11-5
今、戦域ではラハラ達が戦っている。ワトチームと交代してハロンナに帰還後、格納庫で整備班と打ち合わせをしながら、わずかな休息を取っていた時だった。アンペアユ機の被撃墜の報告。次いでワト機の被撃墜の報告。その報告を聞くなり、そのまま機体に乗り込み、戦域へと戻って行ったのである。
「うそっ、ワトさん、アンペアユさんが……」
メイリアを起こしてこの重く辛い報告を伝えた。すぐにベッドから降り、携帯を掴んで廊下へと飛び出るメイリア。だが、そこで動きが止まる。
唇を噛み締め必死に涙を堪えているアンビーといつもとは違う険しい表情のルナンが扉の前にいたのだ。
「メーちゃん、格納庫に、集合して!」
アンビーが絞り出すような、でも力のこもった声で命令を伝える。それに頷いて答えるメイリア。3人で格納庫へと向かい始める。
「あとちょっとだったの。あとちょっとでこの状況を打開できそうだったの!」
「アンビーちゃん……」
向かいながら堪えきれずにアンビーの口から言葉が出てきて、俯いて足が止まる。
「艦長ちゃん、まだ終わってない。独りにならないで、まだみんないる」
緊張や疲労から視野と思考が狭まり、まるで孤独の中にいるかのような状況。この機械の体では無縁の感覚だが、人間だった頃の記憶で覚えがある。アンビーはその状況にあるのだろう。アンビーだけではないはずだ。艦内に漂う疲労感がそういう雰囲気を作り出している。
「アンビー、ワト隊長達の意志を俺達が継がなければ。なんとしてもニクトゲンを守り抜こう。そのためにも、その打開策って奴を教えてくれないか?俺達に手伝える事はないか?」
そんな時、どうすればいいのか。休息を取るのが一番かもしれないが、それが無理なら、単純な事だが独りでは無いと気づいてもらい、自ら気持ちを奮い立たせてもらう。
「そうだよ、アンビーちゃん!みんなで進もう!隊長とシシハナさんを助けて、ニクトゲンの人達をドミトリアに送り届けて、カルコゲンの人達の仇も取って!やる事いっぱいあるよ!」
頷き、食いしばるように前を向いてまた進み始めた。
アンビーを鼓舞する事でメイリア自身にも気持ちが入ったみたいだ。
打開策の説明を聞きながら格納庫につくと、ヨルカ代表がニクトゲンの整備班を連れて輸送機からALOFのパーツを運び出していた。
代表が俺達を見て何か言いかけたが、顔を見て安心した様に口を閉じた。
「こいつを使ってやってくれ、あいつらの為にも」
ニクトゲンの整備長が辛さを堪えて傍らのパーツを撫でる。クーリアの肩とも言えるプラズマ制御機だ。所々にあるキズが新品ではなく使い古しのパーツである事を物語っている。だが、ピカピカに磨かれていて、しっかりと整備されている事が伝わる。きっとワト隊の予備パーツとして長年一緒に戦っていたのだろう。
「ラハラ達は戦い詰めだ!俺達も泣き言は言わねぇで急いで取り付けるぞ!」
ハロンナの整備長が激を飛ばすと、それに応える地鳴りのような声が響き渡った。
「ふーっ、ひとまず安心かな。アンちゃん、作戦会議よ。あんた達の出番はもう少し先。そこで気持ちを高めてなさい」
格納庫内に設置された簡易的な休憩所。アンビーと食堂スタッフが用意してくれたお菓子や軽食がいっぱい残っていた。最初はみんなで貪る様に食べていたのだが、みんなの余裕がなくなるに連れて減りが遅くなっていた。
「んぐんぐ、美味しいなぁ!食べないと力出ないもんね!」
「やっぱり食いしん坊。でも、そうだね。気持ちがこもってる」
「あのさ、その、さっきはありがとう……ルナン」
「……えっ?」
ルナンがいつでも眠たげな目を見開ききょとんとする。
「アンビーちゃんを励ましてくれて。私も励まされたよ」
「わ、私、だいたい独りだから。独りの時の気持ちの持ち直し方はよくわかる。孤独を感じても、私にはヨルがいる。近くにいなくてもヨルが生きている限り私は終わらない」
照れて目線を泳がせ、もじもじしながらぽつぽつと語る。そんな仕草を微笑みながら見つめてメイリアが言う。
「ふふっ、カワイイ所あるじゃん!」
「生意気。私の方が年上だよ……メイリア」
「えっ、嘘っ!」
「そうだ、ずっと気になってたんだがルナンは何歳なんだ?オールドネーム持ちって事は二十代半ば……」
「もーっ!フィア、デリカシー!」
「うぅ……ゴメン」
「あはは、私、今18歳。小さい頃にヨルに拾われて、ヨルの力になりたいと思って、頼み込んで10歳からALOFに乗せてもらってる」
「それで早いうちから戦場にいたのか。存在がはっきりしてなかったのも代表の私兵みたいなものだったから、というわけか」
機体の通信が最前線にいるラハラの声を騒がしく届けた。
『くそっ!シシ落ち着け!理性を保て!』
『あぁぁぁ!邪魔だ消えろ消えろ消えろぉ!』
「まさかシシハナさん!?」
「どうしたのフィア!?」
「お姉さん、何かあったの?」
「バーサク病が発症したかもしれない」
代表が慌ててやってくる。
「大変よ!!って、知ってるみたいね。機体の準備は概ね出来た。あとは細かい調整をして出撃!」
「「了解!」」
「んっ!」
休憩所を飛び出し、それぞれの機体へと走る。俺達の機体だけでなく、ルナンの機体も所々手が加えられている。
メイリアがコックピットに乗り込み、準備を整える。
「行こう、フィア」
「ああ、各部、オールグリーン。だが、新装備の調整に少し時間をくれ」
ルナン機の準備が整ったため、先に出撃する事となった。ルナンが代表と話している通信が聞こえてくる。
「ねぇ、ヨル。聞こえてる?」
「どうしたのルナン?」
「仲間っていいね」
「ふふ、だからいつも言ってるじゃない。もっと世界と触れ合いなさいって」
「うん、今度からそうする。……ヨル、行ってくるね」
「うん、気をつけるのよ」
「んっ。ルナン、クーリア・スターマイン、出るね」
ルナン機がカタパルトで射出されていく。次は俺達の番だ。
「準備完了だ!今度はシシハナさんが孤独に呑まれそうになっている。俺たちの手で助け出そう!」
「そうだね。シシハナさん、すぐ行くから待っててね!メイリア&フィア!」
「クーリア・フェザーウィルエレクトロ」
「行ってきます!」




