそうだ。小惑星、というか漂う岩に隠れながら進路上へと先回り。岩の陰に隠れながら息を殺してライフルを構えて待つ。

 

 カスタマイズされたクーリアが通過する。しかし、こちらに2丁のピストルマシンガンを向けている。バレていたか。流石、目が多いと厄介なものだ。だけど、そうこなくちゃ。

 すぐに岩の後ろへと隠れる。ビームの嵐が岩を削っていく。そのビームの入射角が変わってきている。撃ちながら回り込もうとしているか。岩を蹴り、初速をつけて陰から飛び出る。ふふ、反応が遅れたな。ライフルを撃つ。ハイブーストを使った急速旋回。初弾は躱されたが、そのまま追撃。岩陰に隠れたと思ったら、岩がこちらに向かってくる。まさか押しているのか?ハイブーストの推力なら可能か。狙いは……近接戦闘か。いいよ、メイリア。受けて立ってあげる。


 ライフルを左手に持ち、右手でソードを持つ。迫る岩の裏へと回り込む。いないっ!?まさか、岩陰から離脱すればわかる見えるように位置取りをしていた。見逃すはずがない。

 来る。直感が告げた。そうか、私が回り込むタイミングで反対方向へ回り込んだのか。フィアによる観測と移動の痕跡を残さない精密な機体操作で可能にしたか。

 移動する岩にしがみついているのだろう。片腕を陰から出してピストルマシンガンを撃ってきた。ギリギリ回避。近くに盾になるような岩は無い。今は避けるしかない。腕を回避運動に使っているからライフルで狙えない。こういう時は固定機銃だ。機体を捻り、宙返りしながらピストルマシンガンの照準が合ったタイミングで撃ち込む。

 腕を引っ込めるかと思いきや岩から離れ、機銃を体で受けながら両手で撃ってきた。

 これはどっちの発想だろう。メイリアかな?面白い。もともと奇抜で柔軟な戦い方をするメイリアにフィアの観測データに基づいた思考が加わる事で上手く噛み合った戦法が生まれている。朝のホットケーキとコーヒーのようだ。

 

 なんて、感慨にふけっている場合じゃない。じわじわと近づいてくる。この距離では埒が明かないと気づいたかな。確かに脅威を感じる戦い方だけど、根本的な実力がまだ足りない。

 これはフィアの射撃だろう。メイリアに比べれば数段上手い。一般パイロットレベルなら上位に入るだろう。だが、経験の差だろうか、読みが浅い。偏差射撃は出来ているが、こちらがそれを読んでいる事を想定してなさそうだ。向こうの読みを崩す事に専念すれば、まず当たらない。とは言え、ピストルマシンガン2丁の弾幕を前にすると回避行動で文字通り攻撃の手が塞がれてしまう。


 こちらの大振りな宙返りのタイミングで右手でダガーを取り、一直線に突きを仕掛けてきた。ハイブーストのフルパワーかな。速い。

 受ける体勢が整わないので機体を左に捻り、躱す。プラズマブレイドが展開される。腕全体を刃物として突き出した腕を振るってくる。

 ライフルを手放し、左手で振るわれる手首を抑えて動きを一瞬止め、ソードで腕を切断。

 怯まず足のブレイドで斬りかかってくる。切断した腕を左手で持った状態で斬りかかる太腿の横っ面に叩きつけて、軌道を逸らす。

機体を掠めた足もソードで切断。


 あんまり痛ぶるのは好きじゃない。これで終わりにしよう。コックピットへ向けてソードの突きを繰り出す。


「へぇ、面白い」


 思わず声に出してしまった。残った左手、その掌のプラズマパイルで刀身を消し飛ばした。ほぼ同時に膝蹴りでソードを持った右手を跳ね上げてきた。ちょっと油断したかな。上体を反らして宙返りしながら手放したライフルを手に取る。こちらを掴もうと手を伸ばした右手、から少し照準をズラしてコックピットに向けてトドメの一撃を発射した。




「うわーっん、途中まではいい感じだったのにー」


「まるで心を読まれているかのようだった……。うぅ、恐ろしい」


「いやー、いい勝負を見せてもらったぜぇ、なぁみんな!」


 いつの間にか格納庫のモニターで戦闘の様子が映し出されていて、そこに人集りができていたようだ。酒瓶やらグラスを持った人達がスポーツ観戦後の様に熱気を放ちながら騒いでいる。


「まぁ、みんなシシちゃんに賭けたから賭けは成立しなかったんだがな〜」


「ひどいや!うあ〜ん」


「それほどまでに誰が見ても分かる実力差があるって事か。まだまだ訓練あるのみだな、メイリア」


「ふぅ。2人とも、今日はありがとう。スッキリしたよ」


「「スッキリ??」」


「あ、いや。2人を痛めつけたかったとかそういうわけじゃなくて、最近の2人の仲の良さ、じゃなくて、活躍を見てて実力を試したくなってここ数日モヤモヤしてたから今日はちょっとお願いしてみたんだ。うんそうそう。ちゃんと真面目にやったよ」


 気を紛らすために近くにあったコップを飲み干す。メイリアとフィアがヒソヒソと話している。


「急に饒舌になってちょっと怪しいね。もしかして何か嫌な事あってその憂さ晴らし?」 


「いや、そんな事する人か?実力を確かめたかったのは本当なんじゃないか?」


 2人の言葉がグサグサと心に刺さる。さらに近くのコップを飲み干す。……あれ、視界が。


「おい、シシ!何飲んだ!誰だーっ、シシの近くに酒置いたの!」


 隊長の声が聞こえる。頭に響くから黙ってて。ああ、理性が遠のく……。


「シシハナさん、なんだか目つきが危なく怪しく……。ひぃ〜、襲わないで〜」

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