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負傷の戦士

 城から出ていく町長や住民を眺める目があった。

ファージとラミエルだ。

魔王との闘いに破れ、ファージは重傷を負いラミエルと共に都に隠れ回復を待っていた。

ある程度回復した頃には都はメルルの支配下となっており、二人は今後どうするかを模索していた。

 二人を雇っていた王はもういない。

仕える人がいなくなった二人は路頭に迷ってしまっていた。

わずかな金銭を元に都の安い宿にとりあえずの場所を確保すると、都に流れてきた地方の町長たちを見つけ、あとを追っていた。

 城門近くの喫茶に座ると、町長たちが城に入っていくのを眺めていた。

しかし、どうしたことだろう。暗い面持ちで入っていったはずの町長たちは出てくるころには顔をニヤつかせていたり、気が狂ったように笑いながら走りだしたり、中には兵と馬車に送られる町長すらいる始末である。


「いったい全体どうなってんだこりゃぁ」


 その不自然さにファージは納得がいかないように城門を出入りする人々を見つめていた。


「皆さん暗い面持ちで入ったかと思えば…なんだか浮かれて出てきますね。最初はあまりの要求に気が狂ったのかとも思えましたが、そうではないようですね」


「あのお嬢ちゃん魔王はいったい中で何してるってんだ?」


 メルルと刃を交えていたファージは顔を思い浮かべながら中の様子が気になっていた。

魔王による支配、時代は暗黒の時代になるかとも思えた。

ファージの想像では町は破壊の限りを尽くされ、人々は苦しみ、魔王はこの世の破滅をもたらすくらいに思っていた。

それがどうだろう。

二人が争ったせいで壊れた町は元通りに直され、苦しむ人は見当たらない。この世の終わりどころか、むしろ以前よりも活き活きしているように感じられる。


「気になって仕方ねぇ!おい、ラミエル!あのお嬢ちゃんに直接聞きにいこう」


「あなた、無茶よ。まだ傷は治ってないのよ!」


 ファージの身体には名誉の負傷を隠す包帯が幾重にも巻かれていた。立ち上がっただけでファージは脇腹の痛みに声をあげている。

そんな状態なのにまた魔王に会うといいだすファージにラミエルは待てをかけた。

しかし、一度言い出したらファージは止まらないのもラミエルは知っていた。

そうゆう性は良くも悪くある。だが、その実直さが彼の根であり、性格であり、ラミエルを惹きつけた要因でもある。


 歩き出した二人の横を褐色の娘が泣きながらに通り過ぎた。

その娘をおう中年の男。泣きながら走り去る娘を見て二人は何かあったのだろうと察した。


「見たか?今の娘泣きながら出ていったぞ。やっぱりあの魔王何かしでかしてやがるな、あの野郎、ただじゃおかねぇ」


「無茶しないで。ただでさえ傷だらけなのに、そのまま魔王とまた戦うつもり?」


「あいつ次第さ!女を泣かすような奴ァ大抵ろくでなしって決まってんだ!」


「ファージ!」


 城門をくぐり、列をなす人々を無理やり退かしてファージは玉座を目指した。

もし酷いことをしていたなら一発かましてやろう。そう決めてファージは城内へと足を踏み入れた。

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