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「わーい、海だー。やっと辿り着いたよぉ!」
水着を着て眩しい朝の海辺を走るメイリア。そう、念願の海である。
あの大規模テロから2日。昨日は昼過ぎまで街の修繕の手伝いをした。終わってから自由時間となったが、当然街に行く許可は出ない。メイリア達もこればっかりは仕方ないと自分達に言い聞かせて基地で待機している事に。しかし、そこに救いの手が差し伸べられたのだ。
「しかたない!このヨルカ様の家に招いてあげよう!プライベートビーチもあるぞ!」
こうして皆で急いで荷物をまとめ、わざわざALOFを運べる輸送機までチャーターして孤島にそびえ立つ超豪華な、このヨルカ邸にやってきたのである。
「はぁ、あんな戦いの後だと言うのに。まだ危険が無くなったわけじゃないのですよ」
日焼け防止の長袖Tシャツにサングラス、そしてビーチパラソルを持ったルーデルさんが溜息混じりに言った。
「でも基地より安全です。この孤島なら近づく者はすぐにわかる。迎撃もしやすい。余程の大軍でない限り負ける事はないでしょう」
サングラスを額に上げ、海パン姿でビーチチェアに座っている艦長がカラフルな飲み物を片手に言った。すっかり元気を取り戻し、いつもの調子に戻っている。
「会議まであと2日。それまでの間、基地で気を張り巡らせているよりはずっといい。ヨルカ代表に感謝だな」
海パン姿のラハラがBBQコンロで肉を焼きながらそう言い、透明なコップに入った小麦色の液体をグイッと口に流し入れた。
海辺ではメイリア、シシハナさん、アンビー、ランさん、そしてヨルカ代表がビーチバレー風の遊びをしている。その光景はいろんな意味で眩しい。
携帯が立て掛けられ置かれているレジャーシートに、焼けた肉を持ったラハラが座る。
「なぁ、フィー。どう思う?」
「な、何がだ」
言いたい事はよくわかるがその先は隊長としてどうなんだ……。やめるんだラハラ。
「あの中の誰が一番刺激的かと聞いているんだ!!」
やたらと力強く言い放った。
「もちろん、ランでしょう。大人の色気とは何なのか。それを身を以て示しているわ」
赤い液体が入ったオシャレなグラスを持って近づいてきたルーデルさんが言った。さすが私の護衛官と言って液体を流し込む。
確かに大人の魅力と言うならランさんだ。首から胸までを覆う白いハイネックビキニを着ている。肌の露出度では一番少ない。だが程よく豊かな胸元をメッシュによって見せつけてくる。さらに、足首まである紺色の腰布を巻いているが、動くたびに細くて綺麗な脚が見え隠れして視線を奪っていく。紺と綺羅びやかな肌のコントラストが美しさを強調させるのだ。随所に仕込まれる上品さのあるさり気ないアピール、それが大人を醸し出す。
「いいや、アンビーだ。彼女の持つ可能性が体現されている」
カラフルな飲み物から大きな氷が1つ入った琥珀色の飲み物に持ち替えた艦長がやってきた。クイッと口に含み、口内で転がしながらその味と香りを満喫している。
アンビーはフリルのたっぷり付いた青いビキニだ。一見子供っぽく見える。だが、細くくびれた腰つきやスラッと滑らかな手脚は大人のそれである。そして、なんと言ってもアクセサリーの使いこなしがアンビーの秘めた可能性を感じさせている。普段は付けていないイヤリングがボブカットの合間から日光を反射させて大人をアピールする。子供と大人、2つの可能性がぶつかり合いギャップという特異点を創り出している。
「ふっ、お二人さん、シシのあの肉体美が見えないのですか」
シシハナさんは首からぶら下げているかのように見える黒いビキニだ。あの中で一番豊満な胸。だがその下の腹筋は鍛え上げられている。いや、腹筋だけではなく全身がそうだ。だけど筋肉質で硬そうかと言うとそうでもない。鍛えた筋肉を柔らかで優しげな皮下脂肪で包み込んでいる。計算し尽くしたかのようなそのバランスは正に肉体美であろう。
確かにみんな刺激的で魅力的だ。だけどやっぱり……
「やっぱりメイリアですね」
それはまさにシンプルイズザベスト。シンプルな純白のビキニに肩にかかるストレートの黒髪。双方がまるで舞台照明かの様にメイリアの体を際立たせる。もはや言葉は不要。圧倒的な美の暴力がそこにある。
あーだこーだと言い争う酔っぱらいに向けてボールが飛んでくる。
「あんたら、このヨルカ様を忘れてない!?」
それは正に幼児体型。
「わっー!私の携帯にボール当てないで下さいよ!」
「なんだか許されざる感想が聴こえて来た」
遊びも一段落し、みんなでBBQを食べ始めた。
「ごめんね、フィア。私達ばかりたのひいおもいをひて」
「メイリア、喋ってる途中で食べるなんて行儀が悪いぞ」
「あはは、このお肉美味しくって止まらないんだもの。ってごめんね、フィアは食べられないのに」
「気にするな。俺の中から食欲というものは無くなったみたいだ」
実際、この体になってから実現不可能な欲は消え去っていた。
「ほんとフィアの体?頭?ってどうなってるんだろうね」
「ねえ、その事なんだけど」
シシハナさんが少し気まずそうに話しに入ってきた。
「ごめん、まだ父から返事が来ないの。もうとっくに来てもいいはずなのに」
「ああ、シシちゃんはラシュメール家のお嬢さんだったね。何?フィアちゃんの事でメールでもしたの?」
「だとしたら情報統制部の検閲に引っかかってる可能性が高いわね」
さらに2人の代表が興味を持ったようで話しに入ってくる。
「そもそも届いてないと?」
「たぶんね〜。ほら、ALOFのパーツ製造は機密じゃん?」
シシハナさんが少しホッとした顔をする。
「今度の会議で私から情報部に聞いてみます」
「ルーデル代表、ありがとうございます。よろしくお願いします」
深々と頭を下げるシシハナさん。親と仲が悪いような事を言っていたけど、返事が来ないのはやはりショックだったんだろうな。
食事も一段落し、各々またくつろぎ始めた。そんな時、今度は艦長が隣に座った。
「いよいよ明後日だな」
「そうですね。またみんなとこうやって騒げる結果になる事を祈るばかりです」
「ああ、私もそう願うよ。君の誠意によってこの短期間で2人の代表を味方につけたんだ。やれるさ」
「ルーデルさんからは公平に決めると言われちゃいましたけどね」
「ふふ、あの人もなかなか優しい人だよ」
ルーデルさんをチラリと見る。海辺に出てメイリアとアンビーがヨルカ様バンザイと本人を囲んで宗教じみた事をしているのを真剣な表情で眺めている。
「ヨルカ代表。さすがのカリスマね」
思ってたよりもお茶目な人なのは確かだ。




