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中継基地ドミトリア。その大きさは完全に俺の予想を上回っていた。みんなが基地としか言わないから宇宙ステーションを想像していたけど、これはコロニーだ。どこかで見た事あるような円柱がくるくる回っているタイプのやつ。
その円柱の先端に宇宙港があり、俺達は今そこで荷降ろしを終えたところだ。
「これでしばらくハロンナともお別れだね。あ〜、楽しみぃ〜。早くビーチェ星に行こ!」
スキップでもし始めそうな足取りである。
「メイ、大事な事を忘れているぞ。まずは健康診断、それから特別訓練だ」
メイリアの動きがピタリと止まった。
4ヶ月にも及ぶ船内活動のため、この休養期間内で一度は健康診断を受けなくてはいけないらしい。俺達はビーチェ星での極秘任務があるので到着当日に優先的に受けられるよう、艦長が手配してくれた。メイリアにとってこっちは特に問題ないようだ。
問題は特別訓練。それは休養でビーチェ星に行くパイロットに与えられた義務だった。哨戒任務中は怪我防止のため生身での戦闘訓練は禁止されているそうなので、感覚が鈍るパイロットが多いらしい。ビーチェ星で反乱組織に遭遇した時に備えてその鈍った感覚を取り戻せ、という事のようだ。
英気を養いに行くのにそんな心配をしなくてはいけない程に反乱組織の問題は深刻なのかもしれない。
そんなこんなでメイリア達は宇宙港に隣接する病院へと向かう事になったのだが、艦長に呼び止められた。
「メイリア、フィア君を借りてもいいかな?司令の所へ挨拶に行こうと思ってね」
「あ、なるほど。大丈夫ですよ。フィアは健康診断も身体訓練も必要ないですからね〜」
メイリアからのフィアはいいよな〜、という気持ちをひしひしと感じつつ、携帯が艦長の手に渡り、彼と行動を共にすることになった。
「司令は君に早く会いたくてこの近くまで来ているらしい。事のあらましは既に報告済みだ。ただ単純に興味があって会いたいそうだ」
「司令ですか……。偉い人なんですよね?ちょっと緊張しちゃいますね」
「ふふっ、そうだな、我々410艦隊を含めた10艦隊を指揮する凄い人だ。だが、会ったら驚くと思うぞ。普通のお爺さんだ」
そう言いながら艦長が足を止めたのは宇宙港内にあるカフェだった。扉は無く、開けた作りになっているので店舗内がよく見渡せる。
客は奥の方に座っている、どこにでもいそうなお年寄り1人だけ。いや、まさかね。
「司令、お待たせしました。410艦隊所属ハロンナの艦長、イナリハです」
「おお、よく来てくれた。待ち遠しかったよ。例の彼は?」
艦長がスッと携帯を差し出す。
「初めまして、フィアです」
「おお、おおお!おおおお!」
どこにでもいそうなラフな格好の普通のお爺さんがふさふさな眉毛に隠れ気味な目を輝かせながら携帯を手に取ってしげしげと眺めはじめた。
「おおっと、失礼。初めまして、外縁艦隊司令官のコウコウです。いや〜、気楽にしてください。今日は世間話をしに来たのです」
自己紹介が終わってから約1時間半経過、本当に世間話しかしてない。
艦長がキリのいいところで話しを終わらせて解散の流れになった。
「ああ、そうだ。艦長、上への報告は終わってます。反応も悪くない。数週間後にはお目当ての会議が開かれると思います。私がしてやれる事はこれくらいですが、くれぐれも気をつけて行動して下さいね」
「ありがとうございます、司令。この内乱紛いの状況、終わらせてみせます」
司令はそれを聞くとニッコリ笑って俺達とは反対の方へ歩いて行った。
「さて、我々も行くとしよう。病院でアンビーに君を、というかこの携帯を回収してもらう。私の健康診断に付き合う必要はないから安心してくれ」
メイリアの健康診断終わったかなー、大丈夫かなー、と思っていた所に言われたのでびっくりした。
「ふふ、ラハラも言ってましたが、艦長って何でもお見通しなんですね」
「そんな事はないさ。だけど、私が宇宙の神秘に心惹かれる理由は何も見通せないから、というのが大きいな」
病院に入るとアンビーだけでなく、シシハナさんとメイリアも待っていた。どうやらラハラ待ちらしい。
艦長がそれでは気をつけて、と言ってメイリアに携帯を返して診察室へと入っていく。
入れ違いのようにラハラが出てきた。
「隊長!遅かったですね!どこか悪い所があったんですか!?」
メイリアがズケズケと聞いて他2人にたしなめられた。
「待たせたな、心配するな。いつもの事だ。さて、全員健康診断は終わったな、さあ次は訓練だ」




