24.宝くじが当たったどー!
【タイトル】
宝くじが当たったどー!
【ジャンル】
文芸
【小説冒頭部分】
◆とある民家にて
「なあ圭ちゃん、宝くじ買って来てーなぁ!」
「またかい?婆ちゃん」
青島たけ子(99歳)は孫の圭一(45歳)に年末ジャンボ宝くじの購入をお願いしていた。
青島家は元々八人家族。
たけ子の夫である優は十五年前に他界。
たけ子の長男である孝志とその妻由紀子も、相次いで病気を患い十年前にやはり他界。
次男昌夫は生前贈与により遺産問題を奇麗に済ませた上、現在は同じ町内にて家を構えて家族と暮らしている。
圭一の嫁であった淳子は、地元の会社二代目社長に寝取られ離婚。その後会社は倒産してしまい夫婦そろって現在行方不明だ。
現在、圭一は家業の釣り堀を経営しつつ祖母たけ子と二人暮らししている。
「頼むわ圭ちゃん、年末ジャンボ宝くじは私の生きがいなんだよぅ」
「わかったわかった、またいつも通りの配分で買ってきたらええんやろ?」
「それで頼むわ。今度こそ当たりそうな気がするねん!」
たけ子は満面の笑みで圭一に購入代金を渡した。
青島家では毎年正月二日には、親族が集まる事になっている。
その時に、親族全員に【年末ジャンボ宝くじ】と【年末ジャンボ宝くじ】ミニをお年玉として渡す伝統がある。
そして高額当選した時の夢を十分語ってから、をその場で当選番号を確認し、親族一同ワクワクからガッカリしつつ、笑いながらすき焼きをつつくまでがパッケージとなっている。
そして今回もまた期待も空しく300円以上の当たりは出ず、例年通りの正月となった。
その半年後――
「圭ちゃん、圭ちゃんはどこや?なんか目が見えへんねん」
「婆ちゃん、ここや!俺は傍におるで!」
圭一はたけ子の手を握った。
不安そうなたけ子の表情が幾分和らいだ。
病院の個室でたけ子は最後の時を孫の圭一と過ごしていた。
「圭ちゃん、私のために長い事縛り付けてすまんかったなぁ……」
「なに言うてん、俺は縛り付けられたなんて思ってへんで!」
「圭ちゃん、ほんまありがとう。今からでも遅くない。幸せになるんやで」
「婆ちゃん、俺は今でも幸せや!幸せやから!」
「おまえは本当に優しい子やなぁ……私の自慢の孫や、ありがとうな」
― ピピピ! ピピピ! ピピピ!
脈拍が異常を示す警告音が病室に鳴り響く。
「婆ちゃん、しっかりするんや!」
「ええんや。私は十分以上生きたから……せやけど……」
「せやけど?」
「せやけど、一度でええから宝くじ一万円以上当てたかったなぁ…………ガクリ」
― ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「婆ちゃーん!!!!」
青島たけ子、享年百歳。
孫に看取られての大往生であった。
これは、たけ子の死後、青島一族が宝くじが原因でなんやかんやとワチャワチャする悲喜こもごもな物語である。
それから四年の歳月が過ぎた。
圭一は亡きたけ子の意思を継ぎ、あの日からも毎年年末ジャンボ宝くじを購入していた。
「誰かが一万円以上当たるまでは続けますよ!」
圭一はそう言って自分用とは別に、親族世帯分の宝くじを昌夫に纏めて渡しているのだ。
…………
…………
…………
つづく
亡き祖母の意思を継いで、宝くじを買い続けたら、なぜか親族崩壊の危機に直面するというお話です。
昨年(R21年)末に思いついて、プロットも無くツラツラ書いてて、その後忘れてデスクトップの片隅に放置状態なの発掘。
当分執筆する予定が無いのでこちらで保管を。
年末ジャンボのシーズンに合わせて完成できればいいかなっ!
無理かなっ!?