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「ここは‥‥」
目を覚ますと目の前は森だった。
静かで何処か幻想的。
日の光が僅かに見え草木に付いている水滴が輝いて見える。
「‥‥」
次第に意識がはっきりとして来たせいか自分の置かれている状況に恐怖してきた。
「ここは…何処…?」
何も思い出せない。
何故ここに居るのか、自分が誰なのかさえも。
ひんやりとした空気が恐怖を助長する。
「誰か…、誰か居ませんか‼」
回りには誰もおらず当然返事は返ってこない。
胸の鼓動が速さを増して行き、次第に息が荒くなる。
「怖い、怖いよっ!」
助けを求め動き、走り始める。
疲れては歩き、叫び、また走り始める。
どれだけ繰り返した事か、時間の感覚を狂わせる森の中。
記憶を失った少年は孤独と恐怖から逃げ続け、ただ走り続けた。
意識が朦朧とし始めている事さえ気づけずに…。