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「認証、メイリア・アルスメリア」
「パイロット認証。機体チェックを開始。装備は?」
「B装備!あ、あとマーキングガンを忘れないでね!」
「了解。各部センサー、カメラ、駆動系、プログラム、各部プラズマ整流化装置オールグリーン。メイリアの体調もオールグリーンだな」
「えへへ、フィアと話したおかげで安心してぐっすり眠れたよ」
「ふふっ、それはよかった」
メイリアがカメラに向かってウィンクした。
2回目の出撃。不思議と恐怖や緊張はなかった。武器を装備し、穏やかな気持ちでカタパルトに乗る。
B装備。取回しの良い2丁のビームピストルマシンガン、左腕装着小型シールド、プラズマダガー。そう、B装備は本来近距離機動戦闘用なのだ。敵陣中央に突っ込み、威力は低いが連射が効くピストルマシンガンを乱射して損傷を負わせ、余裕があればダガーで破壊を狙う。
そうして敵の陣形を掻き乱した後にA装備、ビームライフル、シールド、ソード装備の機体によって損傷した敵から落としていく。
それがB装備機体のいる隊の基本戦術だ。ALOFの機動性能をフルに活かした戦い方だが、実際に使いこなせるパイロットは少ないらしい。
ちなみにC装備は前回装備した狙撃ライフルにステルスコートブランケット、大型追加ブースターだ。敵に見つからないようブランケットを羽織り、狙撃。
見つかって敵が接近してくるようなら追加ブースターを活用して距離を取る。
前回、メイリアがC装備にしなかったのは完全に近接戦闘を捨てたC装備では自分の長所を、あるいはプライドを捨てた事になるからだろう。ラハラ隊長の事だからその意思を見抜いて尊重してくれていたのだろう。
「メイ、お前が先陣を切れ」
「はい!」
「メイリア機、発進、いつでもどうぞ!」
ブリッジからの通信が告げる。
「メイリア・アルスメリア、行ってきます!」
各所のセンサーで加速を感じた直後、暗い宇宙空間へと飛び出す。
「シシハナ、行きます」
少し間をおいて。
「ラハラ・ラインラーク、出るぞ」
2機が発艦したのを確認。それぞれの距離と速度を調整して、高速巡航形態へと移行。
「ブリーフィングでも話したが、敵がハロンナのセンサーに最初にかかったのが半日前。それから敵が移動した形跡が無く、それどころかセンサーにかかる敵の数が増えている。つまり、敵の巣があるって事だ。俺達なら問題なく攻略できるだろう。だが油断するなよ!」
ラハラ隊長の激励に二人が同時に了解、と答えた後、シシハナさんが言った。
「メイリア、敵の巣はドロンズが通常編成の倍以上出てくる。その中にあなたは最初に入っていく事になるの。別に怖がらせようとしてるわけじゃない。ただ無理はしないで欲しいだけ」
「ありがとう、シシハナさん。後ろはお願いしますね!」
口数少ないシシハナさんがあんなにしゃべるのだから本気で心配しているのだろう。シシハナさんはメイリアに結構甘いのだ。
しばらく無言が続く。敵の大群がいるという見えない圧が強まってきている様だった。
左側には色鮮やかなプラズマ雲海が広がっている。クェルツ星団の技術はこの雲海から流れてくるプラズマを利用した物が多い。
ALOFの武器や推進機がまさにそうだ。宙を漂う無数のプラズマを誘引して制御、増幅、整流化する事で省エネな兵器を実現している。
ん、鮮やかなプラズマ雲海を背にして黒い何かが漂っている。いや、それよりも!
「前方来ました!ドロンズの群れです!行きます!」
ドロンズの数、40機。通常の2部隊分!
巡航形態解除、手足のスラスターを180度回転させて急制動。ピストルマシンガンを両手に取り突っ込んでいく。
戦闘突入。敵の弾幕が出迎える。
仲間の援護射撃を背にして、器用に手足を動かし変則的な動きをしながら弾幕を掻い潜り、敵の群れの中へ。
「フィア!私の動きに合わせてプラズマブレイドをお願い!」
「ああ、弾が当たりそうな時は操縦権もらうぞ!」
傍から見たら群れの中を手足をバタつかせて泳いでいるように見えるかもしれない。だけど、それは確実に攻撃であり、着実に撃墜数を伸ばしていっていた。
突き、裏拳、手刀、かかと落とし、ハイキック、ローキック、回し蹴り。
もちろん実際に拳や脚で攻撃してるわけではなく、モーションに合わせてプラズマブレイドを発生させて、それで切っている。
敵は陣形を組み直そうとした直後に次々と落とされるもんだから、陣形を作る事に夢中になり、だんだんと動きがぎこちなく、攻撃の手も緩んできた。
群れに突っ込まれて、このペースで落とされる事は想定してなかったのか。無人機故の弱点が見えてきた。
「あそこ、空間が空いてる。一気に駆け抜けるぞ、メイリア!」
「ええ!」
敵の群れの中に道を見つけた。群れの中に長いは無用。
両手を伸ばしスラスターを吹かして機体を回転させる。回転しながらもAI補正により正確な射撃で四方八方の敵に損傷を与えていく。
5機の敵が急いで道を塞ごうとしてくる。
「メイリア、やれるか?」
「もちろん!!」
回転の勢いを活かした裏拳×2、回し蹴りでさらに2機。最後の1機は回転を止めてピストルマシンガン2丁を突きつけ、前方に向かって最大推力。群れから脱出しながら穴だらけにした。
ここはまだ巣の入り口。本番はこれからだ。
今週もお疲れ様でした。そして、お読み頂きありがとうございました。
ブックマークの増加や誤字報告まであり、読んでくれているという事が伝わりとてもモチベーションが上がりました!
また来週もお付き合い下さいますと嬉しい限りです。
それではよい週末を〜