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崩れ去る魔王

 幾度にも重なる刃、飛び交う魔法、暴れ馬のごとく振り回される斧。

相手はたった一人の少女。しかしながらに魔王。

名は伊達ではない。ドロシーたちは4人で攻撃にかかるが、メルルはその一切を受け付けずに刃を振るった。


「エリザ!スティグマを使え!」


 一向に魔王にダメージを与えられないドロシーは怒り狂ったように叫んだ。

言われてもエリザはスティグマを使おうとはしない。賢者に与えられた切り札は最後まで取っておく。

そう、ドロシーを殺すその時まで。


「相変わらずクソ弱!力を手にしたとかパーティ組んだって聞いたのに、大したことねぇなぁ!」


「ほざけ!貴様のような悪に我ら正義の刃が負けることなどありえん!」


 エリザの鋸が大きく振りかぶって払われたが、メルルは魔剣を素早く半回転しながら振るうと火花を散らして刃は跳ねのけられた。


「正義とか悪だとか言ってんじゃねぇよ!少なくともお前は正義じゃねぇ!」


「言わせておけば!」


 背後に回っていたホーキンスの斧が振りかざされるが、紙一重に回避すると体を回転させながらホーキンスの顔面にソバットを叩きつける。


「どんクセェ!」


「グヌゥ!」


 顔面にソバットを浴びたホーキンスは飛び石のように何度も体を打ち付けて壁に激突すると、大きな亀裂をあげて倒れこんだ。

しかし、斧を杖に立ち上がると、何度でもメルル向かって切りかかる。


 ドロシーとホーキンスが左右から刃を振るうと、メルルは身体から闇のオーラを噴き上げて両者を吹き飛ばした。


「芸がねぇんだよ!無暗やたらに切りかかってきてさぁ!なぁにが勇者だよ、バカバカしい」


 先代魔王の魔力を取り入れたメルルの力は今や何倍にも膨れ上がっていた。

身体には常に闇のオーラを纏い、威力、スピードが格段にあがっている。


「魔王!」


 正面からエリザが切りかかった。

メルルは正面から向かう刃を魔剣で受け止めると、鍔迫り合いになった。

だが、エリザは両手で刃に力を籠めるのに対し、メルルは片手で剣を持つと余裕な表情で力を籠める。


「魔王…お前に聞きたいことがある」


 近距離にいるメルルにしか聞こえない程度の小さな声で語りかけた。


「あぁん?」


「民はどうした?私たちに報復しないのか?」


「…させるわけないじゃん。余計な血が流れるなんて誰がのぞむの?」


「――そうか」


 魔王の言葉にエリザは笑みがこぼれた。

きっとこの魔王ならば世を導ける。自分の意志を託せる。


「だいたい勇者も魔王も時代遅れなんだよ。こんなくだらねぇ物語、私がさっさと終わらせてやるよ」


「あぁ、同感だ。犠牲は私たちで十分だ」


 コイツは死を覚悟している。

メルルは直感でそう思った。

刃を交えているからか、戦の中で芽生えた感情なのか、エリザは敵ではあるが、信念がある。

ドロシーとは違い、本当の勇者としての役割を担おうとしている。

そして、コイツは私と同じ考えを持っている。

そう、思えた。


「ウオラアアアアアア!」


 鍔迫り合いをしていた背後からホーキンスの斧がメルルを捉えた。

間合いも威力も十分に取られた会心の一撃はメルルの背中を大きく切り裂くと、鮮血をあげた。


「隙を見せたな魔王!これで貴様も終わりだ!」


 鮮血を舞わせながら、メルルの手から魔剣が落ちた。

膝をついて倒れる身体。


「魔王討ち取ったあああああああ!」


「魔王ー!」


 エリザの絶叫が城に響いた。

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