35億番目に君が好き
『困難な道を乗り越えてこそ、明日に繋がり、自信に繋がる』
何の話が切っ掛けだったのかまでは覚えていないが、私は面と向かってある人にそんな事を言われた。
私はその人のその言葉を信じ、困難を乗り越えた。
だがその先にあったのは次の困難だった。
私は悟った。
困難な道の先には困難な道が続き、壁を超えたと思えば壁があり、行きついた先は崖だった。
それでも私は前に進む。
『35億番目に君が好き』
好きな男性から面と向かってそんな事を言われた。
何故だかその男性の顔はちょっと強張っていた。
「君が好き」という言葉に、私は一瞬浮かれた。
だがすぐに35億番目という言葉の意味に気が付いた。
「いや、それって地球の女性の中で一番最後って事じゃんっ!」
それでも私は彼が好き。
それに「嫌い」とは言われてないもんね。
困難は乗り越えないとね。
それが明日に繋がるんだもんね。
自信にも繋がるんだもんね。
もっともっと慎重に、ストーカーだなんて言われて再び捕まらないように気を付けなくっちゃっ♪
薄汚れた紙にはそんな事が書いてあった。その手紙らしき1枚の紙は、何処からか風に乗って、私の足元に纏わりついた。
それにしても2つの文章のテンションが違いすぎてよく分からないな……。
しかし、この手紙は日記の類として現実を書いたものなのだろうか。それとも詩のつもりで書かれた物なのだろうか。
詩だとしたら情緒の不安定さが見て取れなくもないな。まあ、芸術の類としてみれば、それに文句をつけるのは無粋とも言えるか。
詩では無く、現実の事が書いてあるのだとしたら、1つの目の文章の最後の1文はアレな感じだが、2つ目の文章は――――。
紙には黒い点というか固まった染みみたいなのが付いてる。
これってやっぱり血だろうか……。
何か色々な意味で怖っ! 読むんじゃなかった!
2019年09月16日 初版