スライムだからって倒すなよ
サキュバスの大きな乳が引っぱたかれた。
反省の色が見えないサキュバスにメルルのおしおきの平手打ちが乳房に炸裂すると、乳房を大きく揺らしながらサキュバスは仰け反っている。
「あぁ♡魔王様、もっと!♡」
「ダメだ、こいつドMだったわ」
おしおきのつもりがご褒美になってしまっている。引っぱたかれながらもサキュバスの顔に怒られている反省の色はなく、乳房を叩かれて悦ぶという歪んだ快感へ変わっている。
「魔王様!お助けください!」
もう一発乳に食らわせようかと悩んでる最中に聞き覚えのない声がした。
玉座の間への扉がわずかに開かれ、そこに水色の透明な肌をした少女が腕を抑えながら、こちらに駆けこんでくる。
よくよく見れば全身が透明なのに身体は人の形をしている。所謂スライムというやつだ。
「魔王様が再来したと聞き、魔王様に…どうか…願いを…」
言葉は途中で遮られるとスライムはその場に倒れてしまった。
急に現れた魔族に振りかざした手を収めるとスライムの少女に駆け寄った。
見れば斬られたような傷や火傷のような跡が残っている。恐らくは人間に襲われたのだろう。
「どうしたの!?サキュバス、この子を寝室へ!」
「寝室ですか!?♡」
「意味が違うわ!いい加減、目を覚ませ色ボケが!」
相変わらず発情した頭に喝を飛ばされると、サキュバスはスライムを持ち上げて急いで寝室へと運んだ。
ベッド寝かせると城内にあった包帯で傷を多い、最初の町で使った禁断の果実を絞り、口へと運ばせた。
意識はないが、果汁を飲み込んだ身体は傷がほんのりとだが回復していく。
「人間ニ襲ワレタノダロウ。魔法ト刃ニヨル傷ガ何ヨリノ証拠」
「こんな小さな子が襲われるなんて、どうして」
「魔族ダカラナ」
「それだけの理由なの?」
「他ニ大義名分ガ必要カ?人間ハ我ラガ魔族トイウダケデ恐怖シ、刃ヲ向ケル」
「そんな、あんまりだよ」
意識のないスライムの少女の手を握った。
ひんやりと手のひらに吸い付くようなジェル状の手は、まだメルルの手のひらに収まるほどに小さい。
魔族なので正式な年齢はわからないが、メルルよりも背丈は小さく、見た目も幼く感じる。
「うぅ、みんな…」
果実の効果もあり、スライムは意識を取り戻した。
目を開くと魔王とサキュバス、魔剣を見て目に大きな涙を溢れさせた。
「魔王様ぁ、どうか、どうか、私たちをお救いください」
ジェル状の手がメルルの無い胸に伸びた。
必死な様子で助けを求める声にメルルはスライムの手を強く握りしめた。
「安心して。ここは私の城。よくここまで辿り着いたね。一体何があったの?」
「私たちの住処が人間によって壊滅状態にさせられたんです。急に人間たちの群れがやってくると森に火を放って、私の仲間たちを…」
そこまで言うとスライムは嗚咽で声が出なくなった。
言わなくてもその場にいた誰もが想像がついた。恐らくこの少女の仲間たちは人間に殺されたのだろう。命からがら逃げ延びた少女は住処を追われ、魔王の城へと辿り着いた。
怒りに歯を食いしばった。
「大丈夫だよ、スライムちゃん。魔王である私があなたたちの森を取り返してくるわ」
「ありがとうございます、魔王様…私、不安で不安で」
「きっとあなたたちの元に森は返す。必ずね」
スライムはまだ安静が必要だとし、その場で休むようにうながすとメルルとサキュバスはスライムが襲われたという森を目指した。




