P120、魔王の都
この子の気持ちを受け入れよう。
女同士ではある。でも、この子は自分を愛してくれている。
だから、この子とだったら。
ルシールはメルルの言葉の意味がわからなかった。
いや、正確には意味はわかるが、メルルが何を言っているのか分からなかった。
「メルル様、それはどうゆう…」
言葉の代わりにメルルの手のひらが大きな乳房を掴んだ。それだけでルシールはスイッチが入りそうなのに、メルルは追い打ちをかけるように唇を重ねた。
「前はお風呂でおっぱい揉んだらスイッチ入ったよね。どう?発情した?」
「うぅ…メルル様、何をお考えなのですか…?」
ルシールの顔は今にも燃え上がりそうなほどに赤くなっていた。
胸を掴む手の平、額がつきそうなほどに迫った顔、瞳には迫られる自身の姿が見える。
「んー自分でもよくわからない。でもね、楽しいし、嬉しいよ」
そう言って笑う顔は人間であるのに悪魔のように思えた。
ルシールの鼓動はもう胸を破りそうなほどに高まっていた。もう緊張感や恐怖は過ぎ去り、今はただメルルが次何をしてくるのか待っている自分がいることにルシールは気づいた。
メルルは馬乗りになると、顔を赤らめて息を荒くしたルシールを見下した。
「前は立場が逆だったよね。私が乗られて、ルシールは襲う側」
「…はい、そうでした。あの時のことは…反省…しています」
「本当に?本当に反省しているなら言葉よりも行動で示して欲しいなぁ。お詫びとして何かしてもらおうかな」
「何なりとお申し出ください。わたくしに出来ることでしたら…」
早く命令して欲しかった。
なんでもいいから早く罰でもおしおきでもして欲しくてたまらなかった。
指を咥えて待つルシールに、メルルはそれが面白いように笑っている。
「じゃぁ、さっきも言ったように、…発情して?」
息を飲んだ。メルルが望むのならばそうするしかない。
だが、メルルの望みはルシールの願望を叶えるものでもある。
「メルル様、わたくし…止まりませんよ?」
「違うなぁ。私が止まれっていうまで、ルシールは発情を止めちゃダメなんだよ。わかった?」
「はい!♡」
***
王がいなくなったと聞いた近隣の住民や町長が都を訪れていた。
王はいなくなり、代わりに魔王が座についた。
それを聞いたものはこれからどんな恐ろしいことが起きるのかと想像すると、不安で夜も眠れないほどであった。
数人の町長たちが相談の上、魔王に謁見することを決めると、さっそく城へと足を運び魔王と顔を合わせた。
玉座に座るメルルと、その隣にはやたらとツヤツヤしたサキュバスが訪れたものを威圧していた。
あぁ、本当に魔王に支配されたのか。
体感としてそれを感じると、町長たちは不安をより濃いものへと変化させた。
「で、何?どしたの皆して集まって」
「王は去り、魔王様がこの都を支配したと聞いて我らは集まった次第でございます」
「そうなんだ。で、用件は?」
「我らの町は王へ税として作物や物資を届けることで、王政の恩恵を受けていました。今後はどのようになさるのかをお聞きしたかったのです」
「あー全然考えてなかったなぁ。でも少しはもらえるものもらいたいな。支配下がだいぶ広まったからね。物資は必要になるもんね」
「はぁ、具体的にはどのような?」
「んー考えとく。前はどうやってたの?」
「以前は調査兵が毎期の収穫量を確認し、そこから王への税を計算しておりました」
「わざわざ派兵するのもめんどくさいな。じゃぁこれからは私が言った量をもってくるようにしてくれる?詳細は明日言うから」
「…かしこまりました」
明日はどんなことを言われるのだろう。
魔王なのだから、とんでもない量の税を収めろとか、生贄を出せとか言われるのではないかと町長たちは心を重くして自分たちの町へと戻っていった。




