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「いや〜、危なかった〜。アインズもなかなかやるわね!」
会議も終わり、ルーデルさん、ヨルカ代表と共にみんなが待っていた格納庫に集まっている。何故か技術部お手製端末を手に持っているヨルカ代表が会議の様子をみんなに伝えている所だ。
結果的に俺の処遇は保護観察に近いものとなった。
前線で戦力として活用しつつ、思考プロトコルのデータを収集。戦いに敗れれば死。怪しい動きをすれば廃棄。
ヨルカ代表の提案はそういうものだった。もちろん一悶着あったが、これはこれで各代表の意見が取り入れられている、という点を強調する事で押し切ったのだった。
今まで通りと言えばそうなのだが、2つ違う点がある。
ひとつはヨルカ代表が監視役としてハロンナに乗船する事。監視役がヨルカ代表な事にアインズは噛み付いていたが他に適任者もいないので決定となった。
「フィアちゃんの事は気に入ってるけど、監視についてはキッチリやらせてもらうからね〜。これは代表としての責任!忖度はしないからよろしく〜」
会議の後にこう言っていた。会議の態度も見るに普段はあんなでも仕事はきっちりやるタイプなのだろう。まあ、やましい事があるわけじゃないから俺としてはそんなに気にならない。
今までと違う点、2つ目。会議の中でさらっと明かされたのだが、アウターローバの活動が活発化しているとの事。この1ヶ月近くの間に発見及び戦闘報告が倍近くに増えているそうだ。代表が戦力として俺を欲しがったのもそういう背景含めての事だろう。
それに伴い、哨戒任務担当艦の疲弊が激しいので任務のサイクルが2ヶ月に短縮される事となった。
そして、今後は定期的に戦闘データを各代表が分析、手を抜いていると判断されれば即、審議にかけられる。他にもあれやこれやと主にアインズから条件が課されたが、さっきも言ったように俺にはやましい事は何もないので気にするほどの事では無かった。
ただメイリアと共にこの宇宙を守る為に戦うだけだ。
「つまり、協力者という立場は変わらないわけか。俺としてはフィーが同じ隊にいてくれるのはありがたい限りだ。またよろしく頼む」
「そうですね、引き続きよろしくね、フィア」
「良かったね〜、メーちゃん。フィアさん、メーちゃんをよろしくねぇ」
「でも結局またフィアを戦闘に巻き込む事になっちゃったね。それでも少しずつ前進してる!一緒に頑張ろう、フィア!」
「むしろ今回みんなを巻き込んでいるのは俺の方だけどな。身の潔白を証明するため、協力よろしく頼む」
「ふふ、いいチームじゃない!イナリハがあの危険な作戦に自信満々だったのも少し納得がいったわ」
「ありがとうございます、代表。ところで乗船は代表お一人ですか?」
「この私と護衛官のルナンが乗る事になるわ。あ、それと急かして悪いんだけど明後日にはドミトリアに向かいたいの。みんな準備しといてね〜」
「そっか、みんなとはお別れだね。短い間だったけど濃い日々だったなぁ」
「ランの言うとおりですね。ここ数日、騒がしかったけど楽しい時間も多かったです。アインズとハンタースの件は我々にお任せ下さい」
「あー。お取り込み中ちょっといいかな?」
ルーデルさんの後ろにいつの間にか人がいた。突然会話に割って入って来た声。会議で聞いた無気力なあの声だ。眠そうな目にダルそうな歩き方の犬の獣人。ボサボサ頭から飛び出た耳が垂れている。
「テクノラ代表!どうしたのですか?」
「それ」
ビックリして大きな声を上げたルーデルさんを半ば無視してヨルカ代表が手に持っているお手製端末を指差す。
「あぁ〜、すまん!つい持って帰ってきちゃった、わはは」
「白々しい、僕を誘き出すためでしょ?何か用?」
「ご明察!いやね、何で会議の時、この私の意見に加勢してくれたのかな、と思ってね〜。テクノラ君、普段そんな事しないよね?何か企んでる?ねえねえ?」
「あー。ヨルカが戦力として欲しいって言ったときのあれね。プロトコル収集がしたいってのは本当。あとアインズに僕の発言を利用された気がしたからちょっと邪魔したくなった」
真実を話したからそれ返してと言わんばかりに手を差し出す。顔色をうかがい、大人しく端末を返すヨルカ代表。嘘は無いと判断したのだろう。
「テクノラ代表。あなた個人としてはフィアの誕生の事をどう考えているのですか?」
「AIの事?転生して人格が宿った、ね。そもそもこの型のAIは人の神経回路を模して作られた。でも人格を得るには至っていない。何が足りないのかは分からない」
言葉が途切れる。メイリアがぽかんとした顔で聞く。
「え、つまりどういう事ですか?」
「僕にも分からないって事。超常的自然発生の理由をこじつけるなら、魂という奴は電磁波の集合体で、その電磁波が回路に乗っかって上手く繋がった、とかかね。まぁ今適当に考えた理由だから忘れて」
そう言いながら出口に向かって歩き始めたが、立ち止まる。また新たな人が現れたのだ。
「あれ、代表が3人も集まってどうしたのですか?」
ハキハキとしたよく通る声。確かラブラリイ代表。立派なスカートスーツを着こなし、ウェーブのかかった艷やかな長い髪を左側で纏めて肩の前に垂らしている。エルフ耳が見えるのでエルフィン人だろう。
僕行くね、と言って再び歩き出すテクノラ代表を呼び止め、またこちらへ向き直る。
「会議お疲れ様でした。フィアさん、発言の機会を与えられず申し訳ありませんでした」
「気にしないで下さい。下手に発言しない方がいい気がしましたから」
「そうですね。下手に発言していたらアインズに手玉に取られてたわ。ラブラ、いい判断でしたよ」
ルーデルさんに褒められ、ラブラリイ代表が嬉しそうにハニカム。
「改めて思ったけど〜、アインズは扇動のプロだよね〜。ペースに乗せられそうになったのがちょっとムカつく」
「そうですね、気がついたらあの人の意見にばかり気が向いてました。ヨルカちゃんの発言がなかったら一方的な会議になりかねなかったですね。あ、それでですね。ルーデルさんに頼まれていた事、調べました」
「シシハナさんのメールの件ですね」
「はい、そうです。確かに検閲プログラムに引っかかっていました。ただ、ちょっと気になる点がありまして、ちょうどテクノラ君も関係するので残って貰ったのですが」
何故か少し間を開ける。代表達による会話に萎縮して参加出来ずにいるラハラ達が何事かと顔を見合わせる。
「勝手ながら検閲を通すために文面を確認させて頂きました。AIの文字が検閲に引っかかったみたいです。ですが、少々基準が厳しすぎると思い調べてみたらですね。なんと、ラシュメール家がいつの間にか最重要機密リストに登録されていたのです」
「私の家が最重要機密……?」
シシハナさんが呆気にとられ、言葉を溢した。




