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俺達がイワハ基地に着いた時には既にハロンナ組は到着していた。
軌道エレベーター「シーゲート」の、惑星を貫いているかのような巨大な柱がそびえる大都市アハロ。クェルツ星団有数のリゾート地でもあるこの都市、そのすぐ近くの人工島に広がるのがこのイワハ基地だ。
連合軍の本拠地というから相当巨大な基地かと思いきやそこまで大きくはなかった。
なんでも、アウターローバが本格的な侵攻を始めたらここを起点にして周辺宙域に大規模防衛網を敷く予定だとか。なので今は実際の所、本拠地(仮)である。
「メイリア、フィア!良かった!もうダメかと思ったよ」
「まったく、ハラハラさせやがって」
「ほんとだよ〜。エレベーター乗ってる間、気が気じゃなかったよぉ」
「ルーデル代表には感謝してもしきれないな」
「ご心配おかけしました。ルーデルさんも引き上げてくれたランさんもとってもステキな人達なんだよ!」
「みんなと無事に再会できて本当に良かった」
ハロンナ組との無事の再会を喜んだ後、休む間もなく艦長とアンビーはルーデルさんとの打ち合わせへ、ランさん含めたパイロット達は機体の陸戦仕様への変更とその調整テストに追われた。
いつまた襲撃があるかわからないので、最低限の準備はしておく必要があったのだ。
「私、陸戦仕様は苦手だなぁ。動きが固いんだもん」
「確かにこれは、宇宙とは別物の機体みたいだな」
ズシンズシン響かせながらも軽快に地面を蹴る。スラスターを吹かせば飛行はできないけど跳躍、滑空なら出来る。宇宙とは違った戦い方が求められるのは明白であった。
陸戦仕様は肩と腰に細長いエネルギータンクを着けてそこからプラズマを供給して稼働する。武器も実弾などの質量兵器がメインとなる。
地上の大気中にはプラズマがほぼ無い。
つまりALOFの強みであるプラズマ利用の機動性、稼働時間、攻撃力等がほぼ死ぬことになる。地形によっては戦車や戦闘機の方が圧倒的に有利だそうだ。
そうは言ってもそう簡単に乗り換えられる物でも無いし、陸戦仕様のALOFにもそれ相応の強みがあるので利用されているわけだ。
そうして到着初日と2日目は休養とは程遠いスケジュールで終わっていった。
調整テストと訓練に追われた2日目の夜。アハロ市内、海辺沿いにある軍御用達のなかなか立派なホテルに宿を構えた。
シシハナさんの部屋に女子3人が集まっている。窓辺で夜の海を見ながらメイリアが呻いていた。
「海〜海〜ビーチ〜」
「メイリア、落ち着いて。明日からゆっくりできるよ」
「明日は買い出しに行かなきゃだね〜。最新版ガイドブック買っておいたよぉ。みんな水着は現地調達だよね〜?」
「さすがアンビーちゃん!」
「いつもながら気が利くね」
2人が一斉に笑顔になる。端末で本を見ながらキャッキャしてる3人を携帯のカメラ越しに見ながら物思いにふける。
会議の正式な日程は当初の予定より少し早まり5日後に決定した。
早まった理由は2つ、1つは代表達の到着が予想より早い事。どの代表も優先的に都合をつけて集まっている。それだけ注目度が高いと言う事だ。ルーデルさん含め、既に基地内には4人の代表が集まっているらしい。
2つ目は先日のシーゲート襲撃及びルーデルさん襲撃事件があったからだ。これらの事件は極秘であるはずの代表会議、その情報が反乱組織に漏れている事を示していた。そんな状況で代表達を1箇所に固まって長期間駐留させておくのはリスクが高い。なので集まり次第会議を開始して、さっさと解散しよう、という事である。
心の準備もままならぬが、メイリア達は反乱組織の黒幕を炙り出す作戦が控えている。だけど俺を待っているものは他にもある。会議によって決まる自分自身の処遇がどうなるのか、だ。考えても仕方ないけど考えずにはいられない。
ルーデルさんはこう言っていた。私が協力関係にあるのは反乱組織に関する事柄だけ。あなたの処遇に関しては代表会議の中で公平に決めるしかない、と。
明日の予定が決まったようで、3人とも満足そうな顔で今日は解散となった。
自室に戻りベッドに潜り込んだメイリアが寝つけない様子で話しかけてきた。
「ランさんも来られればもっと楽しそうなのになー」
「彼女は休養期間でもなんでもないからな。ルーデルさんに付きっきりだろうな」
「だよね〜。基地に居れば安全、てわけでもないんだよね。軌道上で襲われた事からも私達の情報はほぼ筒抜け、どこに敵がいるかわからないって艦長言ってたもんね」
ベッドの中でもぞもぞ動いたかと思えば上半身を起こして携帯を見つめてきた。
「フィア、ごめんね。あなたはもっと深刻な状況にいるのに。私達のいざこざにばかり付き合わせちゃって」
「気にするな。もう俺はこの世界の一員だと思ってる。メイリアと一緒に平和に暮らすためには仕方のない事だ」
メイリアの心拍数が跳ね上がった。
「い、い、一緒に……え、それってどういう……」
「あ、いやなんていうかAIとして、的なね」
変に意識してなんだか焦ってしまった。
「あ、あ〜、ふ〜ん、そっかぁ。とにかく私に出来そうなことがあったら何でも言ってね、おやすみ〜。」
少し冷めた感じで布団を被って目を瞑ってしまった。
いや、まさかね、俺AIだよ。メイリアは俺の事お父さんとして見ているはずだし。これが乙女心というやつなのだろうか……
もんもんと考えていたら朝になっていた。




