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虫のお知らせ

 スライムが城にいることでメルルは初めてベッドで快眠することが出来た。

朝になって寝室にある鏡台の前に腰掛けると長い黒髪に櫛を通した。

鏡に映る黒髪は艷やかで櫛は流れるように髪を通り抜ける。


しかし、櫛は髪を通しながら音も立てずに二つに割れて床に落ちた。


「ありゃ、なんだ?虫の知らせか?」


 櫛を拾いあげるとぱっくりと割れてしまった切断面を見つめる。


「どうしましたー魔王様ぁ」


 まだベッドに横になっていたサキュバスが眠気眼をこすりながら尋ねる。


「櫛が割れちゃったの。スライムが起きたら新しいの作ってもらわなきゃ」


 メルルは割れた櫛を鏡台に置くと何事もなかったかのようにまたベッドに横になった。

戻ったメルルの腕をサキュバスが抱きしめながら再び寝息を立てる。

反対に寝ていたスライムも寝返りをうつとメルルに抱きついた。



***



 勇者エリザは町を出て国へ戻ると、休む間もなく旅支度を整えて賢者の住まう神殿へと向かっていた。


 勇者の血を引きながら魔王に簡単にやられてしまったことで、悔しさが心に傷を残していた。

このままでは魔王に世界は支配されてしまう。勇者の血を継ぐ自身がなんとかしなければならない。

そのためにはさらに力をつけなくてはならない。

 賢者はかつての勇者と共に魔王討伐を果たした仲間で、歳は100を越えている。

賢者ならば力になってくれるだろうとエリザは神殿を目指した。


 神殿は砂漠にあった。今では人が近寄ることのない場所。

砂の舞う中にただ朽ち果てるのを待つように神殿が立ち、エリザが立つ入口には人の立ち入りを拒むように砂が積もっている。


 足を踏み入れた先は薄暗く、一本の通路と左右にわずかに席があり、奥には勇者を讃えた石像が炎に照らされている。

賢者は石像の前に膝をついて祈りを捧げていた。


「賢者様」


「勇者の血を継ぐものですね。あなたが訪れるのを夢に見ました。そして、あなたが何をしようとしているのかも」


 立ち上がり振り向いた顔はとても齢100以上には見えなかった。

それどころか賢者は若く美しい女性で、外で見たならば年頃の町娘に見られてもおかしくはない。


「魔王が再来したのですね」


 賢者は名をフレイと言う。

かつて魔王と対峙した勇者の仲間の唯一の生き残り。

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