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転生したと思ったらロボットの戦闘支援AIになっていました 〜量産機だけど美少女パイロットとこの先生き残るためにエースを狙います!〜  作者: 夕暮れタコス
第8話 海と約束

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8-5

 楽しい時間はあっという間に過ぎるものだ。名残惜しさを感じつつ、会議の日の早朝に基地に戻ってきた。

 どこか張り詰めた空気の中、荷降ろしをしていると禿頭の中年男性が3人の男と共に近づいてきた。


「ふん、大事な会議の前日までバカンスとはいい気なものだな」


 高圧的で見下した感じの話し方である。


「あら、アインズ代表。護衛官の話、聞きましたわ。まさかハンタースに組する者だったなんて、さぞショックだったでしょうに」


 本来なら4人いるはずの3人の護衛官を見ながらルーデルさんが言った。声音に少しイラつきを感じる。


「代表として近くに置く者の身辺調査はしておくべきだよね〜。まさか他にもいたりして?あははは、ないよね〜」


 ヨルカ代表の煽りにチッと舌打ちをするアインズ。ルーデルさんが追い打ちをかける。


「その件については今度、監査部で詳しく調査させていただきますので、ご協力お願いしますわね」


「ふん、好きにするがいい。それより、そこにあるんだろ?噂のAIが。そんな不安要素なぞ、さっさと廃棄してしまえばいいものを」


 ふん、と鼻を鳴らして背を向ける。


「こんな所で言いあっても仕方ないな。話しの続きは会議で楽しむとしよう」


 そう言って去って行った。


「何しに来たんだろう?」


 荷物を持ってヨルカ代表の近くにいたメイリアが呟く。まったくの同感である。


「そう言えばヨルカ様の護衛官はいないんですか?」


「いるよ〜。人付き合いが苦手だからって離れた所で見守ってくれてるんだ」


 メイリアと一緒に辺りを見回したけどそんな人物の陰は見当たらなかった。


 会議は昼過ぎから。まだ時間があるように思えたが、気がつくとその時間がすぐそこに迫ってきていた。

 格納庫で張り詰めた面持ちでいるメイリア達に行ってくると言い、技術部が作ったという専用の端末にアクセスする。

 



 カメラが付いていないので周りの様子もわからない。スピーカーやマイクのオンオフも外部からの操作しか受けつけないみたいだ。

 

 まるで拘束された囚人の気分。


 しばらくすると周りの音が聞こえ始めた。聴き慣れないハキハキとした女性の声が始まりを告げる。


「こうして7人集まるのは久しぶりですね。さて、今回の議題はみなさん既にご存知の通り、新人類とも言えるAIの発見。我々クェルツ星団はこのAIを人類として迎え入れるのか、またはイレギュラーとして処理するのか、という所ですね」


 一瞬の沈黙が訪れる。その沈黙を破ったのは朝聞いたあの声だった。


「ふん、バカバカしいな。わざわざ招集をかけるほどの事ではないだろ。外界からの驚異だなんだと騒いでる連中がそんな不確定要素を受け入れる理由がわからん。やつらの密偵だったらどうするのだ?」


 アインズ代表。徹底的に俺を排除する方針みたいだ。


「一理ある。まずはそのAIが安全だという保証が無いことには受け入れる以前の問題だ。それにまだその1基だけなのだろう?今後も現れるかも分からない物のために代表会議を開くのは尚早ではなかろうか?」


 唸るような低い男声。彼も否定派のようだ。


「んー、彼はシーゲートを守ってくれた。それに戦闘報告書を見る限り、私としては味方だと思いますねぇ」


 のんびりとした男声だ。肯定意見が出てきてくれて安心した。


「ふん、密偵が敵意を露わにするわけがないだろ」


「では、反乱組織との戦闘に積極的に参戦した事はどうお考えになるのですか?」


 ようやく聞き慣れた声。ルーデルさんだ。


「確かに密偵なら内々の争いは歓迎する所ですね。参戦するだけなら体裁を保つためと言えますが、彼は幹部の撃退もしている。それも殺さずに捕まえていますね」


 最初の女声が加勢してくれた。


「それはパイロットの意思だったとも言えるのではないか?全行動をソレが行っているわけではあるまい。付け加えて、体裁を保つ、という言葉を借りれば全ての行動に納得がいくのではないか?」


「ふん、獣風情がいい事を言うじゃないか」


「ここは公的な場だ。わきまえよ!」


「まあまあ、落ち着きなさいよ二人共。この私としては彼は部下達を救ってくれた恩人なわけよ。もう少し敬意を払ってくれないかな?」


 ヨルカ代表だ。いつもとは違う落ち着き払った声だ。凄く頼もしく思える。


「ふん、ルーデル代表といいヨルカ代表といい、ついでにドライヤ代表もか?命を助けて貰っただの、仲間を救ってくれた、だの。すっかり(ほだ)されているではないか」


「そういう貴公は密偵という考えに捕われ過ぎているのではないか?ああ、失礼。偶然火薬を手にしただけの猿如きでは自らを省みることは不可能だな」


 ドンッとテーブルを叩く音がした。

 

