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「メイリア、落ち着いて俺の話を聞いてくれ」
今までのAI口調とは明らかに違う話し方。それを聞いたメイリアは目を見開いて驚いたが、冷静さは失わなかった。
「フィア……なんだよね?あなたはいったい何者?普通のAIじゃないよね?」
「ああ、元々は普通の人間だった。俺にもよくわからないけど、死んだと思ったらこの機体のAIになっていたんだ」
話しの途中で金角の刀の突きが右肩をかすめた。
「っ!話しは後にして今は……」
「ふふっ、何それ。でもそうだね!今は力を合わせて生き残ろう、フィア!」
そう言ってメイリアが操縦桿を力強く握った。パニックになったらどうしようと思ってたけど、意外とすんなり受け入れてくれた。……そう、受け入れられたんだ。その事実が俺をさらに奮い立たせた。この子を護るんだ!
「フィアは敵の攻撃を避ける事に集中して!相手の隙を突いて私が反撃する!」
反撃と言ったって残ってる武装はダガーと鎖骨部にある2門の固定機銃だけ。リーチの短いダガーで2機を相手にするのはリスクが高いし、機銃じゃ大したダメージを与えられない。でも何か策があるんだろうね。そんな不敵な顔をしている。
「左下腕スラスターの外部バイパス切り替え準備しておいて。大丈夫?出来る?」
「これか?ああ、なるほど、こういうシステムもあるのか。造作もない、まかせろ!」
敵機の連係攻撃がより激しさを増してくる。仲間の到着まであと2分ほど。このまま回避に徹していてもそれまでに追い詰められる。だからこその反撃だ。そう簡単に仕留められないとわからせてやる!
「金角に比べて赤角の攻撃は大振りなうえ、正確さに欠ける。赤角の攻撃をぎりぎりで避けるからそこを狙うんだ」
「オーケー、フィア!」
金角が仕掛けてきた。本当にこいつの攻撃は正確無比で、コックピットや関節部などを的確に狙ってくる。避けるだけで精一杯だ。
だが今回は多少のダメージ覚悟でこいつを足止めする必要がある。
刀が振り下ろされる。機体を捻り、最小限の動きで躱す。同時に腰部にマウントしてあるプラズマダガーに手を伸ばす。
危ない!刀の軌道が変わった!
さっきまで逃げに徹していたのに急に立ち向かう姿勢を見せた。それで何か企んでると勘付かれたかも!?
即座に上半身を捻り仰け反らせる。右肩装甲をざっくりと切り落とされた。あと少し遅かったら右腕を落とされていた。金角はやはり技量が高い。
だが、今の狙いは赤角だ。構わず機銃を金角の頭部に向けて掃射、しながら距離をとる。さらにダガーを手に取り、金角の胸部に目掛けて投擲。
金角はすぐさま盾を構えたため、ダガーは弾かれ、機銃がわずかに当たっただけ。ほとんどノーダメージだ。
しかし、赤角は先程までの流れと同じように後方から斧を構えて突進して来ていた。狙い通りだ。
相手の速度、自分の状態を考慮しながら躱せる限界まで金角との攻防による隙を装いつつ引き付ける。
「メイリア、今だ!」
体を捻り反転しつつ宙返りするようにして赤角の攻撃を躱す。
「左腕ブレイド展開!」
メイリアの発声と共に左腕のスラスターから青白いプラズマの刃を作り出す。
――本来は推進用の機関であるが、その原理はプラズマ利用溶断刃部発生機関、つまりプラズマブレードの基礎にもなっている。そのためパイバス及びプラズマの整流化調整と出力制御によりスラスターユニットを即座にブレイド発生機へと置換する事が可能である――
先程のメイリアのバイパス切り替えの指令と共に流れ込んできた、いや機体データから浮かび上がってき情報だ。
鮮やかな青白い光で相手の、斧を持っている右腕を宙返りざまに切断した。
赤角がこちらの思惑に気づいて盾で受けようと、機体を回転させた時にはもう遅かった。回転する機体に切断され赤鉄した右腕が当たり、弾かれる。
出来るなら事なら主要機関を狙いたかったが機体の角度と速度、攻撃後の回避行動を考えると難しかった。
赤角がスラスターを全開で吹かして急制動をかけながら身を翻す。左腕に持っていた盾を投げ捨てて、腰にマウントしたショットガンに手をかけた。
「はぁぁぁ!」
メイリアが追い打ちをかけようと前進する。
「待て!金角が狙っている!」
強制的に操縦権を奪取。こちらも急制動からの後退。
敵機2機もそう甘くなく、怯む事なく、すぐにそれぞれの銃口をこちらに向けてきた。
この距離でこの2門から逃げ切るのは不可能だ。左腕の小型盾を構え、致命傷を負わないように回避を努力しながら仲間の到着を待つしかない。
敵の射撃が始まる。後退しながら回避行動。しかし、左脚、頭部右メインセンサーアイ、盾、右肩に敵弾命中。損傷又は損壊。
プラズマ制御機である肩ユニットが損傷した事で右腕スラスターの性能低下。さらに左脚の損壊により運動性能が大幅低減。
……絶対絶命だ。
だがそこに一筋の青白い光が敵機に向かって降りてきた。




