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「みんな、おかえり〜」
「あんた達、たいした戦果だよ!代表としても鼻が高いわ!」
ハロンナに戻ると格納庫でアンビーとヨルカ代表が出迎えてくれた。
「で、お疲れの所悪いけど今後の作戦会議よ」
ルナンの首根っこを掴んで逃さないようにしながら代表が歩き出す。その後ろをラハラ隊の皆が黙ってついていく。その皆の姿からは緊張や疲弊が見て取れる。アウターローバの新型機、アッシュレッグの脅威、そして迫りくる新たな6隻もの戦艦。無理もない話だ。
ブリーフィングルームにつくとモニターにニクトゲンのブリーフィングルームが映し出されていた。ニクトゲンのブリーフィングルームにいるのは3人。
真っ黒なサングラス、剃り込みの入った短髪でしかめっ面な中年男性。ショートカットだが、右側のもみあげだけ肩まで伸ばしている気の強そうな女性。そして、アフロな髪からもふもふな耳が飛び出ている真面目そうな犬の獣人男性である。
「ニクトの皆、待たせたわね。さて、状況の整理から始めるわ。現在、アウターローバの艦隊は15の宙域で確認されている。4部の受け持ち宙域のだいたい3分の1ね。艦の総数は39隻」
「総数39隻って事は4隻で1艦隊ってわけではないんですね」
「そう!フィアちゃんの言う通り、辺境の宙域はだいたい3隻もしくは2隻。ここからわかる事はアウターローバはこっち、クェルツ星団の地理に疎いって事ね」
「ん?そうなるんですか?」
「メイちゃん、もしあんたが39隻もの戦艦を持ってて敵の拠点もわかってる状況で、広域に展開している哨戒艦を突破して目的地まで一直線に行きたかったらどう戦力を使う?」
「一点突破ですね。あ、なるほど。逆に目的地もわからないのに一点突破しても、その後迷子になっている所を他の哨戒艦に包囲されちゃいますもんね」
哨戒艦が広域に展開している事はこれまでの活動で調べがついているだろう。そして、その哨戒の手が戦艦1隻である事もだ。ならば戦力を分散させて強襲、殲滅してから準備を整えて探索を始める方が得策、というわけか。
代表がメイリアの発言に満足気に頷いて続きを話し始める。
「残念ながらアウターローバの強襲は成功したと言っていいでしょうね。今頃は皆が哨戒していた宙域にアウターローバの前線基地が建設されているかもね。でも、あいつらがこの私達を放って探索に行かないのも、そういう後方部隊を守るためと考えられるわ。ビーチェ星がまだ戦火に包まれていないのも、皆が踏ん張ってくれているおかげね。中継基地群に防衛網を作り終えるまでもうひと踏ん張り、お願いするわ」
「ふー、全く、近頃の星団は騒がしいな」
グラサン男が低い疲れた声で言う。この声はデスト艦長か。
「ええ、全くその通りね、艦長」
「なあ、ワト。ボルツはいないのか?」
デスト艦長の意見に同意した女性、ワトに対してラハラが聞く。答えはわかっているけど聞かずにはいられない、そんな感じだった。
「はぁ……、私の部隊は今やアンペアユと私の2人だけよ」
「ボルツ機はアッシュレッグに斬り裂かれたよ」
犬の獣人、アンペアユが悲しそうに言う。少しの間、ブリーフィングルームが静寂に包まれる。
「しかしまぁ、アンビー嬢が艦長か。次世代艦長といった感じで頼もしいじゃないか。今後どうやって踏ん張るのか、作戦について考えを聞いてもいいかね?」
デスト艦長が話題を変えるようにアンビーに話を振る。嫌味な感じはなく、純粋にアンビーの能力に期待しているようだった。
「そうですねぇ〜。2人ペアを3チーム作って交代で足止めしましょう」
「アンビー、敵は8隻の戦艦だよ。2人でどうにかなる?」
シシハナさんが驚いたように聞いた。
「うん、まともに戦わなくてもいいの〜。後方に更に4機いる事とこっちの戦艦の主砲をチラつかせて足を鈍らせるの。主砲が撃てるようになったらどんどん使っていくよ〜」
結局、アンビーの作戦が採用された。常に一定速で後退しながら、ハロンナとニクトゲンの主砲が撃てるようになり次第使っていく。
主砲は1度撃ったらジェネレータのメンテとチャージが必要なため、連続使用は出来ない。そのための時間稼ぎの2機と思わせる事が重要だ。もし強行突破しようとしてくるなら作戦は第2段階へと移る。
この速度で後退すれば、ドミトリアに到着するのはおおよそ5日後。それだけあれば迎撃準備が整うだろう、との事だ。
作戦のための3チームのペアが作成された。
ラハラ、シシハナ
ワト、アンペアユ
メイリア、ルナン
の、3チームである。
「たぬきちゃん、守ってあげる。フィア頑張ろうね」
「むきーーっ!誰かペア変わってぇー!」
会議が終わった後のブリーフィングルームでメイリアが騒いでいる。
「ははっ、メイとルナ、なかなかいいコンビになると思うぞ。フィー、こいつらを頼んだ。さて、行くとするか、シシ」
「ええ、隊長。みんな、行ってくるよ」
こうして長い5日間が幕を開けた。




