束の間の休息
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないけど、大丈夫」
「ここに来られたばかりの方がよく起こすフラッシュバックですかね。私も最初それやられました」
男の人はのほほんと話してるが、なかなかキツい。
頭が痛いうえに思い出したくないことも思い出されて、魂だから吐けるわけでもないのに吐き気がする。
げんなりしていると少し休むかどうか聞かれた。
確かに今はちょっと休みたい。
「ちょっと、休みたい、です」
「そうですよね。私は少し離れるのでそのままベットで休んでて下さい。多分、あとで博士がくると思いますが、彼は見た目がアレなだけで悪い人ではないのであんまり怖がらないで上げてくださいね」
「はい、ありがとうございます…」
あのカタコト博士にビビるなっていうのは無茶なような…まあ、自分の身体とこの男の人の腕を見たからさっきよりは耐性ついたけど。
「では、ごゆっくり」
パタン、と扉が閉まる。
ほっと息をつき、ベットに寝転がる。
やっぱり人がいないのは安心する。
人の気配があると、あの男の人がいくら優しくても落ちついて過ごせない。今までの経験で染みついたものだから今更どうにもならないし、死んでからどうにかなっても困るけど。
嫌な記憶から頭を振り払うように、部屋の天井を見やる。
けっこう、広い部屋だな。
周りを見回すと、ベットの横には男の人が座ってたイスがあり、その奥には古そうな本棚やクローゼットのようなものが置いてある。
本棚やクローゼットの置いてある壁の左側の壁にはレンガ造りの暖炉が置いてあり、全体的に埃っぽくちょっと汚いということ以外は昔のヨーロッパっぽい部屋だ。
窓もあるが、光を部屋に取り入れるためにある窓という感じで開けたり閉めたりというのは出来なさそうだった。
窓の外は空とは違うのだろう。でも見たままでいうとどんよりとした曇り空という感じだ。光を取り入れる用の窓は役に立たなそうだった。