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【第51話】手紙

 旅客船に乗船して捕まった時から、なんだか変だとエドナは感じていた。

 不思議なことに、罪人のような扱いはされなかった。

 船の中では、通常の旅客室の中に限られるが、普通の生活を許されていた。

 ドアの入り口に警備の人間がいて、軟禁状態。

 とはいえ、食事は美味しいものを与えられていたし、警備の人に語りかけても、


 「悪いようにはしませんから、あまり心配はしないで下さい」


と言ってくる。

 エドナは、自分の心配していたような、ガーラシアに狙われているといったものではなく、何か別の理由で軟禁されているのでは、と思うようになっていた。

 ガーラシア以外の国で、何か犯罪絡みで疑われるようなことは何もしていない。

 何かの事件の重要参考人として軟禁されたのだろうか?

 それとも、誰か他の人と間違えられているのか……等と、エドナは色んなことを想像する。

 船に乗って数週間後、旅客船はルーテシアの港に到着した。

 北国の冬は厳しいと聞いていたが、到着したこの日は雲ひとつない晴れた空で、エドナは少し拍子抜けした。

 猛吹雪の中の下船を想像していたからだった。

 数日前までに降ったであろう雪が、街を(おお)っている。

 カラフルな建物と白の雪のグラデーションが美しく、街の美しさに心を打たれた。


「シンディお嬢さまも、死ぬ前に、この街の風景をご覧になられたのだろうか…」


 とエドナはポツリと(つぶや)く。


 下船完了後、入国の手続きは出来ず、港湾にある海軍施設らしい建物に案内される。

 そして貴賓室のような個室へと誘導された。

 留置所のような場所に連れて行かれると思っていたので、エドナは少し拍子抜けだった。


 このままガーラシアへ移送のような話があれば、おそらくガーラシアに到着次第、身を拘束(こうそく)され、今まで持ち続けた国王の手紙について詰問され、何らかの罰を受けることになるだろう。


 しかしそれ以外の理由であれば、簡単に釈放され、自由の身になれるのでは、とエドナは前向きに考えることにした。


 一方、広場で雪祭を見ていたシンディたち。

 ゴールドウィンからエドナの保護の情報を聞いて、急ぎ足で、海軍施設に向かっていた。

 道の日陰部分は、もう雪が凍結していたりして、少し歩きにくい。

 注意深く、こけないように、一歩一歩前に進む。

 エドナ……エドナに会いたい……。

 シンディは少し息を切らしながら、早足で歩いて行く。

 ピョートルがシンディに語りかける。


「それにしても……エドナさんも運が良いな。他国の船で、もし身分がバレていたら、ガーラシアに送られて、適当な罪状をでっち上げられて、罪人として処理されていただろう」


「そして、エドナの持つ秘密は、完全に(ほうむ)り去られる……ことになるのね!」


「そうだ!アイリス王太子妃が危篤(きとく)にも関わらず、姿を晦ましたのは、特別な理由があるはずで、恐らく、それはガーラシアにいる王族たちにとって、都合の悪いことなんだろう」


 シンディたちは海軍施設の建物に到着した。


「こちらです!」


 と施設の職員がシンディたちをエドナのいる部屋へと案内してくれる。

 シンディは、もう一刻も無駄にしたくなかった。

 ピョートルの許可も得ず、扉をバタンと勢いよく開けて、エドナのいる部屋に、滑り込むように入って行った。

 急に扉が開いて驚くエドナ。

 扉を開けた先に、エドナがいた。

 言葉を失うシンディ。

 それが二人の再会だった。

 エドナも、飛び込んで来たシンディの姿を見て、驚きで言葉を失っていた。


「シンディ……お嬢……さま……!」


「エ……エドナ!」


 シンディは、ゆっくりと、そして、確かめるようにゆっくりと、エドナに近づく。

 そしてガバッとエドナを抱きしめた。


「エドナ!エドナ!生きていてくれたのね!本当に……本当に会いたかったのよ!ほんとに……ここまで来てくれて、ありがとう!」


「お……シンディお嬢さまこそ……このルーテシアの国で、沢に身を投げて、亡くなったのではなかったのですか!?」

 

 エドナも、シンディが死んだと思っていたのだ。

 一体何から話せば良いのか、少し混乱しているようだった。


「エドナ、私、色々……色んなことがあったのよ……」


「シンディお嬢さまも……色々あったご様子ですね……生きて再会することが出来て、このエドナ、嬉しゅう存じます」


 そう言って、シンディをぎゅっと抱きしめる。


「ねえ、エドナ、教えてほしいの。なぜあなたが、突如姿を消したのか……そして、今まで何をしていたのか…。」


「私もです……シンディお嬢さま!お嬢さまがこのルーテシアで住われるようになった経緯を、教えてください!」




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