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滞在期間わずか1日半、荷物を積み込み、観光する間もなくドミトリアから出航。
貸切状態の船の中で、すっかり静まり返っている、本来ならウキウキであろうメイリア達に向かって艦長が言った。
「せっかくの休養期間をすまない。フィア君に関しての上層部会議は3週間後を予定しているらしい。それまではビーチェの海を満喫してくれて構わない」
艦長がアンビーの頭をぽんぽんと叩いている。
「ありがとうございます。でもフィアにこの宇宙の平和な姿を見てもらいたいので、私、頑張ります!」
艦長が少し驚いた顔をした後微笑みを浮かべ、メイリアの手元の携帯を見つめてきた。
「あ、そうだ、私の父にメールを送っておいた。ビーストル星宛だから届くまで3日、返事が来るのにさらに3日。もう少し待っててね。まあ、返事が来ればだけど」
「 「ありがとう、シシハナさん」」
「あ、ハモった〜。2人はほんとに仲良しだよねぇ。シーちゃん妬けちゃうじゃない?」
シシハナさんの耳がピクッと動いた気がする。
それからしばらくは調子を取り戻した三人娘達によって船内は賑わった。ラハラと艦長も和やかに話しをしている。
が、船長が通信に向かって不穏な事を言っているのが聞こえ始め、船内の空気は一変した。
「ラハラ隊、機体で待機だ。アンビーは船長の所で現状確認と通信の補佐を」
了解、と言いながら一斉に席を立ち、持ち場へ向かって行った。それを見届けながら艦長はブリーフケースから大型の通信機らしき物を取り出しているのが見えた。
メイリアが乗り込み、機体チェックを開始。各部問題無し。
整備長とラハラが作ってくれたオルタバレルマシンガンも正常に稼働。手首に付ける専用のミニアームと接続。
オルタバレルマシンガン、銃としての使い方は整備長が説明してくれた通りなのだが、もう1つ機能がある。
武装のマウントを選択した時、専用プログラムを割り込ませるとミニアームが作動。
グリップから手を離すとアームに引っ張られながら掌を半回転するようにして手の甲側の手首へと収納されるのだ。手に持ちたい時は逆の手順ですぐに装備する事が出来る。プラズマパイルを武装として使いたい場合にかなり助かる機能だ。
「状況確認できました。軌道エレベーター『シーゲート』が反乱組織により包囲されているとの事です。現在、現地の防衛隊が応戦中。敵数は16機!」
艦長がいつかのように冷たく冷静な雰囲気を出し始めた。
「ふむ、このタイミングで、か。現在、我々の他にも協力者が専用シャトルでビーチェ星へ降下しようとしている。シーゲート襲撃はそれの陽動、あわよくば我々を始末しようという思惑かもしれんな」
「陽動とは言え数が多いな。どうする?」
「ラハラ隊はこの船をエレベーター近くの安全圏まで護送ののち、シャトルの救援に向え。エレベーターの護りは防衛隊に任せろ。彼らも星の重要施設を任せられているのだから腕は立つはずだ」
「了解、ラハラ機行けるぞ」
「了解、シシハナ、行けます」
「了解、メイリアとフィア、準備できました!」
3人がほぼ同時に声を上げる。
「シーゲート側との作戦共有、完了です。このラインまで行けば防衛隊の守備範囲内、つまり安全圏です。船の航路を新たに作成、ガイドビーコンを各機に送信」
レーダーに安全圏とそこまでの道のりが点線で表示された。ついでとばかりに、今防衛隊が戦闘しているエリアも表示された。
「……でも防衛隊が寝返っている可能性は?」
メイリアが不安そうに言う。
「減速を開始。1分後に出撃お願いします。メーちゃん大丈夫、もしそうならわざわざ外で襲わないで、施設内で暗殺か事故に見せかけて始末すると思うよ」
「確かにそうかも!」
格納庫の後部ハッチが開く。出撃の合図だ。
「メイ、迷いは消えたか?さて、ラハラ・ラインラーク、出るぞ!」
「シシハナ、行きます」
「はい、今は全力で作戦に集中します!メイリアとフィア、クーリア・ブーステンドオルタで行ってきます!」
次々とハッチから宇宙空間へと飛び出す。
減速したとは言え、高速船の速度はかなり速い。ノーマルなクーリアの最大推進速度にほぼ近い。
「この速度で飛びながら敵を迎撃するのか!難しいな!」
「射撃はお願いね、フィア。私はガイドビーコンから逸れないように気をつけるから」
仕方ない、今回は大目に見て甘やかしてあげよう。
獲物が来たとばかりにこちらに向かってくる敵が4機。いずれもグレインだ。
ラハラとシシハナさんが射撃を開始。さすがの2人もこの速度の中、動いている敵に当てるのは難しいみたいだ。
「敵の迎撃よりも撃たせない事を意識しろ!流れ弾でもまぐれ当たりでも、船に当たったら終わりだからな!」
「フィア、銃を構えるのを邪魔する感覚だよ」
「アドバイスありがとう!やってみる」
メイリアが進路を見ていてくれているから射撃に集中できる。とりあえず連射モードのオルタバレルで弾幕を張る。
撃ちながら射撃補正プログラムに干渉。
自機の速度、敵機の速度とベクトル、周囲のプラズマ濃度、様々な情報を収集、それらを演算装置にぶち込み、発射した弾の着弾予想地点を算出。だが算出した側からそれらは古い情報になってしまう。算出が間に合わない。
いや、まて、算出したデータを集積、傾向を分析。発射タイミングによる着弾地点の変化がイメージとして湧いてくるようになった。
詰まるところ、経験による勘のようなものだ!
オルタバレルを単発モードに切替える。上側のバレルがガシャッと前に迫り出した。
「当たれ!」
銃口から青白い閃光が奔る。
結果、グレイン1機のライフルに命中。
「フィア、やるぅ!防衛隊が見えてきた!安全圏まであと60秒だよ!」




