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男に取引場所として指定されたのは近所に新しくできたショッピングモールの地下駐車場
だった。
人通りが多い場所が指定されたことに困惑している自分をよそに男は時間と場所を指定してきた。
そして午前10時、坂田は新しくできたガラス張りの大きな建物を見上げていた。
一つだけではなく同じくガラスでできた連絡通路を通して別の棟にも繋がっているそれはどう考えても一日じゃ回り終える気がしない。
まだ指定された時間までだいぶあるが坂田には家にいることができなかった。
昨日だっていろいろな事を考えてしまうわ吐き気やら頭痛やらで一睡もできていない。
ここなら店を回っていると気もまぎれるし、いい時間潰しになるはずだと思い、坂田は開店したばかりのモールの前に立っていた。
周りには家族連れやカップル、友達同士で遊びに来たらしい人たちがたくさんいて坂田は思わず息を飲んだ。
彼らがここに来ている理由は自分とはまったく違うものだ。
そしてそのことが余計坂田を不安にさせた。
自分は本当にここに来て良かったのかと。だけどもう後戻りはできない。
坂田は手汗の出ている手でバックの持ち手を握りしめると歩きだした。