「ツヴァイス、貴様、この場でアマナの民を侮辱するか」


「先に仕掛けてきたのは貴公だろうに。ああ、すまない、省みることは不可であったな」


 アインズが何かを言いかけた所でヨルカ代表が言葉を挟んだ。

 

「いい加減にしてくれない?話しを戻すけど、確かに私達は彼との接触の機会が多かった。けど代表とも在ろう者が密偵に絆されていると?それは代表として、この私達を選出してくれた者達への侮辱でもあるよ!?」


 最初は冷静さを保っていたが、言葉を重ねる毎に語気が強まるのを抑えきれなくなっている。だが、そこでルーデルさんが落着きを伝染させるかのように静かな声で発言する。


「我々、監査部としても、もちろん様々な観点で調査しているわ。けど外部との不審な通信も無く、行動履歴の改ざんも自我が宿った直後の僅かな物に限られる。その点に関しては情報部のラブラリイ代表の方が詳しいのではなくて?」


「まあ、ルーデル代表の言うとおりです。不審な通信は確かに無かったですね。けどアウターローバの技術で抜け道がある可能性も無くもないのですよね。我々が出来るのは、あくまで我々の技術を用いた情報のやり取りの統制です。アウターローバの濫觴(らんしょう)の船、あれを見つけた時の事を忘れてはないですよね?」


「んー、我々の技術とは似て異なる技術。確かに危機感を覚えるほど衝撃的でしたねぇ。あんな技術を持ってるなら我々の通信網をくぐり抜ける術があっても不思議ではないですなぁ」


「ふん、だからと言って連合軍の結成など騒ぎ立て過ぎたのだ。まあいい、先程からだんまりを決め込んでいる小童。お前はどうなんだ」


「あー?技術部としてはそりゃ興味深いですよ。うちらの意見を通してもらえるなら研究所に直送です。以上」


 無気力な抑揚の無い男の声だ。研究以外にこの場に興味の対象は無いと言っているように聞こえる。


「ああ、研究所送り。ふん、それなら密偵だとしても新人類だとしても後世に有益な情報が残せるな」


 待ってましたと言わんばかりの芝居がかった用意しておいたセリフみたいだった。

 方々から確かに、やら、落とし所としては有りか、という呟き声が聞こえてくる。これがアインズの書いたこの会議の筋書きか。否定派に傾いた所でこの技術部代表を使って流れを持っていく。技術部代表の感じからして、いつも研究一筋で発言が予測しやすいのだろう。

 

「ならば言わせて、私達4部も戦力として彼が欲しい!戦績は見たでしょ?」


「ふん、敵かもしれない物を最前線でつかうと?戦略戦術、さらには技術まで搾り取られて敵に寝返るに決まっている」


「あー。いいと思うよ。思考プロトコルの記録さえしてくれれば今後のAI開発に役立ちそう。むしろそっちの方が有益。それにさ、もしソレがアウターローバの寄越した密偵なら、きっと既にこの宇宙全域に蔓延っていると思うよ。今更密偵かどうかを解体して調べるよりはその戦闘能力を解析して今後に活かしたほうがいいね」


「確かにAIという形を取るならもっと隠密に活動できますよね。ウイルスか何かで変異するなら全域に広まっている可能性が高い。いやむしろ、そうするはずですよね。もしアウターローバがそこまでの技術力を持っているなら我々はとっくに掌握されて、支配されているでしょうね」


 最初の女声。ラブラリイ代表が考えを改めた様に発言した。さらに一瞬思考を挟んで続ける。


「ツヴァイス代表の言う通り、会議全体を通して密偵という考えに捕らわれすぎですね。行動履歴を見れば人の事を想える人格があるようにも……」


「ふん、危険度の高い想定をして話しを進める事は間違ってはいないだろう?それにさっきも言ったように行動など目的によっては欺くための手段になり得る」


「アインズ。貴公、このAIに恨みでもあるのではないか?発言の方向性が偏り過ぎだ。迎え入れる方向性を徹底的に排斥している節が見受けられるな」


「確かにそうですねぇ。絆されていると言われて、意見を控えて聴くに徹していましたが強引さも感じる論調ですなぁ」


「アインズ代表の言い分もわからなく無いけどね〜。とりあえずさ、彼の存在は皆が認知する所となったわけだし、各々彼に対するスタンスも決まってきた。だから今日の所はこの私の提案するこの結論でどう?」

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