挿話 ギルド名
ギルド名を見たときに思い出したマスターとの会話について
個人に割り当てられた部屋のひとつ、ナオはマスターの部屋にいた。
呼び出されたわけでもなく、自由においでと言われるがままに頻繁に訪問していたあの頃。とりとめもない会話の中で、ギルド名の由来について話が及んだ。
「僕はね、自分のギルドを気のおけない仲間と作りたかったんだ。だから、居心地が良い、我が家みたいにしたくて、名前をcaloreにしたんだ」
「どこかの国の単語ですか?」
「そうだよ、イタリアだったかな?ぬくもり、みたいな意味があってね。僕が当時の初期メンバーに提案して、いい名前だねって言ってもらって決まったんだ」
「○○さんは優しくて、ギルメンを包み込むようにあたたかいから、その名前はよく合ってますね」
「…そうかな。努力はしていくけど、ナオちゃんが一緒にいてくれたらできそうな気がする」
「もちろん、私ができることは隣で支えますよ」
「ありがとう、約束だよ」
「はい、約束です」
※※※
結局約束を反故にしたのは誰のせいなのか。当時のマスターの名前にフィルターがかけられる程度には忘れたい人なのだろう。半年をかけて、マスターとの記憶はナオの中から少しずつ失われていた。