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海賊の襲撃から数日経ったある日、例のカフェスペースでメイリアとくつろいでいた。この数日は訓練時間以外、だいたいここで過ごしている。
シシハナさんの秘密といい艦長の企みといい、いっぺんにいろんな話しを聞いてこれから先何が起こるのか、と少し落ち着かない日々だ。
ちなみにあの話のあった翌日にラハラからメイリアとシシハナさんに艦長の企みについての説明会が開かれたので、隊のみんなはもう知っている。
俺のそわそわした気持ちとは反対に艦の中には休養ムードが漂い始めていた。
格納庫では整備長のカスタマイズ魂に火がついてしまい、回収した海賊達の機体をバラして何やら作り始めている。
ラハラはその手伝いをしたり、整備班や艦長と酒を呑んで過ごしたりとのんびり好き勝手に過ごしている。基地に着くまで完全に気を抜くなと言っていたのはどこのどいつだったか。
シシハナさんは基本部屋に居るみたいだが、トレーニングルームに行ったり廊下をランニングしたり、コックピットで自主練したりとそのストイックさには恐れ入る。時折、カフェスペースに来てメイリアやアンビーと年相応な会話をしているのを見ると、とてもほっこりする。
アンビーは相変わらず忙しそうでなかなか姿を見かけない。ブリッジはブラック環境なのだろうか。
いつも俺達以外に誰かしら食堂にいるのだが、今日は珍しくメイリアと2人きりだ。
「明後日にはドミトリアに到着するらしいよ」
「やっと到着か。どんな所か楽しみだよ」
「ドミトリアは大した所じゃないよ。楽しみなのはビーチェ星!リゾート地なんだから!」
「艦長の作戦があるのにそんな浮かれてていいのだろうか。しかし、ここで2人きりだなんて珍しいな」
「んーーー、たしかにね。みんなどこにいるのかな?」
メイリアが大きく伸びをしながら食堂内を見渡す。テーブルにはハーブティーと焼き菓子、それとメイリアお気に入りの紙媒体の年季の入った本が置いてある。フェザー伝説という本だ。
ふと機体に何かが接続されたのを感じ、格納庫内を機体のカメラで見てみる。おや、なんだか人が集まっている。
「メイリア、格納庫内に人集りを発見だ」
「オーケー!行ってみよう!」
格納庫に入るとやはり人集りが出来ていてなんだかザワついていた。
その中の1人がメイリアに気づいて声をかけた。
「あ、メイリアちゃん。良いところに来た!」
するとどこからともなくラハラの声が聞こえてきた。
「何?メイが来たのか。おーい、ちょっとこっちに来てくれー!」
声のする方、人集りの中心へとメイリアが進む。中心にはラハラ、シシハナさん、整備長が真っ白に塗られたALOF用の銃だと思われる物の前にいた。
「どうしました?わぁ、何ですかこれ」
パッと見はピストルマシンガン程度の大きさの銃が2つ、同じ方を向きながら上下を互い違いにして置いてあるように見えた。だがよく見ると、1つのグリップの上下に銃身がくっついている。
「メイリアちゃんとフィア用に俺と隊長が作ったんだぜ!名付けてオルタバレルマシンガン!これ1丁でピストルマシンガン2丁分の弾幕を張れるぜ!さらに!エネルギー供給を片方に集中させればライフルとまではいかないが、そこそこ火力のある弾も出せるはずだ!」
整備長がガハハハと笑いながら説明してくれた。
「いやー、自分じゃ使わないが、カスタムプランを考えるのは楽しいな。あ、あと機体に外部スピーカーも取り付けておいたぞ。宇宙じゃ使えないけど、格納庫での会話とかで使えるかもと思ってな」
ラハラがとても楽しそうに言う。たしかに音声出力に外部スピーカーが追加されている。さっきの接続はこれか。
「へぇ、凄くいい出来映えですね。隊長ってこういう事が得意なんですね」
「お、なんだシシも何か欲しいか?シシもカスタムプラン考えてみると楽しいと思うぞ」
「ふふっ、私はシンプル派なので遠慮しておきますよ。でも確かに2人用のプランを考えるのは楽しそうですね」
「みんな、ありがとう!使いこなしてみせるよ!ね、フィア」
せっかくだから外部スピーカーを使ってみよう。
「ああ、みんな、ありがとう」
俺の声とともにキーンとスピーカーから割れた音が響いた。
「あー、調整が必要だなこりゃ」
「隊長、詰めが甘いな!こっちの銃はちゃんと調整してあるから安心しな!ガハハハ」
ワハハと格納庫が笑いに包まれる。
ふと、機体側の外部カメラでその光景を見てみた。
いつだか憧れた暖かい輪の中に自分がいた。その光景を見られた事が凄く嬉しかった。
思い返せばこの世界に来てからまだ1ヶ月ほど。でもいろいろな事があった。これから先はもっと波乱が待ち受けているんだろうな。
でも今はこんなAIライフも悪くない、そう思えている。




