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転生したと思ったらロボットの戦闘支援AIになっていました 〜量産機だけど美少女パイロットとこの先生き残るためにエースを狙います!〜  作者: 夕暮れタコス
第10話 1人と1基

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10-3

「当艦、ハロンナは準備が出来次第、高速航路を使って戦域に向かいます」


 アンビーがヘッドセット越しにそう告げた。ざわめいていた格納庫の空気が一変して張り詰めたものとなった。


「それと……公式発表はまだなんですが、イナリハ艦長がドミトリアの司令に就任します」


 張り詰めた雰囲気の中、またざわめきが起こる。


「そして……艦長にはイナリハ前艦長の推薦により、私、アンビー・チャットが就任する事となりました」


 一瞬静まり返る格納庫。しかし、数秒後に拍手喝采が起こった。


「アンビーちゃん、凄い!」


「イナの愛弟子だ。不足は無いな」


「流石。だけど艦長としての初任務が相当ヘビーな物になりそうだね」


 拍手が鳴り止まぬ中、今度はヨルカ代表が登壇して発言する。


「続けてなんだけど、この私、第4部代表、ヨルカと護衛官のルナンが今回の任務には同伴する。理由はお察しの通りフィアの監視よ。ただ、それどころじゃ無くなってきたわ。一同、世間の目や内ゲバは一旦忘れなさい。今は我々の後方にいる何億という人々を守る為に最善を尽くす事に頭を使いなさい。私からは以上」


 その場にいた皆の士気が高まるのを感じた。またアンビーが登壇する。先程はこんな風に思わなかったが、代表の自信溢れる顔と態度を見た後だと、いつもより表情が硬く、余裕が無さそうな雰囲気が漂っているように見えてしまった。


「皆さんには十分な休養も取らせてあげられないままで申し訳なく思います。ですが、一刻も早く出港できるように準備をお願いします。招集に間に合わない人もいるとは思いますが、どうか責めないであげて下さい」


 優しー、やら、あたりまえだー、という声援が飛んでくる。だが、耳に入って無さそうだ。

 

「それでは解散して仕事に取り掛かりましょう」




「ぶはぁぁ〜、緊張したよぉ〜」


「いつの間にか凄い事になってたね、アンビーちゃん」


「立派だったよ、アンビー」


 乗員の皆が解散した後、格納庫の端っこでアンビーがうずくまっていたのでメイリアとシシハナさんが心配して声をかけに近寄ったのだ。

 

「ちゃんと録音しておいたからな」


 何か声を掛けてあげたくて出てきた言葉がこれであった。我ながら情けない。


「こらこら、艦長がそんな所で油売ってたらダメでしょ。とりあえず艦長室で休んできなさいよ」


 ヨルカ代表が近づいてきてしっしっと手で払う素振りをしながら言った。


「艦長になったらみんなと今まで通りに過ごせないのかなぁ……」


 そう言いながら暗い顔で格納庫の出口へと1人歩き出すアンビーを3人が見守る。

 

「……それはあなた次第ね、アンビー」


 そう呟いて代表も格納庫から出て行く。残されたメイリアとシシハナさんがより一層心配そうに顔を見合わせた。


「準備……しよっか」


「そうですね……」


 目まぐるしく変わる状況が人間模様も変化させようとしていた。


 

 それから3日後の昼前、準備が整った事と出発の時間をアンビーが放送で告げた。

 その日の朝、ちょうどカスタムパーツの取り付けが完了したため、急いで宇宙に出て調整テストに入る。


「フィア、どう?時間がないから早くね!」


「ぐぅぅ…、無茶言うなっ!これでやっと出力25%。実戦で使うにはここが限界か…!あっしまっ!!」


「きゃあっっ!……っっはぁはぁ」


 気を抜いた瞬間、機体が高速でキリモミ機動を行いメイリアが失神しかけた。これは、とんでもないじゃじゃ馬だ。ハイブーストの制御が可愛く思えてくる。今回はぶっつけ本番じゃなくて本当によかった。


「すまない、大丈夫か?この後の事もある。今日の所はこのくらいにしておこう」


 背中から生えている様な()()を畳み、港へと向かう。


「うん、大丈夫。ごめんね、私が急かしちゃったからだね」


「実際、大事な用事だよ。急がなきゃな」


 ハロンナに戻ると艦内は静まり返っていた。メイリアは慌てて自室に戻り、仕度を済ませ、携帯を握り締め艦長室へと向かう。その間に俺は機体を外に出しておく。携帯に音声メッセージが届いたのでそれをメイリアに伝える。


「メイリア、準備は整っている、との事だ。早く主役を連れて来いとみんなが騒いでるらしいぞ」


「やばっ、アンビーちゃんに会うだけなのになんか緊張してきた」


 そう小声で言いながらドアをノック。中からどうぞぉ〜、と声がしてドアが開く。以前となんら配置の変わらない部屋へと一歩入り、デスクでキーボードを叩いているアンビーに向けてメイリアが言った。


「アンビーちゃん、ちょっと話しがあるの。とっても大事な話しなんだ。ついてきてもらっていいかな?」


「ん??ここじゃだめなのぉ?わぁ、ちょっと!?」


 素直に応じなさそうなアンビーの手をぐいっと引っ張り部屋から連れ出すメイリア。そのまま近くの乗船用出入口まで引っ張っていき、片手で扉を開けながら外に向けてそっとアンビーの背中を押す。


 アンビーの姿が扉から現れたのを確認。合図を出す。外で整列して待機していた乗員達が一斉に拍手をして出迎える。


「え?え?なんなのぉ?」


「こんな事をしてる場合じゃないのはみんなわかってるの。でもこんな時だからこそ、アンビーちゃんの笑顔が見たくなっちゃったんだよ」


 アンビーが大粒の涙を流し始める。



「準備はいいですか?」

 

「いつでもいいぞ。ふふ、柄にもなく緊張してしまうな」


 整列する乗員の後ろに待機させておいた俺達の機体。コックピットへ手を伸ばし、中から出てきた人を掌に乗せて腕を伸ばし、アンビーの元へと送り届ける。


「突然の就任で驚かせてしまったな。タイミングとしても最悪だ。君がカルコゲンの事でとても心を痛めている事もわかっている」


「うっうっ…、みんなを同じ目に合わせてしまわないか不安で……艦長、私どうすればいいんですかぁ?」


「艦長は君だよ、アンビー。私ができる限りの事は教えた。後は君が考え、答えを出し、納得を得てからこの素晴らしい乗員達を先導すればいい」


 俺が送り届けた人、イナリハ前艦長がとても優しい顔でアンビーの頭をぽんぽんと叩く。そのまま皆が黙って見守り、少しの時間が過ぎた。

 覚悟が決まったようにアンビーが乗員達の方へ向き直る。涙は止まり、表情には強い意志が感じられる。


「今、前線で戦っている仲間、ニクトゲンのみんなを一刻も早く助けたいです!みなさん、力を貸してください!」


 雄叫びにも似た歓声が上がる。その立ち昇る熱気を浴びながらいつものように、にっこりと微笑むアンビーだった。

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