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名ばかり勇者、秒で負ける。

「我は勇者の末裔エリザ!この町に魔王が現れたと聞き、救出に参った」


 跨っていたのは長い金髪を団子に束ね、胸部が開いて谷間の膨らみを見せつける西洋甲冑に身を包んだ色白の騎士だった。腰には剣がさがり、太ももにはリボルバー式の拳銃を収めている。


 勇者の末裔と名乗るエリザは馬から降りると、腰に下げた剣に手をかけメルルたちの元へ歩き寄る。

まさかこんなにも早く勇者が現れるとは思わず、メルルは剣を持つ手に力が籠った。


「その魔剣、お前が魔王か。禍々しいものを想像したが、ただの町娘ではないか」


「そう言う貴女こそ。まだ年端もいかないお嬢さんじゃなくて?」


 挑発するような口調は簡単にエリザの怒りに触れた。


「無礼者!私は勇者の血を継ぐ者!来るべき時に備え、鍛錬を欠かさずにいた。そして今それを発揮する時がきたようだ」


 剣を抜くと、メルル向かって切っ先を向けた。


「確カニ勇者ノ血ノ匂イハスル。薄マッテハイルガ」


「じゃぁ、本当に勇者の末裔なんだ。だったら容赦はいらないね」


 メルルも魔剣を構える。その刃からは禍々しい黒いオーラが炎のように浮かびあがって空間を歪ませている。


「お待ちください勇者様!魔王様は我らを救ってくださいました!」


「黙れ!魔王め、民たちを洗脳し差し向けるとは。いかにも悪魔らしいことを!」


 止めにはいった町長の叫びも空しく、勇者の耳には入らなかった。

それどころか町長たちは魔王に洗脳されていると勝手に思い込むと、さらに怒りの感情を露わにしてメルルを睨みつけた。


「町長さんこの勇者さん頭がポンコツみたい。こうゆう奴には何いっても分からないんだよ」


「愚弄するか!」


 勇者の剣がメルルに襲い掛かる。

その腕前は確かに実力のあるものであったが、魔剣の力を手にしたメルルには動きがスローモーションのようにゆっくりとしたものに見えた。


「勇者っていうのに期待外れだなぁ。もっと強いと思ったのに」


 剣を振るうこともせずにメルルはひたすらにエリザの剣を避け続けた。

振るっても一向に当たることのない刃にエリザも次第にイラつき、歯をむき出しにして怒りを現した。


「貴様!避けずに戦え!」


「はーい」


 挑発に乗ったメルルは魔剣を一振りしただけでエリザの身体を突き飛ばした。

あまりの衝撃にエリザの身体は後方に吹き飛ぶと、全身を果樹に打ち付けて意識を遠くした。


「魔王様、流石!勇者を一撃で倒しましたわ!」


「いやー、勇者ってこんなものなの?張り合いなさすぎるんだけど」


「勇者ト言エド、中身ハタダノ女ダナ」


「私も女なんだけど?」


「オ前ニハ私ガイルカラナ」


「それにしても弱すぎじゃない?思ったよりつまらなかったな。もっと白熱したバトル!って感じになると思ったのに」


 意識を失った勇者を見てメルルは一瞬で決着したことに闘争心のやり場をなくしていた。

一撃で沈む勇者など面白くもなんともない。大抵ならば勇者と魔王の一大対決ともなれば、それなりに白熱するものかと想像したが、目の前の勇者といったら名乗りだけあげてすぐに敗北している。


「町長さん、この勇者さん手当してあげてくれる?」


「えぇ、それは構いませんが。それでいいのですか魔王様?」


「いいよ。こんな雑魚勇者殺しても何の面白みもないでしょ?回復するまでここで見てあげてよ」


「なんと慈悲深い魔王様なのか。我々を救っただけでなく、勇者までも助けるとは」


 魔王を倒しにきた勇者までも救うメルルに、住民は感動し、それは崇拝に近いものになっていた。

人を救い、敵にすら情けを掛ける。

メルルは深く考えないままに行動していたが、それは住民にとって慈悲深い魔王という印象を与えていた。


「とりあえず勇者は倒したし、この町も手に入れたし。帰ろサキュバス」


「はい、魔王様!」


 抱きかかえられて空に舞い上がる魔王の姿に、住民たちは祈るように手を合わせてメルルたちの姿が小さくなっても、いつまでも空を見上げ続けていた。


「魔王様はオラたちの町を救ってくれた…魔王様はオラたちの救世主だ!」

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